品質や環境マネジメントシステムで非常に重要な要素であるにかかわらず、現在、ほとんど活かされていない項目がある。それは「予防処置」である。審査員として組織にお邪魔して、「予防処置は、この1年で何件ありましたか?」と質問すると、大抵の組織では、小さな声で「ゼロ件です」と答えられる。1年くらいの短期間なら、まあ、そのようなこともあろうかと思う。しかし、3年毎の更新審査に臨んで「この3年間に予防処置は何件ありましたか?」と質問すると、やはり「ゼロ件です」と返ってくることが多い。
「それでは、規格の要求する予防処置の機能は全く働いていないのではありませんか?一要素の完全な欠落や機能不全は重大な不適合ですよ?」と言いたくなる。が、このことの真の原因はもっと本質的なところにありそうだ。このように多くの企業で予防処置を発動することへの意識や関心が大いに希薄化しているが、品質(環境)管理部門やその他一部門の問題ではなく、組織全体、特に経営者にその責任の一端があるようにも思われる。
予防処置とは、問題が顕在化する前に不適合の発生原因を除去する処置である。これには、先ず日常の現場の情報やデーターの監視が前提となる。そして情報やデーターから意識的にその傾向や問題を抽出・把握することが必要だ。現場の情報としては第一線で作業している担当者の直勘や改善提案なども重要である。しかし、何にも増して重要なのは、すべての情報が集まるマネジメントレビューの場である。ここで経営者が無関心・無意識でいると、何も気付かれず、何も始まることがなく、すべてが終わってしまう。
予防処置のニーズを発見する機会としては、内部監査で顕在化した不適合の水平展開、日常的に発生する不適合の総合評価、変化する周囲の状況や法改正の動向、近隣や取引先からの要請や苦情、社員からの改善提案や管理責任者の気付きなど色々ある。マネジメントレビューの場では、これらを改善の機会の評価と呼んでいる。マネジメントレビューへのインプット情報として、これらの事項が「特記なし」「異常なし」「問題点なし」だけで済まされていることもよくあるが、経営者自身が「面倒くさい」と思っているなら、この状況でも仕方がない。しかし、折角の膨大なシステム運用コストと時間を、そのままゴミ箱に捨てているようで誠にもったいない。もちろん何から何まで予防処置を講じろと言っているわけではなく、費用対効果が大前提である。しかし、経営者・管理者の熱意や意欲がなければ、目の前で折角の機会に遭遇していても、何も見えないまま機会が失われていく。
いずれにせよ、予防的な処置の場合、重大な失敗を人知れず現場で予防している担当者には報われることが少ない。この世は、現に目に見えていて大きな損失が明らかな問題を派手に解決してこそ評価される世界だ。特に、経営者に予防処置の重要性の認識や価値観がないと、誰もこのような地味なことをやりたがらない。逆に担当者が熱意と善意でやったことについて、時間や金のムダ使いとしか見られないようでは折角の努力も浮かぶ瀬がない。また、組織と言う階層構造の中では、費用の発生する予防処置を決断できる人間は高い地位にある経営者や管理者しか存在しないのだ。
ISO9001規格でも、マネジメントレビューでは、予防処置は是正処置よりも先に議論されるべき位置づけで規定されている。トップが組織を有効で効率的な組織に改善していこうと欲するならば、もっともっと予防処置への取り組みを真剣に考え、促進していってもらいたい。マネジメントレビューが終われば、アウトプットとして予防処置につながる命令がトップからいくつも出てきている。そんなマネジメントレビューになって欲しい。
ついでながら、ISO9001には「製品の監視測定」と「プロセスの監視測定」の二つの要求事項がある。ここでも、「製品の監視測定」は直接目に見ることができ、且つ即座に品質やコストに影響するので非常によく実行されている。しかしながら、その価値を間接的にしか評価できない「プロセスの監視測定」については、これを満足水準で行っている組織は大変少ない。プロセスの監視測定、中でも、製品不良の原因を事前に検知するための「製造プロセスの監視測定」をしっかりやっておれば、製品不良を未然に防止することができる。この行き着くところが、いわゆる特殊工程であり、長期に無検査であっても、製品の品質を保証できる仕組みとなるのだ。このように目に見えにくい地道な活動を奨励し、組織のコアコンピタンスとして蓄積していくと言うような考え方を持っておれば、本来、予防処置というものはもっともっと出て来てよいものだ。


「それでは、規格の要求する予防処置の機能は全く働いていないのではありませんか?一要素の完全な欠落や機能不全は重大な不適合ですよ?」と言いたくなる。が、このことの真の原因はもっと本質的なところにありそうだ。このように多くの企業で予防処置を発動することへの意識や関心が大いに希薄化しているが、品質(環境)管理部門やその他一部門の問題ではなく、組織全体、特に経営者にその責任の一端があるようにも思われる。
予防処置とは、問題が顕在化する前に不適合の発生原因を除去する処置である。これには、先ず日常の現場の情報やデーターの監視が前提となる。そして情報やデーターから意識的にその傾向や問題を抽出・把握することが必要だ。現場の情報としては第一線で作業している担当者の直勘や改善提案なども重要である。しかし、何にも増して重要なのは、すべての情報が集まるマネジメントレビューの場である。ここで経営者が無関心・無意識でいると、何も気付かれず、何も始まることがなく、すべてが終わってしまう。
予防処置のニーズを発見する機会としては、内部監査で顕在化した不適合の水平展開、日常的に発生する不適合の総合評価、変化する周囲の状況や法改正の動向、近隣や取引先からの要請や苦情、社員からの改善提案や管理責任者の気付きなど色々ある。マネジメントレビューの場では、これらを改善の機会の評価と呼んでいる。マネジメントレビューへのインプット情報として、これらの事項が「特記なし」「異常なし」「問題点なし」だけで済まされていることもよくあるが、経営者自身が「面倒くさい」と思っているなら、この状況でも仕方がない。しかし、折角の膨大なシステム運用コストと時間を、そのままゴミ箱に捨てているようで誠にもったいない。もちろん何から何まで予防処置を講じろと言っているわけではなく、費用対効果が大前提である。しかし、経営者・管理者の熱意や意欲がなければ、目の前で折角の機会に遭遇していても、何も見えないまま機会が失われていく。
いずれにせよ、予防的な処置の場合、重大な失敗を人知れず現場で予防している担当者には報われることが少ない。この世は、現に目に見えていて大きな損失が明らかな問題を派手に解決してこそ評価される世界だ。特に、経営者に予防処置の重要性の認識や価値観がないと、誰もこのような地味なことをやりたがらない。逆に担当者が熱意と善意でやったことについて、時間や金のムダ使いとしか見られないようでは折角の努力も浮かぶ瀬がない。また、組織と言う階層構造の中では、費用の発生する予防処置を決断できる人間は高い地位にある経営者や管理者しか存在しないのだ。
ISO9001規格でも、マネジメントレビューでは、予防処置は是正処置よりも先に議論されるべき位置づけで規定されている。トップが組織を有効で効率的な組織に改善していこうと欲するならば、もっともっと予防処置への取り組みを真剣に考え、促進していってもらいたい。マネジメントレビューが終われば、アウトプットとして予防処置につながる命令がトップからいくつも出てきている。そんなマネジメントレビューになって欲しい。
ついでながら、ISO9001には「製品の監視測定」と「プロセスの監視測定」の二つの要求事項がある。ここでも、「製品の監視測定」は直接目に見ることができ、且つ即座に品質やコストに影響するので非常によく実行されている。しかしながら、その価値を間接的にしか評価できない「プロセスの監視測定」については、これを満足水準で行っている組織は大変少ない。プロセスの監視測定、中でも、製品不良の原因を事前に検知するための「製造プロセスの監視測定」をしっかりやっておれば、製品不良を未然に防止することができる。この行き着くところが、いわゆる特殊工程であり、長期に無検査であっても、製品の品質を保証できる仕組みとなるのだ。このように目に見えにくい地道な活動を奨励し、組織のコアコンピタンスとして蓄積していくと言うような考え方を持っておれば、本来、予防処置というものはもっともっと出て来てよいものだ。


