みずきは家に入ると

これだけとるのが精一杯でした。
真っ暗な部屋に電気を点ける
あずさからの電話に出ると
あずさは「さみしいわあ」とこぼした
いつものことで
あずさのさみしい、は
家族が側にいるのに何となくさみしい、というのである。
「みずえはいいわよね。」
彼女は出張続きでクタクタになり帰るのだが。何がいいのだろう。
「あなたが知らないだけよ。あの人はね、毎日ラインでただいま〜❢って報告できる人がいるのよ。(笑)夜に長く本音で話ができるんだもの。その辺の結婚してる人に比べたらよほど孤独じゃないのよ。一人ぶってるけどね。」
そんな情報入れてくるあずさは、みずえのことが羨ましいのだろう。
本心私はどうでも良かった。
私は仕事の繋がりしか持たないし
仕事が切れれば何もかも無になる関係しかないのだから。
みずきはたわいない愚痴やみずえへの羨望の会話を早く終わりたかった。
そんなことはどうでもいいことだ。
そんなあずさの電話を切ると
珍しくみずえから電話があった。
「元気にしてる?あなたのこと心配してるのよ。お互い孤独を楽しむ者同士、何でも話せるからいいわね」
みずきは
「そうね。いいわね。」と、応えた。
みずえは仕事の色んなことを熱く語った。
相変わらず熱い会話。
典型的な仕事人間。
けれどもふと
さっきの電話で聞いた彼女の別の顔をみずきは想いながら聞いていた。
幸せなんだろうな。だからこんなに仕事に打ち込めるのだろうな。
みずきは知らない間に笑顔になってる自分に気づいた。
この物語は
今日
お花のおばちゃんのところの立ち尽くすほどのお花畑の中で
凛と伸びたアイリスと
その横にいたなでしこと
その後ろで背伸びしていた大きなルピナスの花を見ていたら
ふと浮かびました。
お花が3人の個性の強い女の人に見えてきました。
私は花鋏を持ったまんま
花を摘むのも忘れて立ち尽くしていました。
後ろからこのみちゃんが
「じゅんちゃん、どーしたの?花鋏持ったまんまさっきから立ち尽くして。早くお花摘みなさいよ。」
私は我に返って
「ちょっと想像してたの」
と照れ笑いしました。
花にハサミを入れるのちょっと躊躇したのでした。
「早く摘みなさいよ!行くよ。」
慌てて摘みました。

これだけとるのが精一杯でした。