数日前アブラゼミを初めて聞いた。ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミと暑くなるにつれて順に声が聞こえてくる。そのあとミンミンゼミが最高の暑さを締めくくるのだろうか。

「ジジジジー」「ジージー」と、暑い夏をよりいっそう暑くするセミの声だが、その名は、油で揚げる時の音に似ているかららしい。
「長い間の土の中での生活は大変だったな」と声を掛けた。接写するファインダーに写った姿は地味だが、とても美しく感じられた。何枚も写真を撮らせてくれた。横から近づくと、蟹のように横に這ってカメラの見えない方向に移動する。なんと愛おしいことか。数週間の精一杯の生を願い別れた。