Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「わたしのこと覚えていますか」

2008-05-18 08:46:29 | ひとから学ぶ
 あなろぐちっくさんの日記に「なんでも忘れるのだ」というものがあって、こんなことが書かれていた。「先日銀行の窓口の綺麗なオネエサンに「私のこと憶えてます?」と訊かれた。(中略)昨日は帝国データバンクの調査員が調査に来たのだけど、名刺交換して「初めまして」というと、「おひさしぶりです。憶えてますか?」と切り出されたのに、これまたわからず。(中略)先々月は健康診断でもお久しぶりと声をかけられて曖昧な笑いで誤魔化したし、今日は役所で何人もの職員が歩み寄って話しかけてくれたのに顔がわかるのに名前がわからない」というものである。この方、自ら会社を経営されていているのだろうが、それだけに大勢の人たちと関わることが多いだろう。地域では著名人なのかもれない。それだけに、相手の顔を忘れてしまっても仕方のないことだろう。

 そもそもそうした地域において著名な人に対して、「わたしのこと覚えていますか」などと口にするのはいかがなものだろう。もちろん頻繁に顔を合わせているような関係で忘れてしまっていては問題だろうが、例えば「話を聞くと、僕がカヌーを教えたらしい」というような具合に過去のことで、さらに間が空いているとしたら、相手にそういう言葉で切り出すのは自信過剰とまでは言わないが、後のことを考えると控えた方がよい言葉ではないだろうか。

 しかし、こういうことは誰でも頻繁に経験することかもしれない。とくに年老いてくるとそういう経験は多くなる。それを「歳をとった」といってしまうのは簡単であるが、歳をとるということはそれだけ多くの人と関わってくるのだから引きこもっているのでなければ当然関わる人の数が多くなる。加えて過去に遡る年数も長くなるのだから、忘れることは積み重ねている年齢とはそれほど関係ないだろう。それでも記憶が消えやすい人は、少しばかり記憶力の衰えを意識してもらってよいのだろう。

 ということで、わたしは記憶力の低下というよりも、もともと人の顔を覚えるのは苦手な方である。したがって、若いころから、よほどの知人でない限り、前述の「わたしのこと覚えていますか」などという言葉は使わないことにしている。でなければ、覚えていますか、と聞かれた方もとまどうし、それを口にした方はもっと落ち込むこともある。あらかじめ「わたしのことを覚えていないかもしれない」と思っていた方が、本当に覚えてもらっていない場合に落ち込まないものだ。そもそも「覚えていますか」と聞くことじたい、少しばかりそういう不安を持ちながら聞くのだろうが、わざわざ使う言葉としては、メリットのある言葉とはとても思えないわけである。しかし、わたしのような考えでいると、損なことも多い。「どうせわたしのこと覚えていないだろう」ということになるから、相手が覚えて目が合うと、必ず相手方からアプローチされることになる。これもまた、失礼な話しで、そのあたりは雰囲気で察知しなければならない。
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