おじんの放課後

仕事帰りの僕の遊び。創成川の近所をウロウロ。変わり行く故郷、札幌を懐かしみつつ。ホテルのメモは、また行くときの参考に。

眠りにつく街~失われる風景~

2022年08月22日 | 風景

真夜中の、一歩手前の時刻。

地下街のテナントの人たちが、

それぞれの家路につく、最終の時刻。

おつかれさまです。

 

何年かあとにはもう、

見ることも、触れることもできなくなる、

地下3メートルの街並み。

この時計屋については、まだ何も聞かないが。

時計の電池の交換を、毎度、お願いしている。

知り合いでもなんでもない。

ただ、ああ時計屋があるな。

ここでいいや、と、立ち寄って以来、

ここを使い続けている。

ちらり、ほらり、

空き店舗も、出始めている。

過去、駅前のアーケード街や、

地元のテナントを集めた商業施設で、

僕も経験した。

たった1店舗でも、

シャッターをおろしたその存在は、

現実を突きつけて、余りある。

夢が覚めると、言ってもいい。

けれど、ここは明るい。

終わらない時間が流れている。

もう6時間もすれば、疑いも無い。

そこかしこで、ドアの閉まる音が聞こえだす。

キッ、キキッ、キキキッ、と、

あちらこちらで、シャッターが、下半分だけ開かれる。

この脇道を、何度、通っただろうな。

都市間高速バスの、札幌ターミナルへと出る道。

近年、ずいぶんと整備された。

この待合場所から、左右の階段を登って、

各都市へのバスに乗る。

僕だって若かりし頃、希望を胸に、

ここから北へ、南へと、旅立ったものさ。

この景色も、見納めとなる。

まだ先のことだが。

振り向けば、

もうひとつ、近々、

見納めとなるであろう景色。

結局、泊まれなかったなぁ。

でも、ここも明るい。

明日が予感される。

だがここは……

しかし、開店前夜のようでもあるな。

自社の広告以外は無く、

柱の広告枠も、

あの日の白紙に戻り。

もう間もなく、

永遠の眠りにつく。


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