刑事裁判の最後の場面、弁護人が陪審員に向かって、被告人の無罪を語りかける....
法廷映画の一番の見せどころです。
私も「評決の時」(1996)のマシュー・マコノヒーの弁論に憧れます。
さて、スピーチのセオリーとおりにきちんと弁論するなら、
「ご紹介ありがとうございます。」(司会者への礼)
「みなさん、こんにちわ」(挨拶)
「私は、弁護人の辻 孝司です。」(自己紹介)
「こうして、この裁判でみなさんと出会い、一緒に考えることができることをうれしく思っています。」(ウェルカム)
「さて、被告人が犯人であることに、疑問は残っていないでしょうか?」(背景)
「被告人は無罪です。」(結論)
「その理由は、3つあります。1つめは***、2つめは***、3つめは***」(ロードマップ)
というステップを踏んで話し始めることになります。
この話し方はすばらしい、こういう話し方をすると、弁護人は礼儀正しく、誠実で、
論理的な人だと受け止めてもらえるでしょう。
でも、もっと上をめざすなら、切り込み方、はじめの一言に工夫をします。
例えば、目撃証言を崩すために「その夜...月は出ていませんでした。」といきなり話を始めたら、
聞いている裁判員は、おっ!一体弁護人は何を言い出すんだと興味をもち、「月」のない闇夜が
強く印象に残ります。
川端康成が、
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
と書き始めたように、印象的なフレーズから入るのです。
挨拶や自己紹介を省略できる、既知の間柄の聴き手との間であれば、こういう話し方は
とても効果的です。
スピーチする機会があれば、余計な前置きは一切なしにして、十分な間を取って、
聴き手の視線を集めて、ズバリ、印象的なフレーズから切り込んでみてください。
きっと、聴き手の期待感を一気に高めることができるでしょう。