-ある不思議な絵-
あれからもう2年半になる。手術の後、自発呼吸が不能となり、心臓マッサージを受ける状態でICUで十日間を過ごした。その後のICUから個室への移動は、まさに夢から現実へ、死の淵からの生還であった。
そのころ不思議な体験をした。
すっかり当たり前に生活している今も、ときどき、生死をさまよう中で見た幻覚、夢の数々が、かすかに脳裏に去来する。カーテンの揺らぎや天井に不思議の世界が広がった。真夏なのにふるさと会津の吹雪の光景を妻に知らせたりしたと言う。
そのころ病室にかけられた一枚の絵画に不思議な思いを抱いた。
高原の湖を描いた風景画で、作者はサインからロバートブッド?と読みとれた。十数本の落葉松の林間に湖が見え、対岸には高い山がそびえ夏の雲がたなびいている。
その落葉松林の空間に、ふと藤村が座している姿が見えた。その傍らには奥さんもひざまづいていた。確かにそう見えたのだ。でも、今、カメラに納めたこの絵をながめてもそのとき見えたものが見えない。
あの夢の中の不思議な情景を思い出す時、限りある人生を、日一日大切に生きていかなければと思いを新たにしている。
あれからもう2年半になる。手術の後、自発呼吸が不能となり、心臓マッサージを受ける状態でICUで十日間を過ごした。その後のICUから個室への移動は、まさに夢から現実へ、死の淵からの生還であった。
そのころ不思議な体験をした。
すっかり当たり前に生活している今も、ときどき、生死をさまよう中で見た幻覚、夢の数々が、かすかに脳裏に去来する。カーテンの揺らぎや天井に不思議の世界が広がった。真夏なのにふるさと会津の吹雪の光景を妻に知らせたりしたと言う。
そのころ病室にかけられた一枚の絵画に不思議な思いを抱いた。
高原の湖を描いた風景画で、作者はサインからロバートブッド?と読みとれた。十数本の落葉松の林間に湖が見え、対岸には高い山がそびえ夏の雲がたなびいている。
その落葉松林の空間に、ふと藤村が座している姿が見えた。その傍らには奥さんもひざまづいていた。確かにそう見えたのだ。でも、今、カメラに納めたこの絵をながめてもそのとき見えたものが見えない。
あの夢の中の不思議な情景を思い出す時、限りある人生を、日一日大切に生きていかなければと思いを新たにしている。