弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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よーい、アクション!! ~弁護技術を生活に vol.12 ~

2012-11-01 09:46:36 | うんちく・小ネタ

   

映画では、フィルムの中にストーリーが作られていきます。

裁判も同じです。

検察官と弁護人、被告人、証人によって、法廷でストーリーが構築されていきます。

  

特に大切なのが、被告人や証人の証言です。

被告人や証人は、自分が過去に体験した出来事、法廷で構築されるストーリーの全部、または、一部分を法廷で語ります。

ところが、芥川龍之介の「藪の中」のように、証人によってまったく違うストーリーが出てくることがあります。

弁護人と検察官は、それぞれの主張に沿ったストーリーこそが真実であると、裁判官・裁判員に受け入れてもらおうと努力します。 

  

では、どうすれば、真実であると思ってもらえるストーリーを証人に語らせることが出来るか?

弁護士は映画監督になり、映画撮影のように証言させます。

   

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まずは、① 登場人物の紹介

      連続ドラマの1回目は必ず、登場人物の紹介が続きますよね。

次に、② テーマの設定

      登場人物が、映画の中でどういう位置付けの人物なのかを観客に伝えます。

そして、③ 舞台設定

      セットを作って、舞台を整えなければなりません。

そして、いよいよ、

④ 「よーい、アクション!!」    登場人物が動き始めるのです!

  

Photo_2

  

これを法廷でやると、

(登場人物の紹介)

弁護人: あなたのご職業を教えてください。
証 人: **病院で看護師をしています。
弁護人: ご家族は?
証 人: 夫と、二人の子どもがいます。
弁護人: お住まいはどちらですか?
証 人: 東山区のマンションに住んでいます。

(テーマの設定)

弁護人: あなたは、この事件があった日、何をしていましたか?
証 人: この日は夜勤だったので、昼間は家にいました。
弁護人: 出勤前に、どこにでかけましたしか?
証 人: 子どもと一緒に、近所のスーパーに行って、その帰りに公園に行きました。
弁護人: その公園は、今回の事件が起こった○○公園ですね。

(舞台設定)

弁護人: その公園は、どれくらいの広さですか。
証 人: 普通の児童公園なので、50メートル四方くらいでしょうか。
弁護人: どんな遊具がありましたか。
証 人: 鉄棒と滑り台、ジャングルジムと砂場もありました。あっ、タコも。
弁護人: 遊具以外には何がありましたか?
証 人: ベンチとテーブルがありました。日影になるように屋根が付いています。
弁護人: どんなお天気でしたか?
証 人: 良く晴れていて、11月でしたが、とても暖かかったです。

(アクション)

弁護人: その公園には誰がいましたか?
証 人: 50代くらいの男性と女性がいました。
弁護人: 二人は何をしていましたか?
証 人: タコに昇ったり、滑り台を滑ったりしていました。

  

どうですか?

あなたの頭の中には、タコが鎮座する児童公園で無邪気に遊ぶ、不思議な壮年男女の映像ができあがっていませんか?

   

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映画撮影のように証人尋問を進めていくと、証言を聞いている裁判官・裁判員の頭の中には、ストーリーが映像として作られていきます。

強い印象を与えることができ、そのストーリーが真実に違いないと感じてもらえるのです。  

   

日常会話でも、自分の経験した出来事を人に伝える場面は良くあります。

いきなり、アクションから話をしていませんか?

聞いている人に、自分の体験をリアルに伝え、共感してもらおうと思えば、

登場人物の紹介 → テーマ設定 → 舞台設定 → アクション 

という手順を踏んでみましょう!

   

   

 


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