THE READING JOURNAL

読書日誌と雑文

「強い者も弱い者もない」

2008-11-11 | Weblog
遠藤周作と歩く「長崎巡礼」 遠藤周作 芸術新潮編集部 編

「沈黙」の舞台を歩く その2 【西坂から本河内】強い者も弱い者もない、コラム 転び者の気持ち、コラム キチジローの信心戻し③

『沈黙』の主人公ロドリゴは、とらえられて長崎に送られてくる。ここでは、長崎の町を訪ね歩く。
  1. 日本二十六聖人殉教地、日本二十六聖人記念館、日本二十六聖人記念聖堂
  2. 本連寺(サン・ジュアン・バプチスタ教会跡)
  3. 中町教会
  4. サン・フランシスコ教会跡、桜町牢跡
  5. サント・ドミンゴ教会跡資料館
  6. 西勝寺
  7. 長崎歴史文化博物館
  8. 諏訪神社
  9. ルイス・デ・アルメイダ渡来記念碑、春徳寺(トードス・オス・サントス教会跡))
  10. 聖マキシミリアノ・コルベ記念館
長崎の町は、おびただしい数の殉教者を出した地でもある。その数は2千人とも4千人とも言われている。キリスト教が禁教となる以前は、いくつもの教会があった地であるが、それは破壊され今は寺になっているものも多い。
切支丹への拷問は、吊し責め、算木責め、竹鋸切り、駿河問い、俵責め、穴吊りなどがあった。この拷問の果てに殉教したものも多かったが、転んだ者も多かった。

フェレイラという司祭をご存じだろうか?「沈黙」の主人公ロドリゴが師とあおぐ人物だが、これには、実在のモデルがいて、その名もクリストヴァン・フェレイラ、またの名を沢野忠庵という。・・・・中略・・・・二十四年間も布教活動に身を捧げるも、長崎潜伏中についに捕えられ、拷問のすえ転んだ。そして日本名を名乗らされ、長崎奉行に仕え、弾圧側に与して名だたる背教者となる・・・・。

遠藤は、『沈黙』の主人公ロドリゴを最後には転ばせてしまう。それは、遠藤の転んだ側の声を聞こうという文学者としての問題意識があった。

だが、弱虫―殉教者になれなかった者、おのが肉体の弱さから拷問や死の恐怖に屈伏して棄教した者についてはこれら切支丹文献はほとんど語っていない。
・・・・中略・・・・
だが弱虫たちもまた我々と同じ人間なのだ。彼等がそれまでに自分の理想としていたものを、この世でもっとも善く、美しいと思っていたものを裏切った時、泪を流さなかったとどうして言えよう。後悔と恥とで身を震わせなかったとどうして言えよう。その悲しみや苦しみにたいして小説家である私は無関心ではいられなかった。彼等が転んだあとも、ひたすら歪んだ指をあわせ、言葉にならない祈りを唱えたとすれば、私の頬にも泪が流れるのである。私は彼等を沈黙の灰の底に、永久に消してしまいたくはなかった。彼等をうたたびその灰のなかから生きかえらせ、歩かせ、その声をきくことはーーそれは文学者だけができることであり、文学とはまた、そういうののだと言う気がしたのである。【切】
こうして「沈黙」は書かれた。

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LESSON 10 On the Top of the World

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