3/29(月) 9:30配信
毎日新聞
スルガ銀行から2020年に男性会社員に送られてきた融資当時の資料の目録(画像の一部を加工しています)
東京都世田谷区に住む男性会社員(43)は、いま“絶望の淵”にいる。スルガ銀行から約2億円を借りて6年前に郊外の中古アパートを購入し、返済が難しい状況に陥った。不正があったとして、銀行に借金の「元本カット」を求めたが拒否された。「銀行も不動産業者も、ウソで塗り固められた言動を繰り返してきた」。男性の正直な思いだ。【毎日新聞経済プレミア、今沢真】
◇行員が「すてきな投資です」
「問題ありません。すてきな投資です。自分も銀行員でなければ投資したい」。行員の言葉に乗って築24年のアパートを買った。金利は4.5%。業者が家賃保証した全32室の賃貸物件だった。「29室が入居中で、空室もすぐ埋まる」と言われた。
だが、24室分の賃貸契約書しか渡されなかった。「足りない」と言うと、業者や行員は「家賃保証しているんだからいいじゃないですか」と口をそろえた。購入から2年もたたずに家賃が滞り始め、返済分に足りなくなった。
「だまされた。不正があった」と繰り返し訴え、金利引き下げや元本カットを求めた。行員にようやく会えると、「致命的ではないので大丈夫ですよね。契約しましたよね」と言われた。金利は1年前にやっと1.5%に下がったが、「1年限定」だった。
◇銀行は「一切知らない」
弁護士に交渉を依頼した。昨年5月、銀行から融資当時の審査資料の開示を受けた。源泉徴収票、預金通帳の写し、家賃一覧表(レントロール)。どれも改ざん、偽造のオンパレードだった。
「家賃一覧表が偽装されていた」と銀行にねじ込んだ。だが、銀行から「一切知らない。こちらは不動産会社から正規なものとして提出を受けている。不動産会社に一任されていたのは貴殿だ」という書面が送られてきた。
「偽装の可能性があると知っていたはず。知らなかったとしても確認すべきだった」と責任を追及した。不正融資を調べたスルガ銀行の第三者委員会報告書に、行員が数々の資料を偽造したり、黙認したりしていたと書かれていたからだ。だが、銀行は「融資審査の当時、改ざん等を疑うべき具体的な事情はありませんでした」と木で鼻をくくったような回答をしてきた。
◇「恐ろしい」銀行のやり口
男性会社員がスルガ銀行を心の底から「恐ろしい」と思ったことがある。購入から1年余り過ぎたころだ。融資担当の行員が別支店の支店長に昇格し、「成績のため、無担保ローンを1000万円融資させてほしい」と言ってきた。「自分の方で操作するので、あなたは何もしなくていい。利息は銀行側で持つ」との話だった。
応じると、間もなく口座に1000万円が振り込まれた。翌月になって知らない間に銀行に全額返済されていた。出金伝票を見てもいない。「これがスルガ銀行のやり口だ。支店長だったら他人の口座の金を勝手に動かせるんだ」と怖くなった。
現時点で残る借金は約1億8000万円。銀行はこの3月から金利を再び引き上げ「2.0%にする」という。元本カットを認めず、返済できると思っているのだろうか。共用部の漏水防止の修繕を迫られているが、用意できるお金はない。
◇スルガ銀行の不正融資
地銀、スルガ銀行の行員がシェアハウス「かぼちゃの馬車」の購入者に対し、預金通帳などを改ざんして過剰融資をしていたことが2018年に発覚。金融庁が一部業務停止命令を出し、購入者の損失を銀行が負担することで合意した。不正は中古賃貸アパートなど投資用不動産の購入者に対する融資でも数多く行われていたことがわかっている。
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