Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

リニアは直線へ

2009-08-28 12:24:32 | つぶやき
 この27日の長野県市長会の動きは今後のリニア問題の一つの方向を見せたといってよい。これまでにも何度となく触れてきたリニアのこと。長野県地域の広範な人たちに受益を与えるには何を言われようと迂回ルートが当然の主張だろうということを言ってきた。もちろんそれは地域の主張であって、リニアそのものがこの地に必要なのかといったもっと住民レベルでの議論は無視してのことである。市長会には伊那・諏訪・松本などの9市が協同提案した迂回ルートによる早期実現を求める議題について、今回は採択を見送ったというものである。県内にある18ある市のうちの9市を想定すれば中南信地域の市であることは容易に解る。そしてその地域の市のうち、直線ルートで実現して欲しいと本音は願っている飯田市は当然参加していない。議論の中で飯田市長は「ルート問題に言及せずに飯田駅設置、早期実現を訴えている。採択は猶予を」と求めた。9市以外の市長の中にも「時期尚早」という意見があって採択は見送られたわけである。

 ここに何が見えてくるかといえば、結局東北信地域にとってみこれば長野新幹線が走っていて、リニアにはほとんど無縁の地域となる。以前にも触れたように名古屋方面に出るにしても、現在の中央西線を利用した方が連絡は良い。もちろん迂回ルートが実現してかなり岡谷向きに駅がてきれば別であるが。簡単に言えば無関係な人たちにとってみれば負担を強いられるともなれば直線ルートの方がありがたいという向きは東北信地域の人たちに多くあっても不思議ではないのである。そしてもし迂回したとしても、長野新幹線がある以上、通常リニアを使うことはまずないわけである。胡散臭く捉えれば、なぜ諏訪や松本あたりの人たちのために「わたしたちが迂回しろ」などと主張しなければならないのか、ということにもなる。このような足の引っ張り合いは常のことである。

 ここに飯田地域の人たちの策は、隣接する地域よりもむしろ東北信という無縁な人たちに根回しをしていけば、直線ルートはごく簡単に実現できるということが見えてくる。盛んに「県民総意」という言葉がこの問題には踊り、Bルート実現を求めている人たちは「Bルートこそ県民総意」であると思っているようだが、ここに大きな落とし穴があるわけである。

 衆議院選挙を控え候補者がどう考えているかということについて触れてみると、民主党候補者は直線ルートで飯田線の高速化ということを言っていたが票がほしくてその言動を今は表には出していない。そして「どのルートでもアクセス鉄道の整備をすすめるべきだ」と大金が必要な事業を実現するという。民主党の現状の主張とは相反して公共事業が拡大しそうだ。自民党議員は中南信地域全体の望ましい交通網体形を作ることが必要」といい現実的な費用負担のあり方も考慮するべきだという。共産党議員はそもそも「福祉、教育を優先すべき」だと必ずしも今急ぐべきことではないという。JRは中間駅については地元で負担という主張をしている。まずもってここがおかしいのである。地域に影響を及ぼす大規模施設を占用するというのに、「通してやるから自分で駅を造れ」みたいな発想が横暴なのだ。そもそも占用させてもらう条件に一県に一つの駅はJRで造ります」というのが常識というものだ。こんな発想がある以上地域交通はおろか交通政策そのものの基本理念が壊れてしまう。そして大都市圏以外の土地はみな大都市圏のためにあるみたいな発想が生まれる。JRの松本社長の言葉をもっと問題にするべきことと思うが、このことはだれも口にはしない。負担があるから無縁な者は議論などどうでも良い、ようは地域構想など二の次となる。「県民総意」などといって背景は身勝手な根拠になってしまう。そんな多数決的なものではないと思うのだが…。結論的に「リニアは直線ルート」になることだろう(もちろん既定路線的イメージを誰しも持っているだろうが、それをなんとかしようとしていた長野県内の意志はとても「Bという結論には至らないだろう」という意見)。

 県歌「信濃の国」を県民のほとんどが歌ったことがあるという不思議な県民。統一できないこの地域をなんとかしようとした歌であったのだろうが、いざとなってみれば自己の益しか持ち出さない県民であるということは、さらに今後あからさまになっていくことだろう。遠慮することはない。自分も自地域のエゴのために振舞おう。
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