猛烈な地震と直後の津波が未曾有の災害をもたらした! 【PHOTO】Getty imeges
菅・谷垣「臨時増税」検討に意義あり!
2011年03月14日(月) 現代ビジネス 高橋 洋一
月11日、午後14時2時46分ごろ、超巨大地震が東北地方太平洋沖で起きた。マグニチュードは9.0と、世界歴代4位、もちろん日本国内では未曾有だ。
震源が陸地でなく海だったため、猛烈な津波が発生した。東北地方沿岸部では、10メートル級の津波でいくつもの町が壊滅的な打撃を受けてしまった。
震源が陸地でなく海だったため、猛烈な津波が発生した。東北地方沿岸部では、10メートル級の津波でいくつもの町が壊滅的な打撃を受けてしまった。
とにかく今は状況把握と人命優先である。14日午後には、生存者確率が急速に低下する発生後72時間を過ぎる。なんとしても、マンパワーを最大限投入して救出してほしい。未だに地震被害の全容はわからない。 宮城県南三陸町では、町民1万7000人のうち1万と連絡が取れない状況という。
世界各国からも救援の支援が来ている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)では、堅牢なる日本(Sturdy Japan)という社説は、日本が地震への備えをしていたために被害がそれでも最小限であり、被災者救援に全力を尽くしているという、胸を打つ内容だった。
こういう時には、まずは一人一人ができることをやるしかない。その上で、自助、共助(周囲の人と助け合うこと)、公助(公的機関が支援すること)がうまく調和するようにしなければいけない。
こういう時には、まずは一人一人ができることをやるしかない。その上で、自助、共助(周囲の人と助け合うこと)、公助(公的機関が支援すること)がうまく調和するようにしなければいけない。
私事であるが、私の家は震度5強の地域だった。幸いにも家族や家は大丈夫であったが、私の部屋の中は本箱、コンピュータが倒れて足の踏み場もなかった。もちろん被災地や被災者と比べればたいしたことない。12日、13日と部屋片付けをしながら、とても気になったニューズがあった。
現段階では、救援が優先されるべきでまだ復興話は時期尚早だろう。しかし、この国のトップの政治家はこうした感覚ではなく、その内容も酷いようだ。
もちろん、救援に支障が出ない範囲で復興を検討するのはいい。しかし、13日夕方のニュースによれば、菅直人総理と谷垣禎一自民党総裁の会談の結果、その財源として民主党と自民党は臨時増税を含む時限立法を検討するというのである。わざわざ臨時増税をいう以上、本気なのだ。
これは下策だ。
今回の地震に対しても、さきほどのWSJのように、世界は日本なら何とかやっていくだろうとみている。
たしかに、11日は地震発生後、日経平均こそ急落した。ただ、円相場は、一時安くなったが、日本の投資家が外貨運用を円に換えるという思惑で、円高になっている。債券相場も高くなっている。こうした未曾有の天災があったときには、株価、円、債券のトリプル安になっても不思議ではないが、そうなっていない。
しかし、復興のための臨時増税となれば、14日月曜日の相場はどうなるかわからない(本稿執筆は13日夕方)。
もちろん、復興策は絶対に必要だ。その規模は直感的には10兆円くらいだろう。しかし、その財源として臨時であれ増税は不味い。
この危機に増税とは理解に苦しむ。この災害時に増税しか見えないのかと思うと、一国民として悲しくなる。国民の共助を求めるなら、災害寄付金を税額控除するのが正しい方向だろう。
日本の地震リスクを強調して、この機に乗じて日本国債にアタックを仕掛けてくるという外国ヘッジファンドの噂もある。そうした冷酷なハイエナに塩を送るような増税発言だ。
高橋是清の決断に学べ
では、復興策の財源といえば、もちろん国債である。しかも、日銀直接引受がいい。というのは、今はデフレであるので、マネーが日本国内では不足している。被災地には当然潤沢の資金供給が必要になるが、それを全国レベルで対応するためにも、日銀が直接引受によってマネーを増やすのが正しい方向だ。
日銀直接引受の分の国債は、実質的に財政負担にならない。例えば、その国債に対して金利を政府が日銀に払ったとしても、その分は日銀から政府への国庫納付金になるからだ。
そのデメリットは、全国レベルでのインフレになるという点だが、今はデフレであるので、その弊害は少ない。被災地での物資不足に対して、局地的な価格上昇の可能性はあるが、それに対しては不当価格値上げがないかどうかはしっかりと行政で監視する必要がある。
日銀直接引受というと、必ず財政法で禁止されているという反論がある。
たしかに、財政法第5条では、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と書かれている。
たしかに、財政法第5条では、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」と書かれている。
しかし、その後に「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。 」と書かれている。
しかも、あまり知られていないが、すでに衆議院を通過した来年度予算の予算総則において、日銀保有国債分については、「財政法第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる」と書かれている。
要するに、復興国債を発行して、国会議決でやれば日銀直接引受はできるのだ。
日銀直接引受は、昭和恐慌時高橋是清が行い、世界でもいち早く脱出できたので、世界的にも評価の高い政策だ。超巨大地震という国難であるので、従来にない発想で政治主導が求められる正念場である。
なお、14日、15日は日銀の政策決定会合がある。日銀自ら直接引受の用意が発言すれば、それこそ歴史に残る偉業となるだろう。日銀も柔軟な発想が必要だ。