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ヒゲ きっと似合うと思うの

2016年06月24日 17時54分00秒 | 創作欄
典子は半年後、若い男と別れていた。
「19歳は子どもぽくてね。話をしていても面白くないの」
典子は屈託なく微笑んだ。
「この笑顔に騙されるのだ」と輪太郎は身構えた。
「輪ちゃん、まだ、私を愛せるの。近ごろ自分が嫌な女に思えてきたのよ」
典子は気持ちが珍しく沈んで見えた。
「気分直しに映画でも見ようか?」と輪太郎は誘った。
「映画? いいわね。銀座で『貴族の巣』という洋画をやっているの」
典子は魅惑的な表情をした。
それは典子が鏡に向かって自分に笑いかける意識的な作り笑いであった。
「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーンの笑顔と髪型に典子は拘っていた。
典子はこの日も好みの緑のミニスカート姿であった。
映画を見てから典子は突然言う。
「輪太郎ちゃんヒゲを生やしてよ。きっと似合うと思うの」
「ヒゲ?!」輪太郎は父親がヒゲを生やそうとして母親に止められた小学校時代を思い出した。
なぜ、父親はあのころヒゲを生やそうとしたのだろうか?

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