建物の省エネをフル活用 保育施設(スウェーデン)パッシブハウス

2013-02-06 10:52:36 | 自然エネルギー

パッシブハウス

建物の省エネ・ポテンシャルをフル活用-新設される保育施設(スウェーデン)

近年、スウェーデンの小学校や就学前学校(注1)では、1970年代ごろに建てられた建物の新設や改修工事が進んでいる。これらの公共施設は、既存の建物に比べてエネルギーの浪費が少なく、再生可能エネルギーを利用した次世代型の建築物として注目されつつある。
 

Skogslunden就学前学校、赤とグレーの外壁のコントラストが象徴的
 
ストックホルム郊外に位置するSkogslunden(スコーグスルンデン)は、スウェーデンで初めて、パッシブハウスの国際基準の認定を受けた就学前学校である。南側の大きな窓からは十分な採光が入り、室内にある窓は透明性があり部屋全体も明るい。さらに防音設備がしっかりしているため、音もかなり軽減される。開園して2年経った今、教師も子ども達も、室内の環境の良さに心から満足している様子だ。
 
パッシブハウスの省エネ基準を満たす、この建物の年間冷暖房負荷は14kWh/m2となっている。2階建てに設計された建物の床、壁、天井には、分厚い断熱材が埋め込まれており、エネルギー効率を良くするために、気密性も高い。外気と室内の空気の入れ替えは、熱交換機換気システムを利用、空気の入れ替えによって発生する熱ロスを軽減できる。外気が出入りしやすいドアや窓には、高性能なサッシュが使われていることも特徴だ。
 

建物の西側には大きなバルコニーがあり、庇が大きく出ているのが特徴
 
屋根は緑化されており、屋根の一部には太陽熱集熱パネルが設置されている。さらに、地中熱ヒートポンプからも熱が供給され、給湯や暖房に利用される。夏の間の遮光については、しっかり防げるように外付けのブラインドも設置されている。
 
このような建物は、従来の建物より10~15%ほどコストがかかるという。但し、ランニングコストは、逆に60%も低い。また、投資回収期間は約20年と推定される。
 
この背景には、EUが気候変動・エネルギー問題に対する取り組みとして、2020年までに一次エネルギー消費量を20%削減するという目標を掲げていることにある。そのためEUは、熱電供給(コージェネレーション)や、建築物の性能アップなどによる省エネルギー政策を推進している。
 
そのような中、スウェーデン議会は、住宅や商業ビルにおけるエネルギーの使用量を2020年まで20%削減することを決定した。さらに2050年までは50%まで削減することを決めている。
 

南側に面したガラス窓、アトリエのあるこの部屋はいつも明るい。
 
スウェーデンでは1970年代以降、欧州に先駆けてバイオマス資源を利用した地域熱供給や、1991年から導入された炭素税などにより、すでに省エネは進んでいるのが現状だ。
 
しかし、建築業界が環境に及ぼす影響は想像以上に大きく、エネルギー消費が大きい、この分野での省エネ対策のポテンシャルは大きい。エネルギー負荷を減らすことによって、気候変動を防止にも貢献できる。
 
今後、日本でも、省エネルギー保育園・幼稚園のニーズは徐々に増えていくに違いない。子ども達の生活の場だからこそ、健康で安全そして快適な環境を作ることが望ましい。
 
 
 
注1:スウェーデンには、日本のような保育園と幼稚園という区別はない。就学前学校とは、小学校が始まる前の1歳から5歳までの子供たちが過ごす保育施設で、1996年以降、幼保一元化され、教育省の管轄になっている。共働きが当たり前のスウェーデンでは、約8割以上の子どもが就学前学校に通っている



1 コメント

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ご連絡 (丸谷博男)
2014-02-17 07:06:47
日本でエコハウス研究会を主宰しています丸谷と申します。
今年の11月にスウェーデンを訪問し、エネルギーの取組、パッシブハウス使用の住宅や施設を見学したいと思っています。
まずは、ご連絡できればとコメントしました。
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