外回りの夜の取締官たちは主にヤモリですが
屋内を警備担当してくれるのは夜間だけですが、蜘蛛さんたちです。
大きいお母さん蜘蛛は夜が更けると
ちょっと小さめの旦那と、子どもたちを集めで毎晩語ります。
「いいこと、今夜もはりきるのよ!このうちの警備はうちの一家が何と言っても取り仕切っているんだから。」
旦那は小さくうなずきます。
子供たちの中に入るお母さんの話している間も落ち着かない様子でウロウロしてしまう子もいて
お母さんはそれを目ざとく見つけると
「コラ!七男坊のクモミール❢聞いてるのかい?」
バレた!とビックリして止まった七男坊。
お母さんの訓示は絶対です。
お母さんはお腹に美しい文様の黒いレースをまとっています。
「あたしゃたくさん子供を産んだってね、お洒落を忘れたことはないのさ。」
たくさんある脚の一組を足組しながら檀那に言いました。
「あんたからも子どもたちに言っとくれ。夜の取締りがどれほど大切な事かってね。」
長女がお母さんの横で窮屈そうにしてました。
お母さんはそれを見て
「あんた、そろそろその服は窮屈だよ。脱皮でもして寸法の合ったのに着替えな。」
お母さんの真似をして脚を組みたい長女は、ひっくり返りそうになりながらうなずきます。
「さあて、始めるよ」
各部屋に散らばりパトロールして
夜中に不埒な虫たちが侵入しないか目を光らせてくれるのです。
しかし夕べは勝手が違いました。
昼間忍び込んだ忍者みたいな蚊たちが潜んでいたのです。
この家のあるじは
頬からおでこから耳たぶ、指先まで刺され
寝不足になっていました。
明け方主はお母さんに言いました
「蚊で悩まされて眠れなかったのよ。何とか取り締まれないのかしら?」
お母さんは申し訳そうに言いました。
「蚊はうちらではとても取り締まれないんです。飛んで逃げるわ隠れるわでね、他のは大抵やっつけますよ。最近は蚊取りヤンマの旦那は他が忙しくてこちらに手が回らないらしいですしね」
ああ
蚊の取締官雇えないのかしらねえ。
お母さん蜘蛛は真顔でささやきました。
「何でも外国の輩ですが、カメレオンという男が蚊でも何でも飛んでくる輩を取り締まるのがうまいとか。雇いましょうか?」
主は彼女に言いました。
「なあに、あんたらの世界も人手不足なの?外国人に頼らなきゃならないの?」
蜘蛛のお母さんはキッとなって言いました。
「それを言うなら蜘蛛手不足ですわっ❢」
8本もあるのに蜘蛛手不足だなんて〜。