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核危機の瀬戸際からの脱却:核兵器のない世界に向けた緊急行動

2025年04月07日 10時38分01秒 | その気になる言葉

(仮 訳)
「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議
2025 年 3 月 31 日、東京
核戦争の危険性は、過去数十年間で最も高まっている。地政学的緊張の高まり、核
の重要性の再燃、そして新興技術の出現により、世界は核兵器の再配備にとどまら
ない帰結をもたらす際限のない軍拡競争の危険な時代に逆戻りさせる恐れがあり、
我々は正に瀬戸際に近づいている。最も憂慮すべきことは、エスカレートする通常兵
器による紛争が、核兵器の使用へと我々を追いやるリスクの高まりである。我々は今
こそ、その結果が壊滅的なものになる可能性があるという事実を直視し、核戦争を防
ぐために緊急の行動を起こすべきである。
しばしば核兵器は抽象的な形で議論されすぎていて、その危険性に対して十分に注
意が払われてこなかった。被爆者は、1945 年の広島と長崎への核攻撃の恐ろしい現
実を強調し、数十年にわたってこの問題に取り組んできた。それから 80 年近く経ち、
我々は、相互に関連し合う世界において、今日の兵器を用いることによってエスカレ
ートする戦争がもたらす壊滅的な影響を認識する責務を、被爆者と我々自身に負っ
ている。我々は、そうした戦争を回避し、人々の安全を確保するためにあらゆる努力
を払い、長崎が、核による壊滅的被害を受けた最後の場所となることを確実にしなけ
ればならない。
2026 年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議(RevCon)は、我々が団結し、共に核
危機の瀬戸際から脱却するための重要な機会を提供する。コンセンサスで成果を達
成できなかったという 2015 年と 2022 年の失敗を受け、運用検討会議で前向きな成果
を得るために取り組むことが不可欠である。我々は、核の惨事に対する最も強力な国
際的な防波堤であり続ける NPT の根幹をなす中核的な原則を再確認するために、こ
の貴重な機会を利用しなければならない。また、核戦争を防ぎ、核兵器のない世界を
追求するための大胆で実行可能な措置を採択する機会としても活用しなければなら
ない。
1 内容については 3 月 31 日に委員間で合意されたもの。ただし今後誤字脱字等の修正
が入る場合もあります。
中核的な原則
以下の中核的な原則を尊重することは、より安全な針路と核兵器のない世界への道
筋を描くことに繋がる。
1.全ての国は、侵略行為や武力による領土獲得を行わないことを含め、国連憲章
を全体として遵守する義務がある。
2.全ての国は常に、国際人道法を含め、適用可能な国際法があればそれを遵守
しなければならない。
3.全ての国は、核兵器のない世界のために尽力する責任を負うが、その取組を主
導する最も大きな責任を負うのは、核兵器を保有する国である。
4.全ての国は、NPT を中核とする多国間の核不拡散体制を維持・強化するため
対話・協力の文化を醸成しなければならない。全ての国は、技術革新に関連す
るものを含む新たな挑戦と機会に迅速に適応できるよう、協力しなければならな
い。
5.全ての国は、核兵器への依存から脱却するために努力し続けなければならな
い。核抑止が安全保障の最終的な形態であるとこれまで示されたことはなく、ま
たこれからもそうあってはならない。
上記の中核的な原則は、現在、一部の国によって無視されており、それが深刻で悪
化する結果をもたらしている。全ての国は、これらの原則を再確認し、遵守することを
示さなければならない。
緊急の措置
この危険な状況に対処し、核兵器のない世界に向けた我々の共同の取組を支えるた
めに、各国は、1)戦争及び核使用の防止、2)核軍拡競争の停止と拡散リスクの低
減、及び 3)2026 年 NPT 運用検討会議の建設的な成果を確保するための緊急の措
置を取らなければならない。
1) 核戦争の防止
核保有国は、核の使用を防止する主たる責任を負っている。我々、国際賢人会議
(IGEP)は、核戦争のリスクを低減するために以下の緊急の措置を講じるよう、核保
有国に求める。
i. 直接の武力衝突を回避する手段を講じ、明確なあるいは暗黙の核の脅しを用い
ることを含め、核に関する抑制を優先させる。
ii. お互いの安全保障上の懸案について議論し、紛争及び紛争のエスカレーション
に繋がる誤解を避けるために、戦略的対話を行い、これを持続させる。
iii. 危機の防止を優先する。
iv. 核爆発実験のモラトリアムを維持する。
v. 核兵器に関連するあらゆる決定において人間による効果的な監視を確保する。
vi. 核施設及び指揮統制ネットワークに対するサイバー攻撃を控える。
vii. 弾道ミサイル及び宇宙飛行体の打ち上げの際には事前通告を行う。
核兵器を保有していない全ての国は、核戦争のリスクを低減するために貢献すること
ができ、また、貢献しなければならない。これらの国は取るべき行動は次のとおりであ
る。
viii. 核兵器保有国に、上記の緊急の措置を講じるよう要求する。
ix. 打ち上げの事前通知を含め、ハーグ行動規範(HCOC)を完全に履行する。
x. 核保有国と共に、核兵器の重要性を減少させ、先行不使用や消極的安全保証、
その他の宣言的コミットメントの信頼性を高める措置を追求する。
全ての国は以下に取り組まなければならない。
xi. 放射性物質の放出に繋がるようないかなる軍事的行動も避ける。
2) 核軍拡競争の阻止と拡散リスクの低減
新たな核軍拡競争と拡散の力学によって、核兵器のない世界に向けた進展が損なわ
れている。全ての国は、中核的な原則に従って、これらの力学に対処する責任を負っ
ている。我々は、核の重要性を低減させ、核兵器のない世界を追求するという共通の
コミットメントを示すために、以下の措置を実施するよう、各国に求める。
i. ロシアと米国は、戦略的対話に取り組み、後継の軍備管理の枠組みについて
交渉する間、新 START 下での制限数を維持する。
ii. 中国、フランス及び英国は、軍備管理への貢献として、それぞれの国の最小
抑止概念に関する議論に取り組む。
iii. 核兵器国は新たな軍備管理のあり方を模索すべく P5(N5)プロセスの再活性
化を図り、他の全ての核保有国に参加を呼びかける。
iv. 核保有国は、不信感の低減のために、核戦力、核ドクトリン、核態勢、及び将
来の開発計画に関する情報の共有を通じ、核の透明性を向上させる。
v. 核保有国は、リスク評価やリスク管理のベストプラクティスを自主的に共有す
ることを含む、AI の軍事利用、とりわけ核指揮統制通信(NC3)への応用に関
連したリスクを低減する方策について、互いに議論する。
vi. 全ての国は、脅威認識や安全保障上の懸案に関する対話を行い、これを持
続させる。
vii. 全ての国は、あらゆる国及び非国家主体による核兵器及びその運搬システム
の拡散を防止するための措置を強化する。
viii. 全ての国は、中東地域における拡散懸念に対応すべく外交努力を行う。
ix. イランの核プログラムに係る懸念に関し、全ての関係国は、問題解決のため
の武力行使を自制するという原則を維持し、そして一旦合意に達したならば、
全ての関係国はそれを誠実に履行すべきであることに留意しつつ、同懸念に
対応するための外交努力を行う。
x. 全ての関係国は、非核化に向け、地域における核のリスクを軽減に向けた外
交努力を始めつつ、侵略行為を行わないことを相互に保証し、地域安全保障
に関する多国間対話を立ち上げるべく、朝鮮半島における関与を促進し、円
滑化する。
xi. 全ての国は、抑止が想定する前提、核政策と国際人道法との整合性、核戦争
の影響、及び核軍縮へとつながるであろう安全保障を維持するための代替的
措置についての、適切な国際フォーラムでの議論に広く参加することにより、
NPT 締約国や TPNW 締約国間を含め、抑止の見方と軍縮の見方の間の橋渡
しをすべく取り組む。
xii. 全ての国は、指導者や国民に対し、核拡散リスクや核の使用がもたらす深刻
な帰結を含む、核の危険性に関する啓発の取組を支援し、促進する。
xiii. 全ての国は、指導者や若者等、核の使用の影響に対するより深く理解するた
め広島と長崎に指導者、若者、その他の人々が訪問することを奨励する。
3) 建設的な 2026 年 NPT 運用検討会議に向けた取組
国際の平和と安全を強化し、核の危険性を低減し、そして核兵器のない世界へ向け
た動きを促すために、核不拡散体制を維持し、強化しなければならない。各国は、建
設的な 2026 年 NPT 運用検討会議となるよう協力しなければならない。我々は、締約
国に対し、2026 年の最終文書に以下のコミットメントを盛り込み、合意された成果を達
成するために取り組むよう求める。
i. 国連総会決議 1 号及び、2010 年の行動計画を含む過去の NPT 運用検討会議
においてコンセンサスで採択された成果文書を想起し、核兵器のない世界の実
現にコミットする。
ii. 核爆発実験のモラトリアムを維持し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を実
現するために一層努力し、核兵器国に対して、核実験場における、一方的あるい
は相互的な透明性措置を自発的に実施することを奨励する。
iii. 核兵器用核分裂性物質の生産モラトリアムに合意し、核兵器用核分裂性物質生
産禁止条約(FMCT)の締結の緊急性を強調するためのハイレベル会合を開催す
る。
iv. 核戦力、核ドクトリン、核態勢に関する透明性を高めることにより、信頼醸成を図
るため、2030 年 NPT 運用検討サイクルにおいて、より詳細な国別報告書を提出
し、核戦力の削減に向けた段取りを明らかにすることにより、NPT の説明責任を
強化する。
v. 核軍縮に向けた具体的な手段・措置及び包括的かつ完全な軍縮を含む、NPT 上
の義務及びコミットメントを履行するための措置を示す、5 か年の将来を見据えた
国別行動計画を提出することに合意する。
vi. 国連総会決議 79/238(核戦争の影響と科学的研究)による研究の成果について
議論を行うことを含め、核戦争の影響に関する認識を高めるための取組を行い、
環境や人々の健康、戦争に関与していない国家に与える損害に注目する。
vii. 全ての国に軍縮・不拡散教育に対する投資を行うことを奨励する。
viii. 非核兵器地帯の地位を尊重し、関連する議定書の署名・批准を通じてこれら非
核地帯を強化する。
ix. 新興技術に関連する新たな課題に対応し、新たな機会を活用する力を向上させ
るため、核不拡散体制の欠落/抜けに対応すべく協力して取り組む。
結語
核の危険は驚くべき速さで加速しており、冷静な熟考だけでなく、大胆かつ協調的な
行動が求められている。被爆者の不朽のメッセージ、そして日本被団協への最近のノ
ーベル平和賞授賞は、核兵器のない世界を実現するための人道的義務と道徳的緊
急性を我々に想起させるものである。このような評価は、過去への賛辞であるだけで
なく、現在における緊急の要請でもある。2026 年の NPT 運用検討会議が近づくにつ
れて、国際社会は核危機の瀬戸際から脱却し、共有する原則を再確認し、核の危険
を減らし、安全保障を強化し、軍縮へのコミットメントを活性化するための具体的かつ
協力的な措置を講じるという重要な機会を有する。賢人会議の全委員の切なる願い
は、この提言が、核兵器のない世界への長く困難な道のりにおいて、新たなコミットメ
ントを促し、対話を育み、集団的な進歩を導くための建設的な貢献となることである。


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