Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

二段水路

2009-08-22 13:27:53 | 西天竜

 

 写真の水路は上は手前側へ流れていて下は向こう側に流れている。伊那市小沢というところの春に富士山を思わせるシバザクラを植えて観光客の目を楽しませてくれているところの近くにある水路橋である。手前側には約1ヘクタールほどの水田があり、その水田から西、いわゆる木曽山脈側には水田はなくなる。ようは天竜川の端から権兵衛峠に向かって上っていくと、このあたりを境にして水田地帯から畑地帯と様相を変える。ちょうどその境界域にある水田に、この用水路は水を供給している。そもそもこの水は西天流用水路の水で、同水路の末端部にある揚水ポンプで中央自動車道を越えてさらに西に送られ、この地までやってくる。ようは機械的に送られてきた用水なのである。水が貴重であるがゆえ、いったん水路橋を越えた水は余った水は再び戻って下流域の水田を潤すことになる。それなら必要な分だけ送れば良いのに、とは思うのだが水田に用水を毎日毎時間掛けているわけではないわけで、その調整は少ない面積の中では止めるか流すかという二極の選択となってしまう。それを解消するには随時用水の供給のスイッチ操作をする人が必要になってしまうわけで、1人の人がすべて耕作していれば良いが、複数の人たちが耕作しているとなればそういう調整は容易ではない。

  ということで、随時水がやってくるが不要な分は再び戻っていくという無駄のない方法がこうした二段水路になったわけである。小さな洞を渡るために水路橋が架けられているがこの水の流れと水路橋の姿を見ていると水の流れの不思議さを描いてしまう。岡谷市川岸で天竜川から取水された水は、米の道と言われた権兵衛峠のすその近くまで揚げられている。たった1ヘクタールほどとはいっても長い時間の中で企てられてきた先人たちの思いがここにある。

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