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いわゆるヨーロッパ(4、6、8)

2017年01月28日 12時03分20秒 | 創作欄
競輪は4番青、6番緑、8番ピンク、いわゆるヨーロッパ(4、6、8)と語呂合わせでファンの間で言われている選手は格下の選手であり、スター選手や実力上位(格上)の選手は、4番、6番、8番のユニフォームで走ることはまずない。
スナック「富士」のママの富士子は、青、緑、ピンクの色合いの衣服を好んできている。
そこに独自の思い入れがあったのだ。
「私は、陰の女だからね」と言っていた。
利根輪太郎たち競輪ファンが富士に通い通い始めていた時期には、富士子に男の陰はなかったが、
ある時期ヤクザ者の女になっていた。
「やられたんだな。もう少しましな女と思っていたのにな。バカな奴だ」」と宮元武蔵は突き放すように言った。
男には妻子がいたのだ。
しかも、悪質なぼったくりバーを取手駅前の通称祇園横町で経営していた。
愚かにも、輪太郎は何かの薬入りのウイスキーを飲まされ、財布から約10万円を抜き取られていた。
「呆れたよ。この男、貯金通帳まで背広の内ポケットに入れているよ」とママの稲子が嘲る。
ホステスの性女たちの嘲る声で、輪太郎は我に返った。
ヤクザ風の男たちが4人ボックス席で輪太郎を威圧するように目を光らせていた。
その中に、富士子の男も居た。
その時期の輪太郎は競輪が絶好調で、競輪貯金を200万円ほど貯め込んでいたのだ。
「穴も当てるし、本命も当てる。輪ちゃんは競輪の天才じゃないか」と荻野勝雄が驚くほどだった。
輪太郎は周囲の取り巻きたちに、5000円、1万円を配っていた。
「輪ちゃんはホントに、気風のいい男だよ。惚れ直したよ」と富士子が身を寄せて抱きかんばかりである。
「ねいさん、アニキには内緒にしておきますよ」19歳になったばかりの弟分の五郎が近寄ってきたのだ。
富士子はハンドバックから1万円を取り出し、若い男の手に握らせた。
「五郎!あっちにいっていな」と若者を手で押し返すような仕草をした。
「ヤクザ女に手出して、家を取られた爺さんもいるからね。輪太郎ちゃん気をつけな」と石田譲二が警告する。
輪太郎は、富士子を信じていた。
どこかで、富士子を不憫に思う感情もあったのだ。
「浅草か、上野で輪太郎ちゃんに出会っているような気がするんだ」
「会っているかもしれないね」と輪太郎は慰めの気持ちで言った。

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