岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

南風の吹き来る季となりたれば北にその背が向く風見鶏

2010年02月22日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
2001年4月。「NHK歌壇」佳作作品。選者:高野公彦。題詠は「鳥」だった。

 歌集に収録するときに次のように改作した。

・南風(はえ)の吹く季節となりて今ここに北へその背が向く風見鶏・

 「南風(はえ)」という表現がやや古風かとも思ったが、「季」を「とき」と読むこととのバランスを考えた末、「南風(はえ)」を選びルビをふった。そのほうが「なりたる」を避けられ、「季節となりて」と明確に言えると思ったからである。
 「今ここに」としたのは、冬の終わりを強調するためである。

 近年では風見鶏など見ることが少なくなったが、少年時代過ごした街の教会の屋根にあった記憶がある。友達と遊び終わって家に帰る夕暮れにはいつも見上げていた。「鳥」という題で「風見鶏」とは珍しかろうと思った。そういった一種の機転と、「北へその背が向く」という表現が暗示的だったのかもしれない。

 前年度の写実派の歌人に続き、新年度は写実派以外の歌人にとられたことは、当時の僕にとって大きな自信となった。その意味では思い出深い作品だった。

 歌集「夜の林檎」の「簾外抄」に収録し、番組で当時司会をしていた歌人の方から、「最も印象に残った一首」との手紙を頂いた。このころから、「岩田亨さん?あの< NHK歌壇 >の?」と伝え聞くことも多くなってきた。

 が、・・・。実はもう一つ別のことに気づき始めた頃だった。



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