THE READING JOURNAL

読書日誌と雑文

「バーに入る」

2006-02-27 | Weblog
「バーのある人生」  枝川 公一著

2.バーに入る

前節でバーについてイメージできたので、今日のところは、「じゃ、バーに入ってみましょう」という話。

バーに初めて入るとき、初めて注文するとき、・・・そんな話からはじまる。
しかし、バーで最も重要な要素はバーテンダーである。彼らとどのように付き合うかが、バーのある人生にとって最も重要である。
この節の後半部分は、主にそのバーテンダーについての話になる。

まず、はじめに店に入るにはどうしたらいいか?
  • バーを良く知っている人と一緒に出かける方法
がある。しかし、その場合でも、

バーは本来は、ひとりであろうとだれかと一緒であろうと、それぞれひとりひとりが楽しむことを前提にしているということである。
群れて集(つど)いて歓を尽くすという、日本古来のやりかたとは対極にあるのがバーだということは何度言っても言い過ぎにならない。これが基本の基本である。したがって、だれかと一緒であっても、その相手に寄りかかって、楽しみを見つけようとするのだけはやめたい。

と、著者は言っている。もちろん、最初から一人で行くのもいいわけである。(バーへ同行者は、せいぜい自分を入れて3人まで。)
さて、バーに入ってみた。

店に入ったら、主導権は店にある。これが原則となる。自分勝手はご法度である。

であるようだ、すぐにカウンターに坐らず、バーテンダーの指示にしたがう。
席についたら、次は注文である。初めての注文での著者の注意は、

お酒のブランドやカクテルの名称を「言わなければならない」という強迫観念をすてること、これが注文する場合の第一歩なのである。

という事。味の好みをバーテンダーに伝え、相談しながら決めればよいというわけである。

カクテルの場合で言うと、次の四つの情報があれば、バーテンダーが工夫してつくってくれるはずである。
  1. =甘めがいいか、ドライが好みか
  2. =アルコールは強めか弱めか
  3. =ソーダは入れるか入れないか
  4. =暑さ、寒さ、涼しさなどの季節に対応したものがいいか
そのうえに、自分のいまの状態、たとえば食事の前か後かなど、好みや心身の「いま」を伝えれば、あとはバーテンダーが考えるにちがいない。

バーにおける絶対的存在はバーテンダーである。ではバーテンダーとはなんであろうか?
(バーテンダーをバーテンと呼ぶのは大変失礼な事である。)

bar-tend-erと分けてみると、barはもちろんバーである。最後のerは人 を表わす接尾辞ということになる。そして、この単語の核心は、真ん中の部分tendにある。これは「番をする」と「世話をする」という、ふたつの意味が込 められている。そこで、バーの番をし、併せて客の世話をする人、それがバーテンダーなのだということが、このtendが教えてくれる。つまり、バーという 場所と、そこに出入りする客と、その両方をtendする。

バーテンダーは、ただお酒を作る人ではなく、バーをコントロールしてバーに入ってくるお客さんに居心地のよい時間を与える人である。
したがって、

バーの客にいちばん求められるのは、こうしたバーテンダーに対するリスペクト(尊敬する気持ち)である。

----------------------------------------------
【購入図書】06

「まっぷるポケット 名古屋」
  昭文社編集部 編集 昭文社 2004年 600円+税