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【写真】事件の現場となった通学路 事件が起きたのは2018年10月25日午後3時過ぎ。現場は市内の新興住宅街の一角だった。正規の通学路だが、歩道はない。学校から近い場所だが、死角になる。
被害児童の自宅まで約50メートルの場所で、かつ加害児童の自宅の目の前だ。姉Cは、Bと同じ学年で、転倒を目撃した。そのことで心に傷を負い、学校生活に支障が出てしまったという。
目撃者は姉だけだった
筆者は、AとCの両親に自宅で話を聞くことができた。 「木曜日以外の曜日は、AもCも一人で下校するんです。ニュースで連れ去り事件が報道されて心配なこともあって、帰りの時間になると、いつも私は家の前で待っています」(被害女児Aと、目撃したCの母親) その日は木曜日だったために、一斉下校の日だった。登下校のグループで帰宅することになる。現場付近を、A、B、Cの三人で歩いていた。AがBを駆け足で追い抜いた後、BがAを突き飛ばした。目撃者は姉のCのみだ。
家の玄関先からは何をしているのかわからない。何をしているのかと思って、母親が近づくと、Bは「俺、やってねーし」と言っていたという。 「予定の時間を過ぎても帰宅しませんでした。遅かったので子どもたちを迎えに行ったんです。すると、現場でCが手招きをしていたんです。近づくと、Aは血だらけで、泣き声が聞こえました。目撃をしたのはCだけで、近所の人も見ていません」
心の傷になりフラッシュバック
Aの母親によると、転倒したAは当時、顔が血だらけだった。顔をすりむき、1本の永久歯の半分を損傷したことが後にわかる。小5の男児Bと小1の女児Aとは明らかに体格差や体力差がある。
「Cの話では、BとCが歩いて話していたところ、その間をAが走って追い抜いたんです。それを見たBが、ランドセルを背負ったAの背中を押したんです。すると、Aが転んだんです。
Cは妹が倒れ込んだのを見ています」 Aは顔をアスファルトの地面に打ち付けた。そのため、顔や口から出血していた。その状況や血だらけの姿をCは見ていた。今でも、Cは心の傷になっている。
Aは死ぬほどの恐怖を感じていたというが、なかなか言葉にはできないでいた。母親が気持ちを言葉にするために紙を渡した。Aはこう書いた。 「つきたおされたのがどうがになって心の中で見ちゃうのがしぬほどいやです。
なぜかというとしんでしまうと思ったからです」 つまりは、この日の出来事はAの心の傷になり、まるで、YouTubeなどの動画を見るかのように再体験しているのだろうか、フラッシュバックとして蘇るようだ。これは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状の一つなのだろう。死を感じさせるほどの強いショック体験をした場合にPTSDとなると言われている。
筑波大学の斎藤環教授(社会精神保健学)は、「交通事故の目撃でもトラウマになる。転ばされて血が出るほどの怪我。生命の危険を感じても不思議ではない。たった1回の出来事でもトラウマになりえます」と話す。また、紙に気持ちを書かせることについては、「体験の言語化は意味がある」と述べる。
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