今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・南駒ヶ岳、越百山

2008年10月15日 | 山登りの記録 2008
平成20年10月12日(日)
南駒ヶ岳2,841m、仙涯嶺2,734m、越百山2,613.2m

 一昨年空木岳に登った時、南に連なる中央アルプスの主稜線で、ひときわ目を惹いた豪快な山が南駒ヶ岳だった。百名山にもなっている空木岳は、名前の美しさに加え山容もすらりとして均整が取れている。ぼくは空木岳に登るまで南駒ヶ岳は知らなかった。中央アルプスの山々の中でも、どうもマイナーなイメージがあり、名前で損をしているのでは無いだろうかと思う。南駒ヶ岳とは伊那側からの命名だろう。西駒ヶ岳(木曽駒)、東駒ヶ岳(甲斐駒)ときて南駒ヶ岳なんだろうか。山の形が駒(ウマ)に似てるから?雪型がウマに似てるから?木曽駒は山麓で名馬(木曽馬)を産出した事が名前の由来らしいが…駒ヶ岳ばかりだなあ、この辺り。

 その南駒ヶ岳は擂鉢窪カールと百軒ナギが特徴だ。正にスプーンでえぐり取った様な擂鉢窪カールの縁は、百軒ナギと呼ばれる崩壊崖が一気に500㍍もの落差をつけて伊那側に落ち込んでいる。『南の駒ヶ岳』という即物的な?名前では、この中央アルプス一の豪壮な山はイメージが違うと思うのはぼくだけでしょうか。(余談:一般には宝剣岳が中央アルプス一の豪壮な山のイメージが有るようですが…あれはいくらなんでも小さすぎ…ちいさな「コブ」ですよね)

 と言うわけで、前置きが長くなったが、南駒ヶ岳はぼくが登りたい山の一つになったのだった。その南駒ヶ岳と、以前から登りたいと思っていた越百山を日帰り周回できるコースを見つけたので、今回は少し遠いけれどここに決めた。登り口は木曽の大桑村というところ、このところ良く行く伊那方面から、新しくできた権兵衛トンネルを抜ければ時間短縮でどうにか行けそうだ。3連休の土曜は昼寝をして英気?を養い、夜7時半に家を出た。

 最近決まった伊那方面へのコース(内山・麦草・杖突)の3つの峠を越え、高遠から伊那市に出た。権兵衛トンネルへの取り付き道路は案内も無く、少しまごつく。真新しい4つのトンネルを抜け木曽側に出て19号を南下し、上松町の先、大桑村須原と言うところから伊奈川ダムに向かう。中央アルプスへの登山口がある伊奈川ダムだが、案内の看板などは無かった。伊奈川ダムの先で林道はゲートで封鎖され一般車はここまで。広い駐車場と登山口の案内やカード入れのポストがある。3連休の中日になるが、駐車場はかなり余裕だ。夜中の1時20分に大桑登山口駐車場に着いた。

 今回の周回コースは、日帰り可能とはいえ通常のコースタイムで13時間は掛かるからどうしても早出をする必要がある。3時半に起きて、4時には出発しないと日が短いこの季節には厳しい。と言うことだから、寝る時間は正味2時間。前日昼寝をしておいたからどうにかなるか…。空は満天の星空で、お天気は心配なさそうだった。

 3時半にアラームで目覚める。当然まだ眠いが、支度を始める。駐車場に停まっている車にも明かりが灯り、出発の支度をしている人がいるようだ。パンを食べ。支度をしているうちにも駐車場に到着する車がある。とはいえ、そんなに人は多くない様子。

 4時3分に駐車場を出発。当然真っ暗で、ヘッドランプを点けてちょっと前に先行した人の後を付けて林道を辿る。直ぐにゲートがあり、その先の今朝沢橋を渡った所で右の今朝沢林道を進む。最初は舗装された林道だったが、しばらく歩くと未舗装になる。林道とはいえ、かなりの上り道だ。10分程歩いて先行した人を抜く。少しペースを上げすぎて越百山への登山口辺りで股関節が痛くなった。こんなんじゃ先が思いやられる…ヤレヤレ。

 越百山登山口から更に傾斜のきつい林道をしばらくで、南駒ヶ岳の登山口ニワトリ小屋橋に着いた。『南駒ヶ岳今朝沢登山口(四合目)』の看板があり、ここからスチール階段を登って登山道に入った。南駒ヶ岳まで5.5時間とあった。尾根を巻きぎみに一旦今朝沢に降りて、そこからジグザグの急登が始まった。次第に明るくなってくるが、足元は薄暗いからヘッドランプは点けたまま。『南駒ヶ岳頂上へ4.5時間』の看板がある辺りでランプを消した。まだ少し暗いが、樹林越しに越百山らしい山が見えるようになってくる。

 6時32分に見晴台の標識がある尾根の末端に上り着いた。背後下に糸瀬山が見える、見上げる尾根は更に高い。見晴台の名前が付いているが、見晴らしは良くない。しばらく先で、樹間から朝日を浴びた御嶽山が見え、越百山の稜線も見えてきた。すっきりと晴れた快晴で、今日は素晴らしい眺めが期待できそう。しかし、寝不足で、歩きながらも居眠りをしそうになるくらい調子は上がらない。傾斜は緩んで、この先は尾根どおしに、主には向かいの越百山を眺めながらの登りになる。コメツガ等の黒木に混じってツツジ類は真っ赤に紅葉し、ダケカンバが黄葉している。標高2,000m付近が紅葉の盛りのようだった。その先はもう少し終わり始めている。

 行く手に2,411m三角点の尾根が見えるが、まだ高い。7時8分に六合目2,100mの標識を見る。この立派な標識は大桑村で建てたようだ。帰りに下った越百山から今朝沢へのルートは、古くて良く読めないような標識ばかりだった。当初心配した薮もなく、ルートの刈り払いは夏場に地元でやっているのか、とても歩きやすい登山道だった(このコースは一般的には破線扱い)。わずかに、最後の南駒ヶ岳と2,712mピークの間でハイマツが覆いかぶっているところがあったくらいだ。

 北方に見える三ノ沢岳が下っていく尾根の中程に、ゴツゴツしたいかつい岩山が見える。この山が気になったので後で調べたら、蕎麦粒岳(2338.7m)という山らしい。道はないが、登っている人はいるようだ。木曽の風越山から尾根伝いに登れるらしい。とても見事な岩山なので、いつか登ってみたい。頂上からの眺めも良いらしいし…。登りたい山がまた増えちゃった…。

 2,411m三角点を8時丁度に通過。シラビソの樹間から越百山が間近に望まれるようになる。安平路山と摺古木山の向こうに、特徴ある茫洋な恵那山が意外に近く見えた。その右手には、ここからだと双耳峰に見える南木曽岳があった。花崗岩砂の崩壊したナギの縁を通過し、周囲は低い木々となり、空木岳や東川岳・熊沢岳などが見え隠れしてくる。写真を撮っていたら、後続の単独ハイカーがやってきて道を譲る(この人は林道で追い抜いた人です…多分)。

 一登りで、8時39分に北沢尾根の上部2591m峰に出た。初めて、目の前に紅葉した木々で足元を彩った南駒ヶ岳が姿を現した。中ア南部の雄、南駒ヶ岳。右手に逆光の鬼の面のような岩山『仙涯嶺』を従え、堂々たる山容は圧倒的。空木岳と見比べると美女と野獣の様だ。人の少ない静かな秋の日を浴びて、豪壮な南駒ヶ岳は屏風絵のようだった。

 ハイマツに覆われた2591m峰の上に登って、遮ることのない大展望を楽しみ、ここで少し休憩した。デジイチでアングルを代え何枚も写真を撮りました。しーんとして、本当に静かです。

 8時48分に2591m峰を後に、いよいよ南駒ヶ岳に向けて最後の上りを行く。ハイマツが覆いかぶり気味の道を、まず手前の2712mピークに向けて登るのだが、広がる大展望で気分は良いもののペースはダウン気味だ。2712mピークを9時26分に通過。2591m峰から頂上まで1時間とあったが、ハイマツをかき分けたり、ごろごろした花崗岩をまたいだり、乗り越えたりのせいもあるが、本当のところは寝不足と疲れと高度のせい?でか、頂上までとても長かった。

 空木岳から木曽駒までずらりと見える。南は仙涯嶺から越百山、背後は糸瀬山など木曽路の山々の上に御嶽山が大きく、その向こうに乗鞍岳から槍穂高など北アルプスまでパノラマだった。ようやく10時8分に南駒ヶ岳山頂に着いた。山頂には誰も居ない。休憩を入れてジャスト6時間…結構かかったなあ。

 南駒ヶ岳山頂からは、今までの木曽側の眺めに加え、今度は伊那側の大展望が待っていた。目の前に伊那盆地を挟んで南アルプスの全山がずらりとくっきり見え、塩見岳の右手に富士山が頭を出していた。八ヶ岳や浅間山方面も霞むことなく見えていた。凄い眺め。

 南駒ヶ岳山頂には山名標識と小さな祠があったが、ここには三角点は無い。花崗岩と花崗岩砂に覆われた山頂や稜線は、空木や木曽駒と同じく中央アルプス共通のものだった。左手下に擂鉢窪カールと百間ナギの凄まじい崩壊岩壁が見下ろせた。山頂で休んでいた25分程の間、3人の人が空木方面からやってきたが、他には人も見えない。本当に3連休とは思えないほど静かな山だ。10時34分に南駒ヶ岳から越百山への稜線に向かう。

 南駒ヶ岳は山頂部が2つある、次のピークに御料局の三角点があった。ここのものは埋まっていたが、越百山で見た三角点は足元の花崗岩砂が失われて本来埋まっているはずの全体が地面に露出していた。花崗岩砂とハイマツのプロムナードが続く。南駒ヶ岳から一旦少し下り稜線の東側を巻いて仙涯嶺の基部に出る。越百山方面から縦走してくる人たち5人程とすれ違う。仙涯嶺は見たほどの事もなく、西側から巻き気味に北のピークに立ち、縦走路は次の最高点は通らずに巻いてしまうが、ここはほんのちょっと登って仙涯嶺の山頂に11時38分に立った。

 仙涯嶺に着いた辺りから、黒い雲が木曽側から張り出してきて上空を覆ってくる。見下ろす木曽の谷は雲に埋まりつつあるし、西の方は低い墨色の雲に包まれてきた。反対の東側は南アルプス上空も青空だし、富士山も良く見えて関東方面も晴れているようだ。槍穂高も良く見えているから、北アルプス方面も晴れているようだった。しかし、雲が張り出してきたとはいえ、大きく天気が崩れる様子は無かった。でも、すっかり上空が曇ってしまったので少し寒くなる。

 仙涯嶺から越百山までは緩いハイマツの稜線を上下して、13時03分に越百山に着いた。ここでも4.5人の人を見たが、やはり人影は疎らだ。写真を一杯撮ってゆっくり歩いてきたから、南駒ヶ岳から2時間半かかった。露出した三角点の脇で湯を沸かし、カップ蕎麦を食べた。なんだか何時もに比べてマズかったのは何でかな?(固いうちに食べたせいもある)

 後着した年配の男女3人組が、昨夜停まった小屋についてアレコレ不評を述べていたが、どうもこの方達は勘違いをしている様でならない。最近はアルプスも軽装で簡単に登れてしまうから、こういった勘違いの方達が増えているのだろう。

 大分雲が湧き出して、直ぐ真下に見えている赤い越百山避難小屋の屋根も、流れる霧に見え隠れしてくる。ケータイで「奥さん」にこれから山を降りるよと連絡。13時34分に越百山を下った。越百山避難小屋は『予約で一杯』で、泊まりは受けられませんとのこと(素泊まりならいいのかな?)。小屋の前で宿泊を断られたご不満そうな人達がいました。

 避難小屋からガスに包まれた急斜面を坦々と下り、行きに登った北沢尾根より若干原生林っぽい?樹林をどんどん下った。このコースの方が途中に何カ所も水場があって、傾斜も緩い感じで、やはり一般的なコースのようだった。16時24分に今朝沢越百山登山口に降り立つ。林道を歩き始めると、少し薄暗くなってきた。やや疲れたなと思った頃、17時丁度に駐車場に戻ってきた。アルプス日帰り周回としては、時間はそこそこ掛かったが疲れはそれ程でもなかった。

 帰りは木曽町(旧木曽福島町と日義村等が合併)の日義にある木曽駒天神温泉「青雲荘」という民営の国民宿舎に寄って入浴した。ここのお風呂は広くはないけど『メタ珪素…他』のいかにも効能がありそうな温泉だった。ぬるっとしたお湯は少し鉄さびのような臭いがした。泊まりのお客さんが、渡り廊下が延々と続く離れのお風呂手前にある『食堂』でバーベキューの夕食を食べていた(美味しそう…)。大変庶民的で気軽な施設でした。小さいけれどポリバスジャグジーの露天風呂もあります。500円は安いかな?

 すっかり気持ちよくなって、また往路を引き返した。伊那で夕食を食べて、後はいつものコースで帰還した。家には0時ちょっと過ぎに着いた。往復600㎞近く走った。やっぱり遠いですね。とても静かな中央アルプスハイキングだった。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
600キロ (重鎮)
2008-10-15 23:04:26
標高2500mを越えるというのは、本当に素晴らしい景色に出会えますね。
紅葉と森林限界のコントラスト差が際だちます。
ウ~~ム
往復600キロもかかって、駆け足の登山とは。
できれば、平日の山小屋に一泊してゆっくりとしたいものです。
あさぎまだらさんは、台風が来たって翌日の予定に、間に合うように行動するんでしょうね。


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ゆっくりしたいですね (あさぎまだら)
2008-10-15 23:35:43
ゆっくりしたいですよね。
平日にのんびり小屋泊まりできるような身分なら…。土日旗日の小屋泊まりは遠慮したいし、
さりとてテント担いでは苦しいですね。
基本的に重いもの担いで山に登るのは好きじゃないんです。
昔の『山部』でのトラウマがあるのかも?
軽快に山を歩きたい。それはモットーです。
つまり、なかなか思うようにならなくて、今のようなスタイルで登っているわけです。

のんびりは良いですよね。
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600キロ (しぼれ)
2008-10-19 05:14:30
本当に遠い距離です。それにしても素晴らしい景色ですね。南駒ケ岳の名前をお山の引き出しに入れました。
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遠いですよね (あさぎまだら)
2008-10-19 20:59:56
最初は遠いと思っていたこの方面ですが、
昨年南アルプス光岳に登ってから結構通っています。
コースが定まり、何回か行っているうちにあまり遠いことが気にならなくなりました?
確かに距離は変わらないんですけど。ガソリン高はひびきますね。少し安くなったから良かった。

北アルプスよりも南アルプスが好きです。
人が少ないことと、重厚な雰囲気が。
中央アルプスは最近登り始めましたが、日帰りピストン向きですね。北部の木曽駒周辺を除けば人も少ないようです。

景色の素晴らしさは言葉も有りません。
本当に素敵ですね。
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