震災時のテレビでは映されなかった光景を見た人は中々立ち直れないだろう
人口減加速、対策急ぐ…戸別訪問で孤立防ぐ 一般社団法人「震災こころのケア・ネットワークみやぎ」
宮城・女川
3県では、いまだに約8万人が仮設住宅で暮らす。看護師や保健師らが戸別訪問し、心身のケアを続けている。
「元気? また集会所にございん(いらっしゃい)」
宮城県女川町の仮設住宅団地で、保健師の菅野テル子さん(71)が入居者を見つけては声をかける。一時はほぼ埋まっていた150戸の団地も、昨春以降、3分の1が復興住宅に移った。残った住民の大半は高齢者。独居のほか、認知症やアルコール依存症の人もいて、菅野さんら3人が手分けして見回る。
3年半が過ぎても心を開かない年配の女性がいた。お茶のみ友達もなく、行事にも参加しない。根気よく訪問するうちに少しずつ会話するようになった。「私、津波で流されていく人を2人見たんだ」。ある時ぽつりと打ち明けられ、心の傷の深さを初めて知った。
心配されるのは、仮設住民の気力低下だ。宮城県が入居者に行った調査(2012~14年度)では、不眠に悩む人や相談相手のない人の割合は増加傾向にあり、50~60歳代男性の約2割が多量の飲酒をしていた。
精神科医らで作る一般社団法人「震災こころのケア・ネットワークみやぎ」は毎月、石巻市で単身の中高年を集めたサロンを開く。参加する男性(76)は震災後に妻を亡くし、酒量が増えた。胃を壊して入院後、訪れるようになった。「みんなと過ごすとストレス発散になる」と笑う。
代表理事で精神科医の原敬造さんは「サロンは居場所。ここに来る意欲が節酒や断酒につながる」と話している。
(2015年3月18日 読売新聞)