除染違法派遣は常態化 線量は適当でピンハネ横行

2015-11-02 18:12:33 | 原発

除染違法派遣は常態化 線量は適当でピンハネ横行

東京電力福島第1原発事故をめぐる福島県楢葉町での除染事業に、青森県下北地方の業者らが労働者を違法に派遣した事件は、業者が複雑に連なる多重下請け構造の中で日当の中抜き(ピンハネ)が横行し、不当な低賃金を強いられる労働者の存在を明らかにした。除染現場で何が起こっているのか-。福島県での取材で、深刻な労働者不足が違法派遣や劣悪な労働環境を生み出している実態が浮かび上がった。


 「(違法派遣は)そんなの、しょっちゅうじゃないですか」
 10月下旬、福島市内で取材に応じたタケシさん(30)=仮名=は、青森県の事件に驚くことはなかった。下請け業者の除染作業員として約2年間、福島県内の現場を転々としているという。
 西日本出身。東日本大震災の被災地支援に関心を持ち、「ボランティアでも良かったけど、生活できないので除染を選んだ」。


 除染事業は膨大な作業員を要するが、現在も人手不足は深刻だ。環境省によると「除染特別地域」として国が除染を直轄する同県の楢葉町など11市町村では現在、約1万9600人が従事。さらに「重点調査地域」に指定された同県内外の104市町村(当初)の一部でも、市町村発注の除染事業が続いている。
 一方で、復興需要も相まって同県の有効求人倍率は高く、2013~14年は1.21~1.53倍、今年も1.42~1.54倍と推移している。このため、行政機関など同県の複数の関係者は、危険が伴う除染作業員を同県内だけで十分に集めることは難しいとみる。


 こうした状況下、元請け業者は下請け、下請けは孫請けに人集めを頼み、多重下請け構造が生じる。青森県の3次下請けやさらに下層の業者が摘発された事件では、上位業者が下位業者から集めた労働者の日当をピンハネし、下位業者もさらに下層の労働者から日当を搾取していたため、末端の労働者は低賃金で働かざるを得なかった。
 3次業者は労働者1人当たりの日当分を1万7千円で請け負っていたが、5次業者の労働者に渡ったのは7千円にすぎなかった。


 人集めだけを手掛けるブローカーも暗躍する。タケシさん自身も、ブローカーから「作業員を5、6人でいいから集めてくれ」と持ちかけられたが、断った。ブローカーは業者に送り込んだ労働者から日当をピンハネし、収益を上げているという。


 多重下請けが常態化する除染作業の現場では、責任の所在があいまいになりがちだ。
 現場ごとに口約束で決まる日当額、もらえない雇用契約書、素人まがいの職人が組む危ない足場、計測せず「適当に」書き込む作業着の放射線量-。上位業者の作業員は指示ばかりで、「困ったことや肉体労働は全て(下層の)業者に丸投げでした」とタケシさん。
 一方、危険を伴うため高額な除染作業の日当を目当てに、暴力団が人集めに介入する実態もある。タケシさんは「作業服姿で『現役だよ』と話す人もいた」と打ち明ける。


 タケシさんは昨年、給料の未払いに遭った。勤務先の人材派遣会社が負担するはずのアパートの家賃や光熱費も滞納の連続。水道が止まり、「生活できなくなるのでガスも電気も支払いを自分名義に変えた」。除染に使う脚立や重機の燃料費も立て替えたが、支払われることはない。


 生活のため、親や知人から借金もした。未払いは半年ほど続き、結局、この会社を辞めた。
 別の会社に移り、今も除染作業員として福島県内で働く。今の会社は労働環境が良く、賃金など待遇も良い。これまで従事した4業者ではもらえなかった雇用契約書も初めて手にし、「今の生活は気に入っています」とタケシさん。とはいえ前の会社での給料未払いは、まだ解決していない。
 
<除染違法派遣事件>
 福島県楢葉町での除染事業で労働者を違法に派遣したとして、青森県警は10月、職業安定法違反や労働者派遣法違反容疑で下北地方を中心とした8業者の幹部らを逮捕。職業安定法は、自社と雇用関係にない派遣労働者を別会社に派遣し、その派遣先の指揮命令下で働かせる二重派遣を禁止。労働者派遣法は除染作業の中の建設業務への労働者派遣を禁じている。このうち4業者は二重派遣した労働者の日当の一部を中抜きしたとして、労働基準法違反容疑でも書類送検された。
 ◇
避難者帰還に支障も
 労働問題に詳しい福島大学の長谷川珠子准教授(38)=労働法=は10月下旬の東奥日報の取材に対し、除染作業での劣悪な労働環境は人手不足に拍車を掛け、作業の一層の遅れや手抜きを招きかねないとし、「避難者の故郷への帰還に支障が生じる恐れがある」として、監督行政の強化を求めている。


 同県内では除染計画の遅れが目立つ。長谷川准教授は、下北地方の業者が摘発された事件など違法派遣などが横行している実態について、「除染作業は国や自治体が指揮を執るべきにもかかわらず、人手不足などの対応が現場任せになっている」と批判。
 特に、国に対しては「原発を推進してきた最低限の責任として、除染の進み具合を絶えず確認・修正し、違法な状態が生じていないかを監視することも求められている」とした。

 


昨年傾き発覚の横浜西区 住友不動産のマンション、建て替え方針も合意進まず

2015-11-02 10:44:48 | 神奈川県

昨年傾き発覚の横浜西区 住友不動産のマンション、建て替え方針も合意進まず

「パークスクエア三ツ沢公園」(住友不動産、熊谷組)

 横浜駅を見下ろす高台に立つ横浜市西区のマンション。抜群の利便性と眺望の良さが売りだったこのマンションでも昨年、施工ミスによる傾きが発覚した。それから1年4カ月。傾いた棟の住民の転居は完了したが、建て替えはいまだに決まっていない。補償問題の解決も見通せず、長期化の様相を呈している。


 「なぜ、われわれのマンションは全棟建て替えではないのか」。西区のマンションに住む50代男性は不満をぶちまける。
 このマンションは住友不動産が平成15年に販売。その後、住民が手すりのずれを発見したが、施工会社は「地震による影響」と説明していた。ずれはさらに広がり、管理組合が25年に同社に調査を申し入れ、同社が第三者による調査を行った結果、全5棟のマンションのうち、くいが強固な地盤に達していない施工ミスで1棟が傾き、その他の3棟でも未達のくいがあることが判明した。

 事業主の住友不動産(東京)は傾いた棟のみの建て替え方針を提示したが、「(他の3棟は)基本的に補修で対応する」といい、住民間に不公平感が広がっている。
 傾いた棟については、住友不動産が移転費用を全額負担し、すでに全世帯に当たる約60戸の転居が完了。建て替えを待つばかりだが、進捗(しんちょく)していない。
 区分所有法では、建て替えには全棟の区分所有者と議決権の5分の4以上の同意が必要。傾いている1棟の住民は建て替えに前向きだが、他棟の住民からは「1棟建て替えを先行すれば、他棟の対応は後回しにされてしまう」と異論が噴出しているという。


 横浜市都筑区のマンション傾斜問題では、事業主が全棟建て替えを提案。「1棟建て替え」を中心にした住友不動産の提案に「見劣りする」との見方も広がっているが、別の50代男性会社員は「補修で安全性が確保できるならそれでも良い」と話すなど、意見集約に向けたハードルは高い。
 平成17年に発覚した耐震偽装事件では、約10件のマンションが建て替え対象となったが、全ての建て替えに6年ほどを要しており、横浜市のマンションの建て替えに向けた住民合意の形成でも難航が予想される。