今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・宿堂坊山、三俣山、黒檜岳

2007年08月30日 | 山登りの記録 2007
平成19年8月27日(月)
宿堂坊山1,968.0m 三俣山1,980.2m シゲト山1,835m 黒檜岳1,976m

 日光方面の山で気になっている山がある。宿堂坊山と三俣山だ。特に名前が気に入っている宿堂坊山には以前から登りたいと思っていた。日光白根から皇海山に続く群馬栃木県境稜線は、もう随分昔から辿りたいと思いながら果たせないでいる。単独には宿堂坊と三俣だけが残って、他は登っているが、これらの山々を繋いで縦走してこそ魅力があるんだけど…なかなか日数も掛かることだし、リタイアしてからのお楽しみというところでしょうか。

 宿堂坊山に登ろうと資料を集めていたら、ネットで見るだけでも随分たくさん登られている。ぼく的にはここは秘峰のつもり?だったのだけど。どうも、ここだけ単独なら、かなり簡単かつ短時間で登れてしまうようだった。或るガイドブックによれば、もうここは登山道に近いルートがしっかり付いているということ。ふーん。そうだったのか。それなら、三俣山まで足を延ばし、できれば黒檜岳まで周回して中禅寺湖に降り立とう、と思った。黒檜岳からシゲト山までは3年前にピストンしていた。でも、このコースを日帰りするのはかなり強行軍みたいだから、時間のかかり具合とコンディションで決めることにして、日曜の夜に奥日光に向かった。

 赤沼茶屋裏の無料駐車場は数台車が停まっている程度。日曜の夜だから山に登ろうとする人たちも少ない様子。今回、行きは徒歩で西ノ湖まで向かい、帰りは千手ヶ浜から、或いは西ノ湖入口から低公害バスを利用しようと思った。しかし、最終が16時19分なので、乗れなかった場合は帰りも徒歩になる。周回した場合はかなり微妙な様子だ。

  ぼくにとって、赤沼から小田代が原を経て千手ヶ浜へ続く道は山登りとは関係なく、キノコ採りのエリアだった。もう、20年以上も前になるけれど…当時は千手ヶ浜まで普通に車が入れたし、夏の千手ヶ浜付近は一大キャンプ場エリアだった。特に学校キャンプで賑わっていたようだった。しゃくなげ橋付近から小田代が原辺りまでのミズナラの森が、ぼくのキノコ採りのホームグランドだった。9月になると毎週出かけて、どっさり採ったもんだ。主には天然のシイタケだけど、ムキタケやハナガサイグチやヒラタケやヌメリスギタケなんかを笑いが止まらなくなるほど採りました。(昔の話です…)分厚くて傘が大きく張った天然シイタケの旨さは、今でも忘れられないな。

  赤沼無料駐車場の一番奥に車を停めてシュラフにくるまった。アラームで4時半に目が覚める。駐車場には他に2、3台しか車はない。車の外で着替えているハイカーもいる。朝霧で見通しは利かないが、上空は晴れているようだ。当然、初夏の頃と違ってこの時間ではまだうす暗いけれど、起きようか否か少し躊躇していた。当然今日のコースを考えれば、少しでも早立ちをした方が良いに決まっている。

  あんパンを食べて、支度を済ませ、5時丁度に赤沼駐車場を出発した。黒檜岳まで周回するとすると、この時間では少し遅い出発だろう。
駐車場に一頭の大きなメス鹿がいて植え込みの草を食べている。側に行っても逃げもしない。増えすぎたのは彼ら(彼女か…)に罪は無いのだろうが、こうして山から下りてきてそこいら中の草や若木を食べている。奥山の笹が食べ尽くされて、深い笹薮も少なくなっている現実をぼくも感じている。メス鹿の目はつぶらで愛らしかった。やっぱり彼女に罪は無いのだろう。自然界のバランスを崩したのは誰の責任か?

 赤沼茶屋から中禅寺湖方面に少し戻り、千手ヶ浜に続く道に入る。今ここにはリモコン電動の頑丈な車止めがあって、一般車は進入禁止になっている。馴染み深い道をてくてく、ぽくぽくと歩いていく。霧が晴れてきて男体山や白根外輪山の外山などが見えてきた。冷たい外気は長袖シャツを着ていても少し寒いけれど、とても気持ちが良い。このところ久しくこんな空気味わってないなあ。猛暑にはうんざりだ…。

 かつてキノコ採りに励んだミズナラ林を過ぎると、やがて小田代ヶ原だ。昔からここは素人カメラマンに人気の場所だったけど、今でも相変わらずらしい。シカ避けのネット(電柵)にぐるりと囲まれているので牧場みたいにみえてしまう。もう霧にぼんやり浮かび上がった木々と原の景色をカメラで追っている人がここにいた。
小田代ヶ原から弓張峠を下ってしばらくは落葉松の植林と白樺林が続く。

  西ノ湖分岐に6時36分着、かつての駐車場はそのままだ。分岐から800㍍程未舗装の道を進むと再び分岐になり、これが柳沢林道で宿堂坊山方面に続いている。林道に入って1.5㌔程、柳沢川に大きな堰堤がある地点が宿堂坊山東尾根の末端部だった。
  今回「栃木の山紀行」さんや「ひとり山歩き」のホリエさん、山部さん等の記録を参考に宿堂坊の最短コースとして選んだ東尾根を辿ることにしていた。幸い飛び石伝いに難なく渡渉できた。7時07分に対岸の薮っぽい急斜面を少し登ると、尾根沿いにはっきりした踏み跡と赤テープを見つけた。取っつきこそ薮がちだったが、登るにつれて薮もなく、道といっても良いほどのルートになった。呆れるほどたくさんの赤テープやリボンが下がり、前を見ても振り返っても、それこそ2,3㍍おきに目印だらけで迷いたくても迷えないほど。

  傾斜は急だが樹林の下には薮もなく、少しばかり倒木を迂回したりするくらいで歩きやすい。ぐんぐん登るが、暑くて汗でびっしょりになった。樹下で涼しいから良いものの、陽が当たっていたらばててしまいそうだ。大きなアブがぶんぶん飛び回ってうるさい。樹間から三俣山付近の稜線が遠くに望まれた。しばらく登ると、尾根の東側に笹の小原が時々現れ、中禅寺湖を俯瞰できた。男体山の頂上部には雲が被り、全体にはどんよりと曇っていく空模様だ。

  やや傾斜が緩くなって広い尾根状になった。二重山稜の公園風の景観が続く。汚い水が溜まった小さな池塘もあった。ここがアブの発生地…か。
振り返ると、いつの間にかコメツガ林に変わり、樹間から大きく錫ヶ岳が見えた。間もなく広々とした緩傾斜の笹原に、ダケカンバの巨木が疎らに生えた所となり、中央に笹の小山が見えてきた。そこが頂上らしい。

  9時23分宿堂坊山頂着。山部さんのや、栃木の山紀行さんのや、沢山の山名板が賑やか。錫ヶ岳と同じ御料局の青黒い三角点標石は、掘り出されたものか、むきだしになって中央に立っていた。国土地理院の三等三角点の方は、ちゃんと頭だけ出して埋まっていた。渡渉地点から2時間15分で到着。低公害バス利用で登れば、西ノ湖入口から2時間半の軽いハイキングコースと言うところだろう。成る程、これは秘峰とかいうレベルじゃない。踏み跡の様子からしても、かなりの人がここに登っているようだった。赤沼茶屋から歩いてきたから、4時間以上歩いて到着したわけで、ぼく的にはむしろ、温めていた山だけにこの方が登った気がして満足だ。

  周囲をダケカンバ等の高木に囲まれた「笹原の小山」といった雰囲気の頂上は、当然全く展望は無かった。コロッケパンをかじりながら、他には誰も居ない静かな山を楽しむ。時間からしても、充分予定のコースを歩けそうだ?

  9時48分宿堂坊山を出発。下りに掛かるといきなり笹が深くなるが、道型もはっきりしているし、目印はうるさいほどで何の問題もない。時々木々の間から、周囲の山が見えるが、残念ながら広く展望のある所は無い。錫ヶ岳から群馬県側に続く、笠ヶ岳や三ヶ峰の地味な稜線が見えた。日光側は黒檜岳から三俣山の稜線が見えるが、これを辿っていくのは嵩がありそうだ。ここから三俣と最低鞍部付近までは基本的に下は笹で、中間はシャクナゲの密薮帯だ。シャクナゲがこれだけあるから、花期には見事なことだろう宿堂坊は「シャクナゲの山」として益々登山者が増えそうだ。

  かつては身を没する程の深い笹薮だった様だが、鹿が増えたせいでか、ここの笹も喰われて丈が低くなった様だ。笹は問題ないが、シャクナゲは少し煩わしい。宿堂坊を一段下りた所で東側に笹が広がり、日光方面の展望があった。もう一段下りきって、三俣との最低鞍部付近から見上げる宿堂坊山はなかなかピラミダルで見栄えがした。最低鞍部は広々とした笹の広がる平坦地で、5月に登った奥袈裟と法師岳間の景観に似ていた。奥山の静寂が満ちているそこは、鹿の休み場であるようだ。だが、糞をあまり見ないし、実際に鹿にも会わないから密度はむしろもっと低い山の方が高いのだろう。枯れて目立つアスナロの株立ちが印象的。これから上り返す三俣山はのっぺりした壁の様で高かった。曇りがちながら、時折陽が差すと夏の景色に戻る。結構ひなたは暑いのだ。

  280m程登って、西側から回り込むように三俣山の山頂部に出る。ミヤマハンノキは早くも枝先から紅葉が始まっている。木々越しに群馬県側の泙川(たにがわ)流域の奥深い山が見下ろせた。11時50分に三俣山着。どうにか、お昼前に三俣山に着くことができたが、このまま黒檜岳まで縦走すると、どう頑張っても千手ヶ浜発の低公害バス最終便(16時19分)には間に合いそうもない。

  三俣山の山頂は、宿堂坊山より更に山頂らしくない、「樹林の道の途中」といった雰囲気の場所だった。山部さんと栃木の山紀行さんのプレートが木に付けられていた他にも、幾つかの看板があった。三角点は埋まっていたので「何等」かは確認できなかった。西側に少し下がると群馬県側の展望があり、皇海山や旧利根村(現沼田市)の地味で深い山並みが見渡せた。ここまで来られた事でとても満足。恒例のカップ蕎麦を作って、しばし一人きりの山を堪能する。

  12時20分に三俣山頂を下る。さて、まだ引き返すか、黒檜まで縦走するか決めあぐねていた。でも、気持ち的には黒檜まで行きたい。宿堂坊まで戻ると登り返しがまたきつい、縦走するときつい登り返しはないものの、距離も長くてバスには間に合いそうもないから、また赤沼茶屋まで2時間余計に歩かなくてはならない。どうしようかな…。迷いながらも、足の方は西側に回り込む往路を戻るコースから、黒檜に縦走するコースに向いていた。

  かなり意図的に黒檜を指すプレートに従って東進した。矢張り、最初に決めた通りにしよう。

  黒檜岳に続く稜線は、群馬栃木県境稜線の道に比べると、ずっと踏み跡も薄く目印も少ない。いよいよ楽しいヒトケの少ない世界?三俣山と同じくらいの高さのコブを一つ越え、次の1,928m峰は上り下りがきつかった。足尾方面の展望が開け、中倉山から沢入山・オロ山・庚申山・皇海山・鋸山・袈裟丸山とずらりと並んで良い眺め。沢入山付近の荒廃したむき出しの山肌は、周囲とは異質で目立つ。午前中は曇りがちだった空模様は少しずつ好転して、青空が広がってきた。空気が少し乾いてきたのか、陽が当たっていてもあまり暑さを感じない。1,928m峰を12時49分に通過。

  1,928m峰山頂は樹間の笹の小平地で、何も無かった。これを急降下して足尾側が笹になるとシゲト山への登りになる。丈の低いコメツガの横に伸ばした枝が煩わしい稜線を進み、大平山が近づいて見えてくると、懐かしいシゲト山山頂。ここから先は既知のコースとなる。シゲト山通過14時。青空の下にくっきりと日光白根のドームが見える。

  シゲト山と黒檜岳間は目印も少なく、地形も複雑で迷いやすいが、前回右往左往した経験で今回はすんなり通過した。黒檜岳のロボット雨量計に15時着。振り返ると越えてきた山並みが、奥の三俣山と北の宿堂坊山から幾つものコブを手前に見せ、随分遠くに感じた。黒檜岳山頂に15時6分着。もうこの時間ではバスに乗ることは不可能に近いだろう、1時間じゃ千手ヶ浜まで下れない。脚も大分疲れてきたし…。でも、休まずに、もしかしたら、と思いながら早足に下った。

  中禅寺湖の汀が直ぐ下に見える辺りまで降りてきたが、時計を見ると既に16時になっている。バスに乗ることは諦め、後はゆっくりと下った。下でバスのホーンの音が聞こえた。あーあ、あと30分の余裕があればなあ。

  16時40分に千手ヶ浜に着く。しーんと静まりかえった千手ヶ浜には人影はなかった。とぼとぼと、「2時間歩くんだ…」とバス停を横目でにらんで歩き出したとたん、後方から一台の車が近づき、ここで幸運な事に千手ヶ浜にお住まいのXさん(たぶん?)が所用で出かけられる車から呼び止められた。ということで、車に乗せていただいてあっという間に赤沼茶屋まで送っていただきました。本当にラッキーでした。
「ありがとうございました」

  あっけなく赤沼茶屋に17時10分に到着。帰りに寄ろうと思った水沼温泉センターはお休みだったので、粕川温泉元気ランドまで回り、疲れを癒して帰宅した。

ちょっと強行軍だったが、気になっていた宿堂坊山と三俣山に登れ、おまけに黒檜まで周回できたのでぼくとしては大満足だった。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おつかれさま (重鎮)
2007-08-30 23:07:43
こんにちは。
相変わらすのロングコースですね。
宿堂坊山はもはや秘境ではなさそうですね。

私は宿堂坊山と三俣山の間は未踏になっています。
三俣山に行ったときに、宿堂坊山を考えましたが、その当時はあまりにも情報がありませんでした。
そこで、往路を戻るという事になってしまいました。

それにしても、車道の2時間を歩かなくて済んだのはラッキーでしたね。
ところで、あそこに住んでいる人がいるんでしょうか?

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秘境もなかなか無いですね (あさぎまだら)
2007-08-31 00:55:38
最早、日帰りできるエリアに秘境と呼べる山は
無いのでしょうかね。
静かな山であれば、それで良いんですけどね。
宿堂坊も三俣も充分「静かなる山」ですね。

千手ヶ浜には私宅があります。
というより、あの一帯は私有地です。
クリンソウが有名ですが、それも個人のお宅の敷地内
ということです。
大変自然にも造詣が深い方の様です。
とても重厚で高い見識を持っておられるように感じました。
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ロングコースですね。 (山部)
2007-10-04 00:41:59
あまぎだらさん、重鎮さん、ご無沙汰しています。
宿~三俣~黒檜周回ご苦労さまでした。以前の私などは宿だけでも大変でした。あの頃は楽しかった地図読みも真剣でした。現在地把握にとらわれて余裕のないものでした、それも今は楽しい思い出です。

栃木の秘境、秘峰なら奥鬼怒ですね、湯西川の奥にある枯木山なんて最高です。これから紅葉の時期です。湯西川までも時間掛かるからなー。
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ご無沙汰してます (あさぎまだら)
2007-10-05 00:16:05
山部さんご無沙汰してます。
ご来訪ありがとうございます。

枯木山は以前から狙って居るんですが…大嵐山から見た姿が大変印象的だったので。
なかなかあっちこっち目移りして、登りたい山が沢山あるのに、行ける日が少なくて。

栃木の山も行きたい山が一杯です。
またよろしくお願いします。


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