お鍋戦隊オデンジャー

2011年12月21日 | ショートショート


人けのない浄水場に、悪の組織『サマー』の基地は存在した。

赤いシトロエンを自ら運転し基地へと向かう、怪人『ソウメン男』。

後部座席には、ヒロインの辛子ちゃんが亀甲縛り、エッチな苦悶の声。

「辛子ちゃん、全身にイチゴシロップや練乳をぶっかけて、一生ピリッと生きていけなくしてやる~」

猿ぐつわの辛子ちゃんのくぐもった「イヤァ~」という声を聞き、ソウメン男はさらに興奮するのだった。

浄水場駐車場に車を停め、辛子ちゃんを肩に背負ったそのとき!

「ソウメン男!おまえの季節じゃないぞ!!」

突然、響く声に慌てふためくソウメン男。

「そ、その声は?現れたな、おでんじゃー!」

塀の上にカメラがズーム!そこには、ポーズを決めるダイコンの勇姿。

「ボクらをサポートしてくれる、辛子ちゃんを陵辱しようとは。許さ~ん」

いい具合に煮込まれたダイコンの輪切り頭から、怒り心頭、湯気が立っている。

すると、おでんじゃーのテーマソングがどこからともなく聞こえてきた。

 

♪でーんででんでんでん♪(オー)

♪でーんででんでんでん♪(オー)

♪だれが呼んだか、おでんじゃー♪

♪な~べの、底から、やってくる~♪

♪熱くたぎった俺たち~に~♪

♪気安く寄~るな~ヤケドをするぜ~♪

(ダイコン!)

(たまご!)

(ちくわ!)

(こんにゃく!)

(コンブ巻き!)

(しらたき!)

(はんぺん!)

(がんもどき!)

(つみれ!)

(かまぼこ!)

 

歌の途中、歌詞のメンバー紹介に合わせて、ソウメン男の周囲に次々と現れるおでんじゃーたち。

「おいっ、いったいおまえたち、何人いるんだ?」

ソウメン男の震える声など無視して、紹介は続く。

 

(さつまあげ!)

(えび巻き!)

(ごぼう巻き!)

(ソーセージ巻き!)

(巾着ぶくろ!)

(タコの足!)

(厚あげ!)

(牛すじ!)

(じゃがいも!)

(にんじん!)

(ちくわぶ!)

(ごぼう天!)

 

「おいっ、メンバー多すぎじゃないか?」

ソウメン男の弱々しい声。そんだけ大人数で寄ってたかってなぶり殺しにするのか?

 

(地ぶき!)

(ロールキャベツ!)

(焼きドウフ!)

(串ボール!)

(つぶ串!)

(豚なんこつ!)

(肉詰めいなり!)

(ギョウザ巻き!)

(シュウマイ揚げ!)

(ジューシーあらびきソーセージ!)

(炭火焼きつくね串、なんこつ入り!)

「お、おいっ!なんかコンビニのおでんネタみたいなのまで、登場させるな!」

ソウメン男、とうとう涙声。と、そのとき、

ド~ンドンドン!と、陣太鼓の音。

「季節がら、助太刀いたす。我ら赤穂浪士なり~」

さらに、ワ~ンワンワン!と、犬の鳴き声。

白黒のダルメシアンの犬どもが、目がチカチカするくらいたくさん、雪崩を打って現れた。

ソウメン男は思った。

今の状況に比べれば、ひとりの怪人を寄ってたかって倒していたゴレンジャーですら卑怯じゃないなぁ、と。

ああ今、真冬。春すら遠い。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
秘宝館 (haru)
2011-12-21 15:14:41
ぶっきゃは、きゃははは!
オモシロイ。おもしろすぎで~す。
ヴァッキーノさんなら、どんなコメントをするのでしょうか?
それを考えても吹きだしてしまいそう。
虎犇秘宝館は健在なりですね。ヘ(゜∀゜ヘ)アヒャ 
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意外性・独創性の高い作品でした! (musashi211)
2011-12-21 22:36:31
拝読させていただきました。
読んでる途中で何度も吹いてしまいました。
思わぬつぼにはまり、見事に大笑い、()内が面白かったです。
僕も小説を書いていますので、よろしければお越しください。
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haruさんへ (矢菱虎犇)
2011-12-22 00:18:20
おでんダネ、たちまち尽きてしまって、某セ●ブンイ●レブンのサイトに行って仕入れて書きました(笑)
おでんダネが33個でODN33!
大石内蔵介率いるOEC47!
そしてわんちゃん大行進でONE101!
合計で181人。
こんだけ合わせても、AKB48とその姉妹グループの合計にははるかにかないません。
秋元康さん、まいりましたぁ!
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musashi211さんへ (矢菱虎犇)
2011-12-22 00:23:07
musashi211さん、はじめまして。
楽しんでいただけて嬉しいです。
クダラナイでしょ?
こんなのばっかりなんですよ、秘宝館ですから。
小説なんてトンデモナイ。
小学生の頃、パロディ漫画を描いて学校の友だちに読んでもらって楽しんでいた趣味の延長みたいなスタンスなんですよ。
こんな感覚で文章を書いてブログにアップして楽しめるなんて、ホント、いい時代だなぁ~
またお立ち寄りくださいませませ。
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