循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

安定型処分場の規制強化!環境省、何をいまごろ

2009年02月23日 | 廃棄物政策
 今日(2月23日)読売が報じた以下の記事に唖然とした。

「安定型」産廃処分場、設置基準強化へ…環境省
 汚水漏れなどの問題が指摘される産業廃棄物の安定型最終処分場について、環境省は設置基準を強化する方針を固めた。
 住民側が建設差し止めを求めた訴訟で、安全性に疑問があるとして相次いで差し止めが認められたのを受けたもの。政省令を来年度中に見直し、新たな汚染防止対策を新基準に盛り込む。
 埋め立てた廃棄物中の通気性を良くして有毒ガスの発生を抑える措置や、現在は目視で実施されている搬入時の検査について成分分析の導入などを検討する。
 日本弁護士連合会などは安定型の新設を認めないよう求めているが、同省は建設費の安い安定型を認めなければ、処分場が不足して不法投棄が増えかねないとし、現行の「管理型」「遮断型」「安定型」の3区分を維持する。安定型は素掘りの穴に直接ゴミを埋める最も簡単なタイプ。
                   (2009年2月23日03時04分 読売新聞)

環境省がなぜ、いま、こんなとぼけた方針を出してきたのか。それだけ安定型処分場の被害が拡大しており、環境省も何とかしなければ治まりがつかなくなったのだろう。しかも安定型処分場は建設コストが安いから、これをなくすと不法投棄が増えるとは、まさに経済全体が落ち込んでいるのだから「環境汚染防止になぞ金はかけられない」といっているようなもので、一種の恫喝である。
 すでにこのテーマで2年前、ゴミ弁連が環境省交渉を行なった。その時も環境省はひたすらとぼけていた。以下、当時このブログに書いたルポを再掲しておきたい。

ますます重要さを増すゴミ弁連の存在
                       [廃棄物政策] 2007年10月08日
 ゴミ弁連(闘う住民とともにゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会・会長梶山正三弁護士)が結成されて足かけ10年になる。
 本年(2007年)3月30日午後、そのゴミ弁連がはじめてデモ行進を行なった。掲げるスローガンは「安定型処分場廃止を求める法改正」である。3月31日から4月1日にかけて東京で開催されたゴミ弁連第11回総会のメインテーマでもあった。デモを終えた午後4時、かねて申し入れていた環境省への要請行動に入った。

◆判例を知らなかった
 ゴミ弁連が同省廃棄物・リサイクル対策部適正処理・不法投棄室の課長補佐など担当者3人に手渡した「要請」は以下の4点である。

1. 安定型処分場を即時廃止すること
2. 廃棄物の処分場設置について水源地などの立地規制を行なうこと
3. 事業者の経済的基盤に関する規制強化
4. 廃棄物処分場の許可に関する自治体権限の強化などを含む廃棄物処理法の抜本  的改正

 これに対する環境省側の回答(要旨)は以下のとおりである。
 「国は適正な構造基準・維持管理基準を設置者に義務付けており、都道府県はそれに基づき厳格な審査を行っている。生活環境アセスについても専門知識を有する人たちから意見聴取をしており(安定型処分場へ)搬入する際も展開検査を義務づけているから安定五品目以外の廃棄物が混入することはない」。さらに担当者のひとりは「私は処分場を100個所ほど見ているが、すべて基準を満たし、環境にも問題ないというところが殆どだった。中にはうまくいっていないと思われる個所もあるが、すべての安定型処分場が基準未満ということではない」と答えている。
 どこへ行って何を見てきたのか。
 安定型処分場が全国各地で深刻な被害をもたらしている事例は枚挙に暇がない。安定五品目に有害物質が含まれていることはむろん、腐敗性、可燃性廃棄物が混入する可能性は多くの裁判事例が認めるところであり、悪臭や発酵熱による農作物の被害等も続発している(千葉県銚子市のキャベツ畑、神奈川県三浦市の大根被害など)。さらに筑紫野市(福岡)や栗東市(滋賀)の安定型処分場から数万ppmレベルの硫化水素が発生した事実も耳目に新しい。 
 安定型処分場に対する司法判断で最も有名なものに1992年(平成4年)の宮城県丸森町仮処分決定がある。いわゆる人格権裁判だ。
 ごく最近では2005年7月19日に本訴判決のあった水戸市全隈(またくま)の建設差止め請求があり、ここでは「安全な水道水を享受する権利」が認められ、住民側勝訴となった。 
 裁判に至らないまでも「埋立廃棄物に付着していた木くず、紙くず等の有機物が腐敗したところに長雨による雨水の浸透で嫌気状態となった多量の浸出水が漏洩、周辺河川に変色・異臭をもたらした」ケース(八王子戸吹処分場)や閉鎖した安定型処分場の跡地に学校が建ち、児童らが目や頭の痛みを訴えたケース(沖縄県読谷村)などがある。
 以上の事例はまさに氷山の一角だが、信じがたいことに環境省側はこれらの情報をまったく把握しておらず、特に裁判事例については「判決文があったらそれをいただけないか」といい出す有様だった。交渉に当たった弁護士たちもこれには絶句、「とにかく(判決文を)提供するから、現場で何が起きているかを十分勉強してほしい」と通告して約1時間の要請行動を終えた。
  
◆安定型をなくせない環境省 
 環境省(旧厚生省)の危機意識のなさはいまにはじまったことではない。以下のような新聞報道がある。
「環境庁は全国1600か所を占める安定型処分場の中から82か所を無作為抽出し、94、95年の2年間にわたって調べた。こうした調査は初めて。重金属類については水銀、カドミウム、鉛、ヒ素の4種類が12か所から検出され、7か所で地下水の環境基準を上回った。(中略)重金属類か発ガン性物質のいずれかに汚染されている処分場は全体の36%にあたる30ヵ所に上った」(読売新聞1996年11月29日付け)。
 本来、厚生省はその時期に有効な手を打つべきであった。事実1997年の廃棄物処理法の本格改正にあたり、中環審の中では安定型処分場の廃止についての論議が高まっていたという。しかしそれは見送られ、わずかに自動車のシュレッダーダスト、廃プリント配線板(鉛を含む仕様のものに限定)、鉛蓄電池の電極、廃ブラウン管、廃石膏ボードなどについて安定型処分場への埋立を禁止するにとどまった。
 こうした動きを見ると、当時環境庁という官庁が如何にそれなりのチェック機能を持っていたかがよくわかる。その機能を飲み込んで省という形に一本化したことが果たして正しかったのかどうか。
 最新の統計によれば安定型処分場の数は1,554。最終処分場全体の61.0%だ。これを廃止したら確実にパニックが起きる。環境省の思い込みと恐怖はそこにある。


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