死刑に関する話題続きです。
京都弁護士会のイベント「死刑制度を考える日2015」に、再審開始決定が出て釈放された袴田巌さんにお越しいただけることになりました。
袴田事件を題材とした映画「BOX」を上映した後、袴田巌さんご本人、お姉様の袴田秀子さん、そして弁護団の戸舘圭之弁護士による対談があります。
【日 時】 2月7日土曜日
午後1時30分から午後4時30分
*午後1時ごろには開場になりますが、袴田さんご本人がいらっしゃるということで多数の来場者が予想されます。先着順ですのでお早めにお越しいただいた方が良いと思います。
【場 所】京都商工会議所ビル3階講堂
【参加費】無料 先着300名
【主 催】 京都弁護士会
なお、袴田さんの体調によっては京都までお越しいただけない場合もあるようです。
インフルエンザや風邪が流行っていますので、ちょっと心配ですが、きっと元気にお越しいただけるものと期待しています。
皆様ぜひお越しください。
今年度、京都弁護士会に「共謀罪新設阻止プロジェクトチーム」という委員会が作られました。
どういうわけか私がプロジェクトチームの座長(責任者)ということに...
共謀罪問題に詳しいということよりも、企画力を買われたようです。
ところで、「共謀罪」って、何のことかよくわからないですよね。
話し合って合意しただけで逮捕されてしまう!?
そんな法律が作られようとしているのです。それが「共謀罪」です。
近代刑法は心の中で犯罪をしようと考えただけでは処罰せず、その犯罪を現実に実行してはじめて処罰するのが原則です。
例外的に殺人や強盗などの重大犯罪は犯罪を実行しなくても準備しただけで予備罪として処罰されます。
ピストルを撃って相手を殺せば殺人罪、撃ったけれども相手が死ななければ殺人未遂罪、ピストルを準備しただけなら殺人予備罪になるのです。
「誰かを殺してやろう」と考えただけでは処罰されません。
ところが「共謀罪」は「誰かを殺してやろう」と二人以上で話し合い、合意しただけで処罰する法律なのです。
なぜ、共謀罪が問題なのでしょう?
犯罪をしようと話し合って合意することは悪いことだし、その後で本当に事件を起こすかもしれないから、被害を未然に防ぐために処罰してもいいような気もします。
しかし、悪いことを考えた人がみんな犯罪を実行するわけではありません。多くの人は思いとどまります。
殺してやりたいと思う人はたくさんいても、実際に人殺しをする人はほとんどいないのです。
酒の席で気に入らない奴の悪口で盛り上がり冗談で「ぶっ飛ばしてやろう!」と言っても、本当に殴りに行くことはないでしょう。
犯罪になると知らずに話し合い、あとで法律を調べたら犯罪と分かったからやっぱり止めたという場合もあるでしょう。
「共謀罪」ができるとこういう場合まで処罰されるおそれがあります。私たちはうかつには話もできなります。
盗聴されちゃう!?
実際に「共謀罪」を処罰するには、「話し合い」「合意」という「会話」が証拠になります。
そのために盗聴が必要になります。
電話やメール、SNS、会社や自宅での会話が盗聴されるかもしれません。
店舗や街角にたくさんの防犯カメラが設置されていますが、これからは高性能マイクを組み合わせて誰がどんな話をしているかまで監視されてしまいかねません。
いつ、どこで「会話」されるかわからないので、私たちの日常生活すべてが網羅的に盗聴や監視の対象となります。
潜入捜査やおとり捜査も行われるでしょう。
仲間の中にスパイがこっそり潜んでいたり、居酒屋で盛り上がっている時でも隣のテーブルで潜入捜査員が録音しているかもしれません。
共謀しても自首したら罪を免れるという制度になれば、嘘の密告で人を陥れることもできてしまいます。
犯罪を持ち掛けられて勢いで合意してしまったら実はおとり捜査だったということもあるでしょう。
「共謀罪」は、盗聴、監視、密告、おとりという手法を警察という国家権力が利用すること認めることになるのです。
これまで「共謀罪」は内乱予備・陰謀罪などごく例外的な場合に限られていました。
しかし今、政府が考えている法案は共謀罪の対象を法定刑が長期4年以上の犯罪すべてに広げるものです。
この法案だと殺人などの重大犯罪だけでなく、窃盗、詐欺、傷害、恐喝など大部分の犯罪が「共謀罪」の対象になってしまいます。
暴力団だけじゃない!?
政府は、国連越境組織犯罪防止条約に批准するための国内法整備に「共謀罪」が必要だと説明しています。
この条約はマフィアによる組織犯罪を取り締まる条約であるにもかかわらず、わが国で作られようとしている「共謀罪」は暴力団やテロ組織のみを対象とするわけではなく、
対象犯罪も幅広く、条約の目的をはるかに超えています。日本の刑法にはすでに予備罪があり、犯罪を実行していない人も共謀共同正犯として処罰でき、
銃刀法で凶器の所持が処罰されるので、新しく法律を作らなくても条約は批准できるとも言われています。
「共謀罪」は、私たちの日常生活に大きな影響を及ぼします。
いつ、どこで、だれに覗かれているかわからず、常に警戒しなければならなくなります。
処罰を恐れて、自由に考え、発言をすることができなくなります。
これまで「共謀罪」は国会で三度も廃案になりましたが、今の国会情勢ではいったん法案が提出されれば多数与党に押し切られ成立するおそれが十分にあります。
京都弁護士会では2014年11月22日(土)午後2時~平岡秀夫元法務大臣をお招きして共謀罪を考えるシンポジウムを開催します。
どなたでも参加いただけますのでぜひお越しください。
お問い合わせは京都弁護士会
https://www.kyotoben.or.jp/event.cfm#887
1月5日の朝日新聞のトップ記事
この国の刑事司法制度の大きな問題を指摘しています。
検察官は、法廷で検察側証人に証言させる前に「証人テスト」と称して、事前打ち合わせをします。
その際に、検察官に都合よく証言するように誘導したり、脅したり、利益で釣ったり・・・・
周到な打ち合わせの結果、検察側証人は完璧な証言をします。
同じように弁護人が証人を打ち合わせしようとすると、検察官は「証人威迫だ!」「偽証教唆だ!」と猛烈に抗議して、接触させないようにします。
こんな不公平な制度はありません。
そして、その「証人テスト」の場で、検察官が証人に証言を歪めさせて、被告人を「死刑」にしようとする。
「リーガルハイ」の「安藤喜和」の話も、民意が死刑を合唱する中で検察官が証拠をねつ造してまで「死刑」を獲得しようとしたけれど、それはドラマの話。
本当の裁判で、事実をねじ曲げて、人の命を奪うなんて許されることじゃない!
私が担当した殺人事件の裁判でも、検察官は被告人を死刑にするために無理やり保険金殺人に仕立て上げる証拠を持ち出してきたことがあります。
いったい検察官は裁判を、生命を、なんだと思っているんでしょう。
それを見過ごす裁判官も終わってる。
こんなレベルの低い刑事司法に「死刑」を扱う資格はないと思うのです。
【朝日新聞 2014.1.5朝刊】
宮城県石巻市で2010年、3人を殺傷したとして死刑判決を受けた元少年(22)の裁判員裁判で、検事が証言内容を指示した疑いが浮かんだ。事前に証人となる共犯者に、「(元少年の)犯行は計画的」と法廷で話すよう迫ったという。ほかの事件でも検察が証言内容を事前に証人とすり合わせたとみられる事例が相次いでおり、弁護側や裁判所からこの手法を問題視する指摘が出ている。
証言内容をあらかじめ確認することを法曹関係者は「証人テスト」と呼ぶ。録音・録画の対象となる取り調べではないため、密室で証言が誘導される恐れがあると指摘されてきた。
宮城の事件の最大の争点は、2人の殺害に計画性があったかどうかだった。裁判で問題となったのは、元少年の共犯とされ、服役中の男性(21)の証言。男性は仙台高裁で昨年4月、「(計画的殺人ではなかったと証言しようとしたが、証人テストで)だめだと検事に言われた」と述べ、一審・仙台地裁で偽証したことを認めた。「証人テストの際、『調書通りに答えればいいんですか』と言うと、『そのほうがいいね』と言われた」と告白した。
男性は取り調べ段階では元少年が前日から殺害を計画していたと供述。この通り証言すれば、元少年を死刑とする決め手となり得た。男性は証人テスト時に検事から言われた指示に従い、供述調書の通りに法廷で証言。10年11月の一審判決は元少年を求刑通り死刑とした。
男性は、検事から「結果は重大で遺族も極刑を望んでいる」と説得されて事実と異なる供述をしたといい、この経緯を知った元少年側の弁護団の依頼で、男性は二審の仙台高裁で証人テストでの出来事を証言した。これに対し検察側は「一審は総合的に判断して計画性を認めた」として一審判決を覆す根拠にならないと反論。二審判決は今月31日に言い渡される。
ゆがんだ証人テストは冤罪(えんざい)を生みかねない。愛知県で08年11月に起きたコンビニ店の売上金窃盗事件。被告の店員の有罪を立証するため、1年後の公判に出廷した店長は、事件発覚の経緯について、捜査段階とは異なる証言をした。その理由を「証人テストで思い出した」と説明。この変遷を名古屋地裁は不自然と判断して「誘導の疑いを否定できない」と無罪に。検察側は控訴を断念した。
証人テストの場で、検察官が捜査側の見立てを証人に押しつける実態は明らかにされてこなかった。朝日新聞は、相続税法違反事件をめぐって大津地検検事(当時)と証人との間で交わされた生々しいやりとりの録音記録を入手した。(岡本玄、西村圭史)証言の誘導や司法取引まがいの交渉、そして証人への圧力――。朝日新聞が入手した約3時間の録音データには、刑事裁判をゆがめかねない大津地検検事(当時)の証人テストでの発言が記録されていた。同じような問題点はほかの裁判でも指摘されており、適正な証人テストを求める声が高まっている。
アユ養殖業の男性(46)は2007年6月、父親が遺(のこ)した約35億円のうち約2億円しか申告せず、相続税約15億円を脱税したとして母親や姉とともに逮捕された。無実を訴えた母と姉は起訴され、容疑を認めた男性は起訴猶予に。争いのポイントは、養殖業の事業主が父母のどちらなのかだった。母が事業主だと、そもそも「遺産」にはあたらない。
10日後に証人尋問を控えた男性は、琵琶湖に近い大津地検3階の一室で男性検事(41)と向き合った。その際、ICレコーダーでやりとりを録音した。
検事「お父さんが亡くなる直前、次の(アユ養殖業の)代表者を決めたのは誰ですか」
男性「母です」
検事「うん? 母ですか」
検事は畳みかける。
検事「もともとお父さんは、お姉さんを次期社長として育てようとしてた」「ところがその後お前(男性)が代表者であれと決めたんですよね」
男性「まぁそう言ってましたね。お父さんは」
検事「だから決めたのはお父さんなんでしょ」
わずか2分強の証人テストのやり取りで、事業主として後継者を指名したのは、母ではなく父に。地検の描いたストーリー通りの証言を男性は求められた。
男性は証言当日にもテストに呼ばれた。
検事「お父さんが事業主ということになると、お母さんの役割は?」
男性「役割ですか……。まぁ、お父さんの片腕」
検事「ふーん、片腕……」「まぁ、端的に言うと、もう従業員だと」「そういうことにしてよろしいでしょうか」
母の役割は「従業員」にまで格下げされた。このまま証言すれば、家族の有罪が裏付けられることになる。検事は、男性に言い聞かせていた。
「お姉さんには『クモの糸』(起訴猶予)をつかむチャンスもあったわけよ」「ただそれをつかまへんかったんよ」
逮捕直後に男性が取り調べの様子を記録した被疑者ノートには、こんな検事の言葉が記されていた。「この前までは君が引き返せる黄金の橋があったが、今ではただのつり橋程度しか残っていない。どうするのかは君の決断だけだぞ」
男性は結局、証人テスト通りではなく「事業主は母」と証言し、無理やり父とする調書が作られたと訴えた。しかし判決は調書と異なる証言について、「信用できない」と退け、事業主は父と調書通り認定して母と姉を有罪とした。判決は確定し、男性は今も悔いる。「起訴猶予をちらつかされ、当初は容疑を認めた。でも家族を有罪にするため利用されただけだった」
この検事が現在所属する京都地検は取材に、「対応できない」と回答した。
■共犯者裁判めぐり「取引」 調書通り証言なら求刑減、示唆
証人テストに潜む危険性は「誘導」だけではない。「司法取引」まがいのやり取りがあったと裁判所が認定したケースもある。
06年に起きた大阪府東大阪市の東大阪大生らへの集団暴行・殺人事件。小林竜司死刑囚(29)は大阪拘置所で、共犯者とされた知人男性(29)の弁護士に「新事実」を明かした。
まだ自分の判決を受けていなかった小林死刑囚は、07年にあった知人男性の公判に出廷して証言することになった。その際検事から「協力すれば(自分の)求刑を無期懲役に下げる」「調書をよく確認して証言するように」と言われていた、という告白だった。
小林死刑囚は調書を熟読して覚え、実際の証人尋問の際には法廷に調書を隠して持ちこんだ。検事からは「持っている書類が調書だということはしゃべるな。うまくやれ、と言われた」という。
だが結局、小林死刑囚には同年5月に求刑通り死刑が言い渡された。検事とのやりとりを弁護士に伝えたのは、その判決直後だった。
「求刑を盾に利益誘導され、検察官の筋書き通りの調書を丸暗記して証言していた」。弁護士は、違法な証人テストを受けた小林死刑囚の証言は信用できないとして、無罪を主張したが、大阪地裁は同年10月、男性を有罪とした。
ただ判決は、検事が「(小林死刑囚に)判決が無期でもいいと思っている」と発言したと認定。「協力すれば有利になると示唆するようなもので望ましくない」と批判した。男性は二審の懲役18年が確定した。
■冤罪生む恐れ、記録残せ
《解説》大阪地検特捜部による証拠改ざん事件が2010年に発覚したのを機に、捜査・公判をめぐる「検察改革」が進められているが、「証人テスト」は法制審議会で議論の対象にすらならずに見落とされてきた。刑事手続きの透明化を徹底するうえで、このような「ブラックボックス」を放置すべきではない。
09年5月に裁判員裁判が導入され、「調書主義」から「口頭主義」への転換が図られた。法廷で語られることに基づいて審理する、との考え方だ。証言が重要視されるのに伴って、証人テストに力が注がれるようになる。だが、そこで捜査機関が見立てに沿った誘導や強要を行えば、冤罪(えんざい)を生んでしまうことは歴史が証明している。
否認する容疑者の取り調べ中、「ぶっ殺すぞ」などの暴言が発覚して05年に検事を辞めた市川寛弁護士(48)は現役時代、同僚が証人に調書通りの「Q&A集」を渡すのを見たことがあるという。「『調書さえとれれば』という考えがあるから私のようなゆがんだ者が出る」と指摘する。
刑事司法の信頼回復のためにも、証人テストのあり方を問い直す必要がある。検察官と証人とのやりとりについて、検証可能な形で記録が残されるよう、制度を改善すべきだ。(阿部峻介)
京都弁護士会第43回憲法と人権を考える集い
「~それでも冤罪は起こっている~」 を開催しました。
私も、実行委員会の事務局長として係わらせていただきました。
メインゲストは、映画監督の周防正行さん
「それでもボクはやっていない」「終の信託」といった刑事司法を取り上げた作品や、Shall we ダンス?」 「シコふんじゃった」 「ダンシングチャップリン」など、数々の話題作を送り出した、日本を代表する映画監督です。
来年には、京都を舞台とした「舞妓はレディ」が公開予定です。
周防さんは、現在、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の委員を務めておられ、取調べの可視化や証拠開示などについて、新しい刑事司法制度の改革に取り組んでおられます。
昨日のシンポでは、特別部会での最新の議論状況や、どうしようもない警察・検察の抵抗勢力、それを後押しする御用学者たちへの厳しい批判など、なかなか表には出せないお話を伺うことができました。
周防監督のインタビューの後は、
京都弁護士会演劇部!?による、取調べ再現の寸劇も上演しました。
酒と薬で暴れる兄を取り押さえようとして死なせてしまった弟の取り調べ。
弁護士のアドバイスを受けて殺意を否認しているのですが、このまま否認を続けていたら、母親まで共犯者として逮捕することになるかもしれないとほのめかされて、とうとう殺意を認めてしまいます。
出演した弁護士の熱演は、来場者にも好評だったようで、
「大阪弁護士会の寸劇よりも良かった」「他の弁護士会の寸劇をいくつか見たけど一番良かった!」といううれしい感想をいただきました。
私が脚本を担当して、シリアスな取り調べ場面を描いたつもりだったのですが、本番では意外なことに、会場から笑いが???
私は決してコメディーを書いたつもりはなく、ユーモアを入れたつもりも全くなかったのですが・・・・・
「リアル取調べ」を描くと、一般市民の人にとっては喜劇になってしまうようです。
第2部では、周防監督に加えて、元裁判官で「刑事裁判の心」などの著書で有名な弁護士木谷明さん、布川事件の冤罪被害者桜井昌司さんをお招きして、刑事裁判の問題点、これから求められる改革について活発な議論が行われました。
シルクホールに500名以上の市民をお招きしてのシンポジウム、
来場者アンケートを見ても大変好評だったようで、大成功に終わりました。
ゲストの周防さん、木谷さん、桜井さんにも、とても楽しく参加していただけたようです。
終了後の懇親会でも、ゲストや関わった弁護士から、楽しいスピーチが次々と飛び出しました。
その勢いに乗って、二次会はなんと、カラオケへ!
しかも大胆にもカラオケボックス!!
桜井さんは、プロの歌手なのでカラオケ好きなのはよく知っていたのですが、木谷さん、周防さんはどうだろう????と思ったのですが、気持ちよくお付き合い下さいました。
桜井さんはもちろん、木谷さんもカラオケを熱唱!
貴重な場面です。
周防さんはなんと、というか、やはり 初カラオケボックス!!
さすがに歌われることはありませんでしたが、とても楽しそうに、お手持ちのカメラでパチパチ何枚も写真を撮っておられました。
若手弁護士たちの馬鹿騒ぎに少しは興味を持っていただけたのでしょうか?
いつもニコニコと、とても寛容な方です。
深夜まで盛り上がってしまいました。
みなさん、ぜひ、また、京都に来ていただければと願っています。
日曜日の夜でなければ、いろいろ店も開いているので、今度はもっと落ち着いた店に行きましょう。
カラオケも!
弁護士ドットコムから受けた取材が、記事になりました。
テーマは、復讐屋は罪になる?
こんな内容です。
【以下、記事の内容】
初めて逮捕された「復讐屋」 メールの送り方を教えただけなら「犯罪」ではない?
【弁護士ドットコム 11月1日(金)16時30分配信 】
初めて逮捕された「復讐屋」
メールの送り方を教えただけなら「犯罪」ではない?
インターネットを検索すると「復讐代行」をうたうサイトがいくつも出てきてくるが・・・
インターネットを検索すると「復讐代行」をうたうサイトがいくつも出てきて驚かされる。こうしたサイトを運営していたとされる男性が10月下旬、名誉毀損の疑いで逮捕された。この手の「復讐屋」が摘発されるのは今回が初めてという。
報道によると、この男性は広島県に住む女性から依頼を受け、女性のかつての勤め先にあてて、元同僚を中傷するメールを十数回送った疑いがもたれている。メールは発信元がわかりにくくなるよう海外のサーバーを経由して送られていたようだ。ただ、読売新聞の報道によれば、男性は「メールの送り方は教えたが、自分はやっていない」と容疑を否認しているという。
この男性の言い分のように、復讐をもくろむ依頼人の相談を受けて「身元のバレにくいメールの送り方」をアドバイスしただけだったとしたら、犯罪とまではいえないのだろうか。辻孝司弁護士に聞いた。
○犯罪行為を知ったうえで「手段」を教えるのはダメ
「単に『身元のバレにくいメールの送り方』をアドバイスしただけであれば、罪に問われることは考えにくいですね。たとえば、『伊達直人』を名乗って身元を隠して匿名で寄付する人がいるように、身元を隠してメールを送ることが必ず犯罪に結びつくわけではないからです」
辻弁護士はこのように指摘したうえで、「ただし、依頼人が復讐をもくろんでいることを知っていながら、『身元のバレにくいメールの送り方』をアドバイスしたのであ れば、共犯になる可能性があります」と釘を刺す。
○具体的には、どんな犯罪の「共犯」になる可能性があるのだろうか。
辻弁護士は「復讐のためにメールを送るといっても、いろいろなケースがある」とし、いくつもの犯罪を列挙した。
「たとえば、復讐したい相手や家族、勤務先、学校などに直接に脅迫メールを送れば脅迫罪になります。脅迫した上で金銭を要求すれば恐喝罪ですし、何らかの行為を行わせれば強要 罪です。脅迫によって業務に支障が生じれば、威力業務妨害罪になります。
また、勤務先や関係者に相手の名誉を毀損するような内容のメールを送ったり、ブログに投稿したりすると名誉毀損罪になります。
こうした犯罪に使われることをわかった上で、アドバイスをすれば幇助(ほうじょ)犯として罪に問われるでしょう」
幇助とは、一言でいうと手助けのことだ。それでは、「復讐屋」の場合は?
○「復讐目的」であることはわかっていたはず
「『復讐屋』『復讐代行』などと銘打ったホームページを見て依頼してきた相手であれば、少なくとも『復讐目的』であることがわかっていたはずです。
そして『復讐目的』だとわかっていたのであれば、『身元のバレにくいメールの送り方』が脅迫、名誉毀損などの犯罪のために使われることも、わかっていたということになるでしょう」
全ての復讐がただちに犯罪とは言えないだろうが、「身元を隠したい」として「復讐屋」に相談してきたとすれば、疑わしさはかなりの程度だろう。そうなると……。
「依頼者が脅迫や名誉毀損などの犯罪を行うことを『復讐屋』が知っていたか、あるいは、当然わかるはずの状況であったということになれば、罪に問われる可能性が高いと言えるでしょう」
辻弁護士は、このように話を締めくくっていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
辻 孝司(つじ・たかし)弁護士
京都弁護士会:刑事委員会委員長、元副会長、日本弁護士連合会:刑事弁護センター、死刑廃止検討委員会、近畿弁護士会連合会:刑事弁護委員会副委員長、京都産業大学法科大学院非常勤講師、学校法人ノートルダム女学院監事、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事
事務所名:京都はるか法律事務所
事務所URL:http://www.kyoharu.com/
弁護士ドットコム トピックス編集部
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