Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

今年のミヤマシジミ

2009-08-31 20:09:46 | 自然から学ぶ

 久しぶりに天竜川河畔にチョウの様子をうかがいに行ってきた。ツメレンゲノが生育している大鹿村への県道端は年々護岸に土砂が覆い被さり、かつてはそれほど丈の長い草は無かったのに、今や草ぼうぼうとまではいかないもののそれに近い状態になりつつある。ツメレンゲにとって環境が悪化していると言えるのは、丈の長い草によって陽射しが遮られてしまうことと、これ以上他の雑草に占有されると生育箇所がなくなっていく。果たして乾燥環境から若干なりとも湿潤化した環境が生育条件としてどうなのかということになるのだろうが、毎年足を運びながらその状況を確認していきたい。ツメレンゲそのものはともかくとして、以前盛んに飛んでいたクロツバメシジミの姿は影を潜めている。ツメレンゲノ状態をみると食痕が以前よりも目立たなくなったことも蝶そのものの個体数の減少をうかがわせる。それにしても道端であるこの護岸になぜこうも土が被さってしまうのか、日々の環境がそうさせていることは言うまでもない。この場所から少しばかり上流に遡ったところには砕石のプラントがある。かつてダンプ街道と言われた大鹿村への県道だけに土砂を運搬するダンプは絶えない時期があった。かつてに比較すると公共事業の減少に伴ってその量はだいぶ減ったのかもしれないが、この道に相変わらずダンプが行き交っていることに違いはない。そうしたダンプの巻き上げる砂塵のせいなのか、それともダンプそのものからこぼれ落ちた砂によるものなのか、明らかに年々覆い被さる土砂の量が増えていることは確かである。たとえ舗装された現代にあっても、土砂運搬車が往来する道端に住むということはたいへん迷惑なことなまだということはこの状況からうかがえる。

  ここではなかなか蝶の様子をキャッチできないため、天竜川本流の護岸に場所を変えてみる。ツルボについて以前触れたが、その場所も護岸に雑草が目立つようになった。こうしてみてくるなぜ最初に訪れた際にはどこも土砂が少なかったのかという疑問が湧いてくる。ひとつには最近護岸いっぱいに洪水が見舞うようなことがなかったということが言えるのかもしれない。洪水があれば護岸に覆い被さった土砂も流してくれるだろうし、同時にある程度雑草も流してしまう。安定した河川には安定した植層ができあがっていくということなのだろう。初見の際のツルボの群れはそこには無かったが、ツルボとコマツナギが目立つ護岸であることは以前と変わりない。ここのツルボを少しいただいていって自宅の庭に植えた。植物にはこうした種も多いというが、あらためてツルボにその1年の変化を教わったものだ。乾燥した場所が生育環境に適しているのかと思うとそうでもなく、そこそこ粘性の強い土地でもしっかりと育っている。春に葉を勢いよく出したかと思うと梅雨のころになるとその葉が枯れてしまう。最初は乾燥環境でないことがいけないのかと思っていたが、秋が近づいてくると再び葉を出してくる。梅雨のじめじめした時と初夏の暑い時はしっかりと姿を隠しておいて、過ごし易いころになると生育するという人の生活に近い姿を見せる。

  さてミヤマシジミの姿はここにはたくさんあった。表面が紫色をしているから飛んでいてもそれとすぐに気がつく。とまっていてもなかなか翅を広げてくれないから紫色の表面はなかなか撮れない。コマツナギを食草としている蝶であることからコマツナギに留まることが多いが、ツルボにも興味があるようだ。今年も一応確認できたわけで、けして夏の象徴であるわけではないが、わたしにとっては夏の炎天下に飛ぶ姿が印象に強い。したがってこれで夏も終わりという、わたしにとってはけじめの日であった。

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