THE READING JOURNAL

読書日誌と雑文

「二人の紳士と女」

2008-11-21 | Weblog
「フェルメール全点踏破の旅」 朽木 ゆり子 著

3.ブラウンシュバイク ≪二人の紳士と女≫ ウィーン≪絵画芸術≫

ここで著者はブラウンシュバイクのアントン・ウルリッヒ公美術館とウィーンの絵画史美術館を訪れた。
アントン・ウルリッヒ公美術館では≪二人の紳士と女≫そして絵画史美術館では≪絵画芸術≫を見ることができる。

二人の紳士と女
この絵は、先日行った「フェルメール展ココ参照)で展示されていた。(フェルメール展では「ワイングラスを持つ娘」という名前になっている。)
この絵は、≪紳士とワインを持つ女≫(ココ参照)に構図が似ている。≪紳士とワインを持つ女≫の後の1600年ごろに描かれたと推定される。この絵には、≪紳士とワインを持つ女≫と同様に節度を表す寓意像がステンドグラスに見られるが、一番の特徴は女の表情にある。

こういう抜け目のない表情は、同時代のオランダ風俗画の作品にはよくみられるが、フェルメールの作品には珍しい。彼の絵の登場人物の表情は抑制されていることのほうが多いからだ。

しかし、この絵が≪紳士とワインを持つ女≫と一番違う点は、その光の取扱いかたである。≪紳士とワインを持つ女≫では画面全体が明るいが、この絵では、全体にソフトである。

窓際に置かれたレモンの皮の輝くような黄色、銀のトレイ、男性のマントの縁(ふち)取り、女性が座っている椅子の背もたれなどには、≪青衣の女≫や≪真珠の首飾り≫といった最盛期の絵における光の取扱いの萌芽が見える。

絵画芸術
この絵は、フェルメールのキャリアのほぼ中間に描かれたものである。この絵には、≪青衣の女≫≪真珠の首飾り≫≪真珠の耳飾りの少女≫といった、すくない要素で完成度の高い絵を描いていたフェルメールがなぜこのように多くの要素が入り混じった絵を描いたかという疑問がある。
この絵は、フェルメールには珍しい寓意が主役を演じている絵の一つである。

この絵の目的は、画家という職業と絵画の崇高さを讃えることにあるといえるだろう。

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