草むしりしながら

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未だに守っている母の言葉

2018-12-19 14:12:16 | 日記
未だに守っている母の言葉

 「あんたは、松は摘むなえ」。父の遺した庭の松の木に腹立ち紛れにパチパチとはさみを入れる私に、母が言った言葉だ。「松だけは人に頼みよ」という言葉が添えられていた。

 田舎の庭師はたちが悪いのか。パチパチと切り散らかしておいて、さっさと帰ってしまう。十時と三時にお茶を出し、安くはないお金まで払ってお礼を言った後で怒りが爆発した。たぶん頼んだ母がお金をケチって、私に後片付けをさせようとの魂胆だったのだろうが。

「松の周りであれだけ時間を潰すのなら、片付けて行けばいいのに」玉砂利の間に食い込むように切り散らかされた松葉を拾いながら「切るだけなら、私にだってできる」と思った。「まったく庭の掃除が嫌で、早く死んだンじゃなかろうか」庭を造ってすぐに逝ってしまった父に、文句たらたらだった。

 そして翌年。本当に松の枝をパチパチとやっていた時に、母に言われた言葉である。

 以来他の木は自分で剪定するのだが、松だけは本職に頼むようにしている。「それにしても金食い虫だ、いっそ切り倒そうか」とも思うのだが……。二本の小さな松にお金をかけただけで、庭の佇まいがぐんと引き立つ。

 「もうそろそろ自分で剪定してみようか」とも思うが、その度に母の言葉が脳裏に浮かんでくる。