義母はもうすぐ90歳、少しづつ体の自由が利かなくなり今は施設に入っている。ベッドの中で今は亡き義父と行った日本各地への旅行に、思いを巡らしているらしい。青森の恐山では、硫黄の匂いの中を歩いた事。また北海道のマリモの不思議とか。中でも十和田湖の美しさは忘れられないみたいだ。是非もう一度行きたかったと・・・
カニが美味しい時期に私達と山陰に行った事もよく覚えていてくれた。小さな民宿でカニを山程食べて、それでも足りずクール便で家に送った事も。私は義母と旅行に行ったのはそれが始めてです。
義父が元気だった頃、家の前を流れている川に、よく仕掛けを作って、川ガニをバケツいっぱい獲っていた。料理好きの義母がそれをカニ飯にしたり、酢の物にして食べさせてくれた。
いつも人への気遣いを忘れない母。施設でお世話になっている人達への感謝の気持ちも若い時と少しも変わらない。もう人に気を使う事なんてしなくていいのに。もっと我がまま言って甘えてくれたらいいのに。なんだか胸が熱くなってきた。
月に1回程しか行かない私達にも「ありがとう、ありがとう」の言葉を繰り返す。「ありがとう」と言わなければいけないのは私達なのに。