岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

第6回出雲ほむら<炎>短歌賞(秀作)作品

2010年07月07日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
・過去(すぎゆき)に失いしものひとつずつ拾う心地ぞ手紙を書くは・

 選者:尾崎左永子。

 「過去」とかいて「すぎゆき」と訓ませたのは、佐藤佐太郎(「星座54号」尾崎左永子)だそうでその分、オリジナリティに欠けるとも思うが、この訓みが僕は気に入っている。何より語感が美しい。

 短歌を詠むようになって自分の生活に起った「劇的変化」のひとつは手紙をかくようになったこと。それまでは年賀状もろくに書かなかったのに。なかには32年ぶりに連絡がとれて、年賀状やメールのやりとりをしている人も何人かいる。

 大学を卒業してから40歳近くまで人づきあいをほとんどしなかったから、まさに「劇的」だ。病気療養にはいるまでは学習塾の仕事をしていたから、同窓会もほとんど欠席続きだった。

 だから僕にとって手紙を書くことは、「失ったものを拾う行為」に他ならない。そういう気持ちを飾らず正直に表現できたのが、入選した原因だろう。

 先日の「与謝野晶子短歌文学賞」の作品もそうだったが、このごろ感情を静かに抑えた作品が多くなってきたようだ。病気のために体力が弱まった分だけ、力みが抜けてきたようだ。

 実をいうと、「感情の抑制」などと聞くと反発を感じたこともあった。しかし今感じているのは、感情を抑えた表現がいかに難しいかということと、そのときどきのコンディションにあった歌を詠うというのは、むしろ自然ではないかということ。


 体調が回復してきたら、パンチの効いた歌も詠えるようになるだろう。誰かが言った。

「歌は人なり。」

今の自分が偽りなく表現できれば、それがそのときの「最上の歌」であると思っていきたいものである。




この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第16回与謝野晶子短歌文学... | トップ | 齊藤茂吉44歳:罪ふかき「... »
最新の画像もっと見る

岩田亨の作品紹介」カテゴリの最新記事