映画では、フィルムの中にストーリーが作られていきます。
裁判も同じです。
検察官と弁護人、被告人、証人によって、法廷でストーリーが構築されていきます。
特に大切なのが、被告人や証人の証言です。
被告人や証人は、自分が過去に体験した出来事、法廷で構築されるストーリーの全部、または、一部分を法廷で語ります。
ところが、芥川龍之介の「藪の中」のように、証人によってまったく違うストーリーが出てくることがあります。
弁護人と検察官は、それぞれの主張に沿ったストーリーこそが真実であると、裁判官・裁判員に受け入れてもらおうと努力します。
では、どうすれば、真実であると思ってもらえるストーリーを証人に語らせることが出来るか?
弁護士は映画監督になり、映画撮影のように証言させます。
まずは、① 登場人物の紹介
連続ドラマの1回目は必ず、登場人物の紹介が続きますよね。
次に、② テーマの設定
登場人物が、映画の中でどういう位置付けの人物なのかを観客に伝えます。
そして、③ 舞台設定
セットを作って、舞台を整えなければなりません。
そして、いよいよ、
④ 「よーい、アクション!!」 登場人物が動き始めるのです!
これを法廷でやると、
(登場人物の紹介)
弁護人: あなたのご職業を教えてください。
証 人: **病院で看護師をしています。
弁護人: ご家族は?
証 人: 夫と、二人の子どもがいます。
弁護人: お住まいはどちらですか?
証 人: 東山区のマンションに住んでいます。
(テーマの設定)
弁護人: あなたは、この事件があった日、何をしていましたか?
証 人: この日は夜勤だったので、昼間は家にいました。
弁護人: 出勤前に、どこにでかけましたしか?
証 人: 子どもと一緒に、近所のスーパーに行って、その帰りに公園に行きました。
弁護人: その公園は、今回の事件が起こった○○公園ですね。
(舞台設定)
弁護人: その公園は、どれくらいの広さですか。
証 人: 普通の児童公園なので、50メートル四方くらいでしょうか。
弁護人: どんな遊具がありましたか。
証 人: 鉄棒と滑り台、ジャングルジムと砂場もありました。あっ、タコも。
弁護人: 遊具以外には何がありましたか?
証 人: ベンチとテーブルがありました。日影になるように屋根が付いています。
弁護人: どんなお天気でしたか?
証 人: 良く晴れていて、11月でしたが、とても暖かかったです。
(アクション)
弁護人: その公園には誰がいましたか?
証 人: 50代くらいの男性と女性がいました。
弁護人: 二人は何をしていましたか?
証 人: タコに昇ったり、滑り台を滑ったりしていました。
どうですか?
あなたの頭の中には、タコが鎮座する児童公園で無邪気に遊ぶ、不思議な壮年男女の映像ができあがっていませんか?
映画撮影のように証人尋問を進めていくと、証言を聞いている裁判官・裁判員の頭の中には、ストーリーが映像として作られていきます。
強い印象を与えることができ、そのストーリーが真実に違いないと感じてもらえるのです。
日常会話でも、自分の経験した出来事を人に伝える場面は良くあります。
いきなり、アクションから話をしていませんか?
聞いている人に、自分の体験をリアルに伝え、共感してもらおうと思えば、
登場人物の紹介 → テーマ設定 → 舞台設定 → アクション
という手順を踏んでみましょう!