藤井もの ▼ 旧Twitter & Instagram

  ウクライナ,中東に平和を
  市民への攻撃を止めよ
  軍事力に頼らない平和を

映画「沈まぬ太陽」の感想

2009-11-01 | 映画の感想




◆№64 10月28日 「沈まぬ太陽」(★★★★☆)
(感想) 山崎豊子の原作を踏襲した作品となっていることが良くも悪くも本映画の限界。会社、家族、友人という人を縦糸にし、特殊な航空会社を取り巻く政界、政府、経済界を横糸にして、事件や人事を見つめていく重厚な作品である。▼俳優陣の演技はシリアスで見事。渡辺謙を上回る演技も随所に見られて楽しい。どちらかと言えば渡辺謙の演技はワンパターンで平凡に感じられるほど、周囲の演技が多彩で光っている。演技という点では見ごたえのある作品。俳優たちの演技力を再確認できた感じ。▼作品全体としての印象は、昭和エレジーそのもので労組や組合活動をイメージできない世代には、説明不足で理解不能な作品に感じる。時代劇とまで行かなくても、時代背景の説明を入れないと伝わらないものもある。1985年の日本航空123便墜落事故から24年が経っている。平成になって20年、すでに昭和は遠い過去となっている。恩地と行天の葛藤の受け止め方に大きな差があると容易に想像できる。▼小説自体がアフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇の3部構成の長編。それをそのまま映画にしたので、てんこ盛りの内容を表現しようと四苦八苦、もがいているようにも感じた。簡単に言ってしまえば、小説を忠実に映像にしたとう印象。大河ドラマは、長大でディティールが細かく、テーマの拡散を避けることが難しい。国民航空の組織的問題と恩地の人間性がどうもつながらない印象がある。映画の恩地は結局何をどうしたかったのか。行天が逮捕されれば終わりなのか。何も問題が解決しない、煮え切らない映画という印象が残った。小説を離れて、映画の意地を見せてほしかった。▼今、現実問題としてJAL(日本航空)再建が国政の場で問われている。映画公開のタイミングに何か不思議な因縁を感じる。今の状況をみると、JALという太陽は、日本人が昇らせようとお金や人をつぎ込んだけれど、一度も昇ったことのない「昇らぬ太陽」なのかもしれない。▼なお、文藝春秋11月号記事『JALを墜落させた真犯人』も参考になります。(データ

総合 4 しっかりとしたビジョンを感じる力作ではあるが…、昭和エレジーの域を出ていない
監督 4 壮大なドラマ、多くの出演者をよくまとめている
脚本 4 原作の重さに負けなかった点を評価
演技 5 全員がきちんとした演技をしていて、日本俳優陣の面目を感じた
音楽 4 エンディングテーマ良かった
映像 4



杜人

--------------------------------

沈まぬ太陽(2009)

メディア 映画
上映時間 202分
製作国 日本
公開情報 劇場公開(東宝)
初公開年月 2009/10/24
ジャンル ドラマ
映倫 G



【クレジット】
監督: 若松節朗
製作: 井上泰一
プロデューサー: 岡田和則 越智貞夫 井口喜一
エグゼクティブプロデューサー: 土川勉
製作総指揮: 角川歴彦
企画: 小林俊一
原作: 山崎豊子 『沈まぬ太陽』(新潮社刊)
脚本: 西岡琢也
撮影: 長沼六男
美術: 小川富美夫
編集: 新井孝夫
音楽: 住友紀人
音響効果: 柴崎憲治
エンディング曲: 福原美穂 『Cry No More』
照明: 中須岳士
装飾: 小池直美 三浦伸一
録音: 郡弘道

出演:
渡辺謙 /恩地元 →小倉寛太郎
三浦友和 /行天四郎 →創作上の人物
松雪泰子 /三井美樹
鈴木京香 /恩地りつ子
石坂浩二 /国見正之 →伊藤淳二(元鐘紡会長)
香川照之 /八木和夫
木村多江 /鈴木夏子
清水美沙 /小山田修子
鶴田真由 /布施晴美
柏原崇 /恩地克己
戸田恵梨香 /恩地純子
大杉漣 /和光雅継
西村雅彦 /八馬忠次
柴俊夫 /堂本信介
風間トオル /沢泉徹
山田辰夫 /古溝安男
菅田俊 /志方達郎
神山繁 /桧山衛
草笛光子 /恩地将江
小野武彦 /道塚一郎
矢島健一 /青山竹太郎
品川徹 /龍崎一清 →瀬島龍三(「不毛地帯」の主人公モデル)
田中健 /井之山啓輔
松下奈緒 /樋口恭子
宇津井健 /阪口清一郎
小林稔侍 /竹丸鉄二郎 →金丸信
加藤剛 /利根川泰司 →中曽根康弘


--------------------------------


(参考)

日本航空123便墜落事故
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA123%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85



日航機事故
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E8%88%AA%E6%A9%9F%E4%BA%8B%E6%95%85#.E6.97.A5.E8.88.AA.E3.82.B8.E3.83.A3.E3.83.B3.E3.83.9C.E6.A9.9F.E5.A2.9C.E8.90.BD.E4.BA.8B.E6.95.85



『沈まぬ太陽』(しずまぬたいよう) 山崎豊子原作のフィクション小説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E3%81%BE%E3%81%AC%E5%A4%AA%E9%99%BD


(抜粋) 取材過程と内容において----
日本航空の労働組合が激しく対立していた経営陣への取材活動を行わなかった点がある。 ストーリーが事実とは大きく異なり、見る者にそれを区別できなくしている点がある。(例:実際はモデルとなった小倉貫太郎氏は御巣鷹山へ先遣隊としていったこともなく、被災者の面倒や世話役をやった事実はない) 多数の創作箇所があり一方に偏った視点から白と黒を別けるような書き方が目立つ点などがあり、論争を巻き起こした。「実在の人物(一般社員)をそれと判るように批判的に書いているため、日本航空の労働組合同士の対立や経営上の対立に恣意的に利用された作品」という評価もある。
但し、社会的関心の強い「モデル小説」というものに対する理解があれば、上記の肯定論・否定論は当事者にとっての愉快不愉快はあるものの、文芸としての意義は否定できない、という評価もある。
なお、「週刊新潮」に連載中、日本航空は機内での雑誌販売のサービスの際、「週刊新潮」機内搭載を取りやめている。

(中略)
小説の内容から映像化は困難といわれていた。2000年に徳間康快・大映社長が、東映との共同制作で映画化を発表したものの、徳間社長が死去したため実現しなかった。2006年5月には、角川ヘラルド映画(現・角川映画)によって2008年夏公開を目指し製作されることが発表されるなど、何度か映画化の話が持ち上がったが、実現していなかった。また、同じ著者による『白い巨塔』を二度にわたって映像化したフジテレビが2009年の開設50周年にあわせてテレビドラマ化するという企画があったが、立ち消えになっている。しかし、2008年12月、角川映画は、2009年秋公開として正式に映画化を発表した。角川ヘラルドに吸収合併された旧・大映の社員が奔走し、映画化にこぎつけたという。2009年2月にイランロケでクランクイン。アフリカなどでの撮影も行われ、日本の空港シーンはタイの空港を利用して撮影した。飛行機のシーンは、日本航空の協力が得られなかったため、CGによって再現した。

映画化について、日本航空は「ご遺族の中には映画化を快く思っていない方もいらっしゃる。すべてのご遺族の心情をきちんと汲んで欲しい」と映画化反対のコメントを出している。また、日本航空から角川に対し「名誉毀損の恐れがある」と警告文を2度送っているという。 角川は「映画は全くのフィクション」であるとしている。また、本編の最後には、フィクションである旨の但し書きが表示される



日本航空の組合問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA%E3%81%AE%E7%B5%84%E5%90%88%E5%95%8F%E9%A1%8C



エセックスハウス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9




山崎豊子のトラブルとは何か
「沈まぬ太陽」では日航と「週刊朝日」のタッグによって山崎豊子批判キャンペーンが展開された。御巣鷹篇を取り上げ、実在の人物や出来事と架空の人物や出来事を混在させる小説手法が、読者に「沈まぬ太陽」をノンフィクションと誤認させるのではないか、という批判である。アフリカ篇、会長室篇などの日航内部の労務政策の失敗を告発する内容と、未曾有の惨事とあまたの感動的な人間ドラマを描く御巣鷹篇は本来は別個の系統のもので、この御巣鷹篇を日航の労使対立に絡めてしまったところに、恐らく日航内部の人間の不快感が集中するのだろう。ただ墜落事故の犠牲者の家族の中には日航の企業体質への批判もかなりあった筈で、そうした家族の思いを山崎豊子が救い上げたという側面も否定はできない。しかしやはりアフリカ篇、会長室篇と御巣鷹篇はそれぞれ2本の別個の作品として描くべきではなかったか、とも思う。そうすれば「沈まぬ太陽」のドラマ化、映画化なども容易だったのではないか、とも推察されるからである。
http://www.geocities.jp/showahistory/history07/60c.html



日本航空の労務政策 -考察・沈まぬ太陽-
http://www.jalcrew.jp/jca/public/taiyou/taiyou.htm



日本航空、昔話
http://www.rondan.co.jp/html/ara/jal2/index.html



小説「沈まぬ太陽」余話(Ⅲ)
http://www.rondan.co.jp/html/ara/yowa3/index.html




(旧:カネボウ株式会社)バブル崩壊後の1991年からは、事業目標を達成できなかったときに売上を水増しするという粉飾が始まった、といわれており、悪しき企業風土となっていた。ちなみに伊藤は、こうした実績が評価され、1985年には、日航ジャンボ機墜落事故で経営再建が急務だった日本航空の会長に抜擢される。しかし、労使対立が魑魅魍魎とした状態の中で得意の労使協調路線は受け入れられず、結果を出せぬまま1年余りで政府により更迭された(この状況は山崎豊子の小説『沈まぬ太陽』に詳説されているが、本作は、伊藤について脚色が多いといわれる)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88






コメント    この記事についてブログを書く
« 2009蔵の陶器市(6) | トップ | つぶやき »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。