ランチを終えたら視察を再開。
まずは、台湾のイノセンスプロジェクトを訪問です。
台湾イノセンスプロジェクト(TIP)、現地で「台湾冤獄平反協会」と書きます。
漢字の国はいいですね。文字で書かれていると、おおむね意味がわかります。
Tシャツの「自由人」がとてもいい感じです。
台湾での冤罪事件の状況、TIPの活動、死刑冤罪事件の救済活動について話を伺いました。
TIPは多くの冤罪事件で無罪判決を獲得されています。
下のスライドは、再審で無罪となった事件を、台湾の地図の上に記したものです。
日本でも、いくつかの再審無罪判決は出ていますが、まだまだ再審は開かずの扉です。
台湾のほうが、再審が積極的に活用されている印象です。
TIPのような市民団体の活動や、あるいは、民主化・政権交代といった政治情勢も影響しているのかもしれません。
台湾では、近年、再審無罪判決がいくつも出ているのですが、冤罪原因に関する基本的研究といったものはまだなされていないということでした。
拷問による取り調べはあまり再審の理由にはなっておらず、やはり、科学的技術の進歩によって無実が証明されるケースが多いようです。
再審で無罪が明らかになっても、刑事補償がされるだけで、捜査機関や裁判官は何も責任追及されることがないというのは日本と同じです。
日本でも、台湾でも、冤罪が明らかになった時には、独立した立場の調査委員会で冤罪原因を究明し、責任の所在を明らかにしていくことが必要です。
今回は、死刑制度廃止の視察ということで、死刑判決が確定している事件の冤罪救済について話を聞きました。
死刑は、いつ、誰が執行されてしまうのかわからない。
だから、まず、執行させないことが必要。
手続きとしては、再審、非常上訴、釋憲(憲法裁判所の大法官に憲法解釈を求める手続き)、監察院への申立てというのがあるそうです。
再審というのは、日本の再審と同じで、再審を請求する権利があります。
ただ、死刑確定者が2度、3度と再審請求していると執行までの時間稼ぎと思われて、2週間程度で却下されてしまうとのこと。
非常上訴も、よく使われる制度だが、検事総長の権限なので、あくまでも職権発動を促すことしかできない。
釋憲というのは、判断が出るまではすごく時間がかかるので、執行を遅らせて命を守るためにはいい制度だということでした。
また、日本にはない制度で「監察院」というのが台湾にはあります。
日本は三権分立ですが、台湾は五権分立だそうです。
日本は、国会・内閣・裁判所の三権ですね。
台湾は、立法院(国会)・行政院(総統以下政府)・裁判所(通常裁判所と憲法裁判所があります。)に加えて、監察院・考試院という二権があるということです。
監察院は、どうやら日本の会計検査院のような感じですが、会計監査だけでなく、行政・立法・司法について幅広い監査権限があるようです。
考試院は、日本の人事院の権限をさらに大きくしたようなところで、公務員の採用試験、弁護士試験、裁判官・検察官試験なども所管しています。
さて、冤罪救済に戻ります。
この監察院、近時では政治的影響力のない閑職に追いやられているようなのですが、冤罪事件では一定の役割を果たしているようです。
監察院に冤罪であるとの申立てがなされると、監察院でも調査をするようです。
そして、冤罪の可能性があるという結論が出ると、それが公表される。
そうなると、検察官から無罪を求めて再審請求がなされることがあり、実際、そういう形で無罪になったケースも多いようです。
また、死刑事件については、監察院がすべての死刑事件で調査報告書を出しているということでした。
死刑が確定していた事件で、これまでに再審が開始なった7件の事件でも、すべて監察院の調査が行われているということです。
「監察院」という制度は日本の刑事司法には全く出てこないシステムで、現地に行って初めて知りました。
今回の視察先には含めていなかったのですが、次の機会にはぜひ「監察院」も訪問してみたいものです。
(「監察院」は、私が宿泊していたホテルのすぐ近くにあり、実は台湾到着後何度も前を通り過ぎていました。)
TIJ訪問を終えて記念撮影です。
みんなが左手の平を横に出していますが、これがTIJで写真を撮るときのお決まりのポーズだそうです。
実は、この先の視察でも、こういうお決まりのポーズが各訪問先でいくつか出てきました。
記念撮影時のお決まりポーズを作るというのが台湾ではスタンダートなのでしょうか?