美人妻の告白

2011年08月08日 | ショートショート



ボクにはひとつの疑念があった。
いちばん下の子がボクに似ていない気がする。
地元の銀行に就職、支店長の紹介で見合いをし、もったいないくらい美しい妻を娶った。
五人の子供に恵まれ、皆すくすく育った。
だが、末っ子だけ、なんだか様子がちがうのだ。
上の四人のように、勉強にもスポーツにも秀でたところが見当たらない。
まあひと言で言うと、愚鈍な感じなのだ。
何がちがうんだろう。
もしや・・・
イヤ、疑うまい。
知らなくてもいいってこと、あるじゃないか。
そんなある日、妻が倒れた。その日のうちに意識が回復し、容態が安定した。
病床の妻がボクを呼んだ。
「あなたにお話しておかなくてはならないことがあるの。子供たちのことなんだけど」
妻が差し出した白い手を、ボクは握りしめた。
「何をあらたまって。君は大丈夫、じきに元気になるんだから」
「ええ、でも話しておきたいの」
心臓がバクバクした。例のことでは?
「わたしに何があっても、子供たちのこと、お願いね」
「何を言ってるんだい。アタリマエじゃないか」
「実は・・・」
妻がボクの手を強く握り直した。
ゴクリ。ボクの喉が鳴った。

妻はひと言、
「実は、下の子はあなたの子じゃないの」
ああ、やっぱり・・・疑ってはいたものの、それが妻の口からそれを聞いてボクは完全に打ちのめされた。

・・・なんて展開だったらどうしよう。
妻が口を開いた。妻はひと言、
「実は、下の子だけあなたの子なの」
え~!そんなぁ。上の四人がボクの子じゃない?
そんなのってありかよ~トホホのホ。

・・・という展開もイヤだなぁ。ああ、どっちもイヤだ、神様、どっちも勘弁してください!
そのとき妻がひと言、
「五人とも父親がちがうの。あなたの子はいないの」
・・・ガッチョ~ン!



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
えええ~!! (りんさん)
2011-08-08 09:32:20
最後の告白は本当だったんですよね。
あらら…
そんなこと告白されて「子供たちをよろしく」って言われてもねえ…^^;
まあ優秀な子供たちみたいだから、将来安泰かもしれないけど。
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レベルー5 (tatsu)
2011-08-08 09:36:18
レベルー5

危機管理の想定範囲の最悪のケース!



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やっちゃったあ (ヴァッキーノ)
2011-08-08 11:03:50
複数の未来を想像する主人公とともに
一緒になってボクもハラハラしてしまいました。
そして、驚愕のラスト!
実際こんなこと言われたら、
>・・・ガッチョ~ン!
なんて言えるかなあ。
この後の展開もいろいろ想像してみたりしてみます(笑)
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男はツライよ (haru)
2011-08-08 19:02:47
昔の人は良いことを言いました。
「下手の考え休むに似たり」
それにしても、我が子は一人もいなかったとは。。。
お釈迦様でも知りますまいに。
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りんさんへ (矢菱虎犇)
2011-08-09 00:46:06
あ、突いてる突いてる。
最後、さらにひねっていこうかと書きかけたんですけど、きりがないのでやめました。
いやぁ鋭いっ
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tatsuさんへ (矢菱虎犇)
2011-08-09 00:50:11
想定外って言い訳されてもね~
何事にも万全の備えが必要なようであります。
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ヴァッキーノさんへ (矢菱虎犇)
2011-08-09 00:53:11
前に本当に自分の子供かどうかわかったもんじゃないみたいな話題があったじゃないですか。それでついこんなお話をでっちあげました。
ガチョ~ンにするか、
オーマイガッにするか、
悩んだけど、わが身に起きたときに言いそうなほうにしました。
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haruさんへ (矢菱虎犇)
2011-08-09 00:58:38
こんな真実なら知らないままのほうが幸せかもしれませんねぇ。知ってどうするってわけにもいかないわけだし。まあ、いっか~ケセラセラ~
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