on the rise

日本初のプロバスケリーグ
「bjリーグ」と日本のバスケを
それとなく応援するブログ。

ジェリコインタビューその3

2006-10-24 12:52:06 | Weblog
s-moveより転載。
・・・しかし、退任した外国人監督が、ここまでチームを思ってくれる、
なんてことは、めったにないと思います。

世界選手権で日本に足りなかったもの
-この世界選手権と、それまでの4年間で成し遂げたことを、
日本はどう生かしていくべきでしょうか。

 今の周りの雰囲気や環境を見れば、
日本のバスケットボール界が損をするような状況が生み出されています。
その責任は協会の上に立っている数人の責任です。
本来は、日本代表チームがやったことに対して誇りとプライドを持つべきです。
先ほども言いましたが、このチームは歴史に入ったチームです。
日本のチームが次にこれだけいい内容と成績を取ったら連絡してほしいです。
その時がすごく楽しみです。
ですが、今のバスケット界では、ドイツと10点差のゲームは当たり前なこと、
パナマに20点差で勝つことも当たり前なこと、
そしてニュージーランドに負けたのは許されないことという空気が流れています。
しかも後半ばかり細かく分析されています。
先ほども言いましたが、前半で18点のリードを得たのは誰でしょうか。
文句を言われている人達か、それとも違う人達が取ったのでしょうか。
世界の中では、日本はバスケットボール的に全く相手にされていない国です。
ニュージーランド戦の記者会見で、ニュージーランドのボールドウィンHコーチは
「日本が素晴らしいパフォーマンスをして驚いた。
私達は経験といい運のおかげで最後救われた」といった発言をしていました。
世界は今初めて日本を認めるようになりました。
でも、国内ではそれをいい刺激としてバスケットボールを盛り上げさらに発展させる
-それをやるべき理由は過去の代表はこんなことを成し遂げたことがないからです-
代わりに逆に、全て否定して、どんどんまた日本のバスケットボールを沈ませています。今の協会の態度を見れば、世界選手権の成績は不十分というわけです。
ということはカタールでの次の大会(アジア大会)は、決勝にあがらない限り
だめということでしょう。
シリアやヨルダン、イラン、レバノンなどは全て相手ではないというわけです。
ニュージーランドに勝たないといけないということは、
それらのチームが相手ではないと言うのと同じです。
それが、私が1番残念に思っていることです。
今の代表チームこそ、この世界選手権に出たチームの中でも1番伸びたチームです。
1番成長したけれど、でもリミットもあります。
全試合20点差で負けてもおかしくなかった。
それこそが日本の実力、現状です。日本には誰がいますか。
世界の舞台で価値のある選手は誰ですか。
アメリカ代表にさえ起きることが、桜井や竹内兄弟、古田に起きたら
いけないことでしょうか。
日本にはヤオ・ミンやジノビリがいますか。
ガソルもいるわけではありません。
だからもっとリアルに考えて現状をよく理解することが必要です。
現状を見ずに高い所ばかり見て、高い目標だけでやっていたら
もうどんどん落ちていく一方です。

-くしくも、カタールでのアジア大会での目標は“優勝”と言われています。
先ほど、バスケットが詳しくない人には何も言えないとおっしゃいましたが、
では、バスケットのことをわかっているはずの関係者に
なかなか現状を見ることができない人がいるのは、なぜだと思いますか?

なかなかいい質問ですね。
今の段階になって1つ言わないといけないことは、
昨年のマカオでの東アジア競技大会でのことです。
その大会に向けて、すごく積極的な準備をする代表がいます。
例えば台湾(優勝チーム)です。
彼らは何ヶ月も合宿をやって臨みました。
それに対して、私は1度も「私は魔法使いだ」と言ったことはなく、
3日間の合宿で成績を取れと言われても不可能です。
その状況で、強化部長は、大会中に監督を変えるべきだ、
他の選手を入れるべきだなどと選手が聞こえる前で言っていました。
それは大会期間中はやったらいけないことだと私は思っています。
大会前に言うことや大会後に決めることはどのチームでも自由なことです。
今も新しいコーチになって、私の仕事は世界選手権で終わったわけで
何も問題はありません。
何も怒ったり悔しがったりしていないわけです。
でも試合中、大会中にああいう発言をしたら、他の国だったら即首になります。
そういう悪い雰囲気を彼が作らなければ優勝できました。
もう1つ、世界選手権やその後の話をすれば、
この4年間でこのチームが果たしたこと、
先ほど話した2つのキリンカップ優勝などの結果が全て当たり前になっているからこそ、今、次の監督が要求されていることはもう最悪な状況です。
アジア大会では1位、2位、まぁ3位以内には入らないといけないわけです、
この世界選手権が納得できる結果ではないのなら。
ここを目指す、と言うのは簡単ですよ。でもやるのは大変です。

-バックアップする協会が日本の現状をわからないといけないということが
日本の課題ということでしょうか。

私は3年間毎回、どう思っているかを言い続けました。
何をやるべきかを言い続けたつもりです。
世界選手権でもそのことが通用すると証明できました。
皆さんがどれぐらい気付いているかわかりませんが、
1人の無名な桜井が、柏木が、
学生でサイズのあるプレーヤーとシーズン中に試合をやるチャンスがない竹内達が、
あのレベルの相手とあのレベルでの試合ができたことは
どれだけの意味があるでしょうか。
これ以上の大会は存在していないんです。
まず何を直すべきかと課題を言い始めると、
私は3月の強化委員会の会議に呼ばれませんでした。
私だろうが誰だろうが、監督の立場として呼ばれるのは当たり前だと思います。
そして、監督の私に一言もなく候補者リストが発表されました。
それは世界のどの国でもあり得ない話です。
なぜなら、大会の責任が誰にあるかといえば私でしょう。
責任は監督にあるからこそ、監督がメンバーを選ぶのです。
強化委員会が候補者を付け加える権利はあります。
でも私が選んだメンバーをなぜ外したのか。それは私にはいまだに理解できません。
それに、4月19日の記者会見で3人目のアシスタントコーチが入ることが
発表されましたが、その連絡がきたのは前日の夜でした。
もちろん彼は素晴らしい人で仕事をよくやってくれて何も問題ではないのですが、
でもプロの組織がそういうことをやりますか?
別のスタッフは強化部長にことあるごとに首にすると言われ続けていましたが、
それで彼が仕事をしやすい環境でしょうか。
ニュージーランド戦の時も、同じ強化部長が後ろに座っていて、
私はその発言は聞こえなかったけれど、
あとで聞いた話によると試合の切羽詰っている時に
“ここに他のセンターがいれば違う”と言っていたそうですが、
試合中にそんなことを言うべきでしょうか。
その中での選手達のモチベーションはどうなるのか。
そういう課題があると、当然日本のバスケットボールは前に進まないわけです。
私はそういうのをもう気にもしていませんでした。
でも、それは1人の強化部長がやるべき仕事とは違うものだと言えます。
監督をバックアップするのが強化部長の仕事です。
それか、首にするのか。思う通りに私を首にすることができなかったから、
ずっと足を引っ張り続けるのは私に言わせればあり得ないことです。
ニュージーランド戦の3点の理由はそこにないとは誰も言い切れません。

-そのようなことがあって、コーチはどう感じましたか?
強化委員会に呼ばれず候補者リストが発表されるような状況なら、
もう辞めて帰ろうと思ったのですが、
それは私を信じている選手達を裏切る行為になると思って、残りました。
私は3年間皆がやってきたことを、今年に入って裏切ることはできなかったのです。
私はまた、協会の何人かの関係者にはとても感謝しています。
いいアドバイスをもらいました。

-確かに世界選手権を通して、
選手が本当にコーチを信頼しているのが伝わってきました。

 それが1番、私が嬉しいことで、
逆に言うと選手がコーチを信頼していない限り仕事もできません。
1つわかってもらいたいのは、私は外国人でもそういう若い人達と
信頼関係を作ることができました。
また、古田選手や折茂選手のように、経験があり過去に色々見てきた選手が
あれだけいいことを言ってくれるとそれはとても重みがあります。
例えば節政選手はそんなにプレータイムがあったわけではありません。
でも色々な面でこのチームを支え、手伝ってきました。
そういう選手達がやってきたこと全てがこの世界選手権で出せたクオリティに
つながったのです。
そういう気持ちを考慮せず、クオリティだけで見れば、
日本には世界選手権で出せたまでのクオリティはありません。
世界のレベルでは当然ない。アジアの中でも頂点に立つクオリティはないのです。
また、カタールには毎年新しい選手が来ますが、
それは出来上がった帰化した選手です。
私達はそういうことをせずに全ての選手を練習させて作り、
ここまで来られたこと、それこそが日本の成功ではないでしょうか。
石川さんも、「このチームの選手達の力を最大限に引き出した」と評価してくれました。皆さんに理解してほしいのは、クラブも作るものですが、
代表はさらに作らないといけないものなのです。
必要なポジションの選手を作らなければなりませんが、
そのプロセスは長い時間がかかるものです。
そういう意味ではフィジカル的に外国より弱く、身長もないしガタイもない日本で、
3年間でここまでできたことは奇跡です。

-世界ではどのように代表チームを作っているのでしょうか。
もちろん、皆若い時から選手を作っていきます。
例えばスペインは2001年のヤングメン(21歳以下)のメンバー表を見れば
今来ている選手がいます。
アルゼンチンもギリシャも、皆ジュニアからやってきているメンバーです。
スロベニアもそうだし、どの国もそうです。
逆に言うと、それが世界で通用する唯一の方法です。
ヨルダンの話をすると、アンゴラの前ヘッドコーチが監督になり、
同じポルトガルからアシスタントコーチを連れて行きました。
アシスタントコーチは指導を一貫するため若手育成プログラムを任されています。
ヨルダンの指導者教育も2人でやっています。

-その国々と戦うために、日本には何が必要ですか?
ヨルダンのようなやり方をしろとまでは言いませんが、
ビジョンを持ち、継続性を持って世界を知るべきです。
私は、アシスタントコーチは日本の協会の方で決めて下さいと言っていました。
強化を継続させるためですが、彼らを外してしまったのでは何も意味がありません。
 日本は今の段階では、このチームが世界選手権で見せた以上は見せられません。
またこのクオリティの試合をいつ見せられるかもわかりません。
それが間違っていると証明されたなら私が1番喜びます。
次の代表がさらにいい成績を取れば、私が1番嬉しい。
新しい監督にも、また新しく入ったメンバーにも、
もう全員に幸運といい成績を願っています。
私は別に、自分の仕事が終わった後、次のチームに何か悪いことが起きることを
願っているわけでは全くありません。
でも、私が見てきた中では日本は過去に戻っているだけです。
前に進んでいない。アメリカのような態度を示しています。
この選手とこの選手をとって、で終わりです。
ですから、先ほどの質問の答え、
日本のバスケットボール界の課題を直すには多くのことをやらないといけませんが、
1番いいのはそんなに世界のことをよく知っている強化部長に聞くことです。
彼こそ日本のバスケットボールの未来を決めました。
それが未来と呼べるものであれば。
言葉が厳しいかもしれませんが、私が話したのは全て事実です。


パブリセビッチ氏の今後
-今後どうされるか決めていますか? できればまだ日本にいてほしいですが…
私は世界選手権のために日本に来ました。
はじめに4年分の契約にまとめてサインし、
それに対して私は責任を持ち義務がありました。
しかし、強化部長が変わらない限り、私は日本代表チームの監督を続けるつもりは
全くありませんでした。
そういう人がいることはモチベーション的にはいいのですが、
あのポジションにいることだけは問題です。
あの立場にいる人ならあの柵の向こうまで見えていないといけませんが、
その木(テーブル沿いの植え込み)すら見えておらず、
このグラス(手元のコップ)までしか見えていません。
それでアジア大会で優勝することは、世界選手権でベスト16に入るくらい奇跡でしょう。北京五輪も、私が続けていたならリアルに行けたと思いますが、
(インタビューの後)1ヶ月ほどしたら、私はクロアチアに帰ります。
いくつかオファーもあります。
でもそこに行くかどうかはまた別に考えなければなりません。

-4年間過ごした日本のファンに、メッセージを下さいませんか?
今日、こうして問題点を言った理由は、また今後起きないためです。
世界選手権中と、世界選手権前には雰囲気を悪くしたくなかったからこそ、
誰にも言わなかったのです。
また、これも私は絶対最後に言うべきことだと思っていたのですが、
日本の大きな問題の1つは、皆が知っていても黙っていることです。
世間的に何も言わない。
マカオで起きていたことに対して、スペインやギリシャだったら
世間が即首にするよう圧力をかけます。
大会が終わってから、満足だ、満足ではないと言うのは自由です。
何も、誰も。でも大会中にあってはいけません。
だから、こうして改めて私の方から言います。
グループラウンド最後の日に、選手だけでなく
メディアの皆さんも何人かが見せてくれた気持ちはどのお金でも買えないものです。
ロッカールームでは半分が泣いていて、
それはチームが大きな家族のように4年間一生懸命やってきて、
いい雰囲気の中で努力してきたからこそ起きたことです。
埼玉では会場から帰る途中に長い間囲まれて、
サインや写真やで1箇所から動けない状況でした。
皆、良かったとかお疲れ様とか、ありがたい言葉を贈ってくれました。
私はそういうファンの皆さんの気持ちのためにスポーツをやってきました。

-もう会えないかと思うと、話が終えられません。
私もちょっと残念だと思います。スポーツは事務作業ではありませんからね。
エモーション、気持ちを入れない限り成功は不可能です。
このチームにはそういう気合、気持ち、やる気がありました。
皆が一緒に努力してやってきて、皆さんもそういうのを見て下さり応援してくれました。

私の1人の友達が、私にこう言いました。「さよならとは言わない。また会おう」と。
先のことはわかりません。
数年前に、「日本に数年後に行くよ」と言われても私は信じなかったと思います。
それと同じことです。そういうことで、また会えるかもしれませんよ!

転載終了。
分かるのは、ジェリコは日本を愛してくれていた。
そして今でも愛してくれているということです。

地方協会のみなさん。
あなたたちが選んでしまった協会の上層部は、
着実に日本のバスケを腐らせていますよ。
読んでいる人がいるかわかりませんが。

ジェリコインタヴューその2

2006-10-24 12:34:52 | Weblog
s-moveより転載。

世界選手権・グループBでの戦いの軌跡
-世界選手権に話を移します。ドイツ戦の善戦は、
日本のその後にどういう意味がありましたか?
 
当然チームにとって大きな刺激になりました。
世界のあのレベルのチームと過去の日本はいつ戦えたと思いますか?
そして試合前に10点差で終わると予想できたでしょうか。
ドイツは全力でかかってきていたし、ドイツの監督は10点だけの差で終わったことに
試合後すごく怒っていました。
つまり、すごくクオリティの高い試合で日本の実力以上の出来だったんです。
ゲームを通して本来どおりの内容を見せました。
ただ、ノビツキーが最初のシュート6本中5本を決めると、
日本にはもうなすすべがありません。

-2戦目のアンゴラ戦ですが、大会前に“アンゴラとパナマがターゲット”と
コーチがおっしゃっていたこともあって周囲はそれほど力の差はないのだろうと
思っており、その分大敗して落胆していました。

そういう、バスケットボールにあまり詳しくない人に対して私は何も言えません。
アンゴラに関して正しい判断をする―それができるよう導くのは
メディアの役割ですが―ためには、アンゴラはどういうチームなのか、
どう機能していてなぜ連続してアフリカで優勝しているのかを
理解しないといけません。
はっきり言いますが、クオリティ的に日本は世界のベスト16に入るチームでは
ありません。それが実状です。
カタール(アジア3位)は1勝もできず、レバノン(アジア2位)もベスト16から外れ、
中国は最後の逆転シュート1本によってベスト16に入りました。
そして、次の決勝トーナメント1回戦でギリシャに30点差で敗れたわけです。
ヤオ・ミンとワン・ジジがいるチームで、です。
それに対して、アフリカ大陸はバスケットだけではなく世界のスポーツの未来です。
前のモチベーションの話にも関わってきますが、
あのチームと戦うには最低走らないといけません。
走ることさえできないのであれば、試合になりません。

-そのチームに、なぜ“勝つ”と言っていたのですか?
ニュージーランドは世界で4位のチームですよ。
アメリカが6位だった前回の世界選手権で4位に入った時と
同じメンバーで来ていました。
ペロ・キャメロン(ニュージーランド#11)、
結局私達を負かすシュートを決めた彼はその時ベスト5に選ばれており、
ということはあのポジションで1番いい選手です。
そういうことを総合して考えてみれば、当たり前のことです。

-次のパナマ戦は、初勝利をあげましたが
終盤日本の選手が焦っていたようにも見えました。

 私はそうはとらえませんでしたが、逆に言うとそれも当たり前のことです。
私が日本に来た時、いろいろな関係者から次のように言われました。
“日本チームの特徴は、落ち始めたら最後まで落ちる”。それは確かでした。
そう考えると、私達はチームの精神力をよくすることができました。
選手達が焦ってしまうのは、それだけ勝ちたい気持ちがあることの証なんです。
何年間もそのためにやってきたわけですから。
その焦りはさらに多くニュージーランド戦で見えました。
それはスポーツ界に存在している、「勝つことがこわい」心理です。
もう目の前に勝利がある。それでその勝利について深く考え過ぎる。
それでどんどん最悪なパターンを考えて落ちていく。
自分が次にこういうプレーをするべきだというのを考えずに、
勝つことだけで頭がいっぱいになるんです。

-それは、中1日で修正できるようなものではなかったのでしょうか。
他の試合を考えてみてほしいんです。アメリカが準決勝でギリシャと対戦した時、
2Q半ばで12点リードしていたのに、3Qの残り5分にはもう14点負けていたんです。
2つのQ、時間にすれば10分ほどで25点差をつけられたんですね。
ドウェイン・ウェイド、レブロン・ジェームスなどがいて、です。
ギリシャとスペインの決勝戦も23点差です。
実力的にはほとんど差はありません。でもどのチームでも、そういう日があります。
イタリアが2秒で5本のフリースローを外したこと
(決勝トーナメント1回戦・リトアニア戦)はどう説明しますか。
世界的なプレーヤーで、世界的なシューターであるジノビリが
3位決定戦でフィールドゴール2/9だったことはどうしたら説明できますか。
長年代表でプレーし続け、色々な所で結果を残している素晴らしい選手でも
そういう時があるわけです。
スポーツと緊張感は、当たり前のように存在しているものなのです。


大一番・ニュージーランド戦
-勝てば自力で決勝トーナメントが決まる試合だったニュージーランド戦について
聞かせてください。まず前半はいかがでしたか?

 あのニュージーランド戦の前半は、この4年間で最も良かった前半です。
ディフェンスが素晴らしかった。
ニュージーランドの過去の成績を調べてみれば、
前半で20点しか決められない試合は長年なかったと思います。
経験があり、ヨーロッパで活躍するプレーヤーもいて、
この大会までは正式に4位だったチームを私達は前半20点に抑えることができました。
日本のチームが、ですよ。
ニュージーランドはコンタクトがある中でしかシュートを狙うことができず、
それを決められませんでした。それであの点差になりました。

-その状態から一転流れが変わってしまった後半は、何が起こっていたのでしょうか。

 私は選手達に前半が終わってこう言いました。「0-0だと思え」。
18点のリードも、相手が1分で2本の3ポイントシュートを決めれば12点差になります。
12点差は3分あれば逆転可能なのです。
そして3Q開始3、4分目のタイムアウトの時には、
選手達に「このまま続ければ負けるかもしれない」と言いました。
もうその段階で、選手達は勝つことがこわくなって
必要のない焦りを見せ始めたからです。
クオリティの高いチームはリードした分自信が大きくなっていきますが、
私達はすごく勝利が近い状況で逆に走ってしまったのです。
と言っても一気に落ちたわけではなく、4Qに入る時も12点リードしていました。
でも徐々にリズムを落としながら、ドリブルをスティールされたり、
パスをカットされたりするなどいくつかのばかなミスをしてしまいました。
その中で、ニュージーランドのキャメロンは70%(後半5/7)の3点シュートを決めました。それは結構運が悪かったと思います。
相手が唯一リードしたのは最後の勝ち越しシュートだけだったのですから。
でも、それがスポーツです。

-その焦りを沈めるために、どうしましたか?
後半、タイムアウトは取りませんでしたね。

 テレビタイムアウトを含めると、
タイムアウトの数は後半だけで最大9個になりました。
この世界選手権でタイムアウトの意味が完全になくなりました。
毎回テレビタイムアウトが入るので効果がないのです。
だからそのタイムアウトの時に言うことを言って、あとは交代しかありません。
でもどうなるかわからないからこそスポーツはおもしろいのです。

-その交代ですが、ベテランガードの節政選手を投入することも考えていましたか?
確かに節を入れることは可能でした。柏木の代わりに入って、
落ち着かせることができたかもしれません。
でも逆に、パナマ戦での柏木のプレーがどうだったかを考えてほしいのです。
私としては、あれだけ素晴らしいプレーをパナマ戦でしたのであれば、
このニュージーランド戦でも必要なことをやってくれるだろうと思いました。
その、節を入れるべきかどうかというのは、私も全体的に考えれば同感です。
入れるべきだったかもしれません。
でも、私達のニュージーランド戦で最も課題になったことは
点を決めることだったんです。
後半に入ってから点を全然決められない状況でした。
いくつかオープンシュートもありましたが、それを決めないと逆転されてしまいます。
出ていない選手が出ていれば勝てたというのは
どのゲームのどの負け試合でもいつも誰かが言い出すことで、
そういう経験のある選手がいれば最後勝ち越すことができたという説もありますが、
逆に私から聞きたいのはそもそも誰が18点のリードを作ったのでしょうか。
今文句を言われているその選手達でなければ
そのチャンスさえ手に入らなかったでしょう。

-では、得点をとるためにどういう指示を出しましたか。
例えば折茂選手にボールを集めよう、といった指示はありましたか。

 私達は1人の選手に全てをかけるスタイルではありません。
当然相手チームのコーチも素人ではないので、
折茂のシュート力や彼がどういうプレーヤーかをよくわかっています。
そして、相手チームのプレーを見ればすぐに、
彼らが完全にシューターを止める作戦だったことがわかります。
だからこそインサイドの選手がオープンシュートを打てる状況になったのです。
206cmのクレイグ・ブラッドショー(ニュージーランド#14)が
折茂についている状況で、それを超えてシュートを打てるわけはありません。
ただそういうことは全て予想できて、日本にチャンスがなかったわけではなく、
シュートまで来ていたけれど外してしまったのです。
もう1度言いますが、あれだけ高いレベルのチーム相手に、
1つでもレイアップを外してしまえばそれで負けがほぼ決まりです。
でも、逆に言えば古田こそあそこまでこられた理由です。
皆、生身の人間ですから素晴らしいことをたくさんしても1つのミスも起こるわけです。

-ニュージーランド戦のことばかり聞いて申し訳ありませんが、
忘れてはいけないのでもう少し聞かせてください。

 それはメディアとして当たり前のことですが、
でも皆さんの質問は前半ではなく全て後半のことです。
スペインほどのバスケットのクオリティのある国ならそれも当然です。
でも、日本はまだそのレベルではありません。それは事実です。
日本は基本的なこととの戦いなのです。
パスミスをしなかったら、ドリブルでスティールされなかったら嬉しい、
無意味にボールを失わなければ嬉しいくらいです。
でも、後から色々なコメントを聞くと、
ニュージーランド戦はリードもせずに20点差で負けた方が皆
「まぁ、それくらい差があるから」と納得してゆっくり寝られるような状況です。

-では、コーチとしてはこの試合の結果をどう思っていますか?

 カタールの話をすると、グループラウンドのギリシャ戦で、
最終的には20点差で負けましたが前半には最大16点リードしました。
カタールのメディアを見れば“歴史的なカタールの前半。素晴らしかった”という
評価です。
世界選手権のレベルをわかっているからこそ、そういうコメントをされるのです。
今回、地上波のテレビ放送がなかったのは非常に残念です。
アメリカのジェリー・コランジェロさんもそのことに1番驚いていました。
多くの人は知りませんが、私は日本に来て、
選手達にドリブル・ピボット・パス、そういうところから教えないといけない状況で、
はっきり言いますがほとんど代表監督がやるべき仕事以前のことをやっていました。
レベルの高いことにはほとんどたどりつかなかったのです。
だから私達は戦術で試合に負けたのではなく、
ドリブルミスやスティールといったことで試合の負けが決まったのです。

更なる衝撃。
これを大会直後には口にしなかったジェリコの身中いかばかりか。
まだ続きます。

ジェリコインタビュー

2006-10-24 12:22:20 | Weblog
反則覚悟でs-moveから転載。
突っ込みなし。

パブリセビッチ氏から見た「日本」
-今、改めて4年間を振り返って、日本の印象を聞かせてください。
 日本に対しての印象はすごく素晴らしい。
観光ではなく仕事で来日する外国人の場合、慣れるか慣れないかで
日本が好きになるか嫌いになるか分かれます。
カルチャーショックを受け、慣れない人は1、2ヶ月もしないうちに
辞めて帰ってしまうでしょう。
私は、日本は素晴らしい文化と伝統を持った国だと思います。
スポーツ的ではなく人間として、多くのことが日本で学べました。
それらはヨーロッパの文化ではそこまで気が付かないようなものです。
この4年間に日本で経験したことのうち、99%はいい経験です。
中には良くなかった経験も当然ありますが、それは仕事に関することであって、
日本国とは関係ないことです。
私は4年間日本という素晴らしい国の代表チームの監督ができて
すごく誇り高く思っています。

-日本のバスケットについては今どう思っていますか?
日本のバスケットボールはまだまだやらないといけないことがあります。
確かに、多くのことは私がここに来てから変わってきています。
基本的なボールの持ち方からピボットの正しいやり方、
基礎体力、ゲームの中での体の使い方、
またもっと上のレベルの技術など色々やってきましたが、
言えばきりがありません。
そういう意味ではまだいくつかのことが私の後に残っています。
私達は現状を知っているからこそ満足しています。
次の人がもっと行けることを証明してくれないといけません。
高飛びの競技のように、今まで2mのところにハードルを置いていたのであれば、
次は2m5を飛び越えないといけません。
でも、中には皆が見えることが見えない人もいます。
それによって日本のバスケットボールが損をするのは残念なことです。

-日本のHコーチを引き受ける前の日本に対する印象はどんなものだったのでしょうか。
ヨーロッパの関係者皆に“そんなところに行くな”と言われ、
私のエージェントも日本に行くことを私が決めた後何ヶ月も
口も聞いてくれませんでした(笑)。
でも私はそういう新しい国で挑戦したいという気持ちがあったし、
自分がやる仕事を信じています。
以前に私が取材やその他で発言したことを見れば、
全て自分の信じる通りやってきたことがわかります。
それができたのは、長年この仕事をやってきた経験もあるし、
何を目指すべきかわかっているからなんです。
4年間の中で1つでも間違った判断をしていれば、
世界選手権には間に合っていません。
もちろん、全部正しい道を進んでも、何人かの選手にとっては
年齢的に世界選手権が早すぎたのは間違いありませんが、
実際日本には世界選手権に出たメンバー以外はいません。
周りの人は他の選手もいると勘違いしていますが。
それはまた近いうちに明らかになると思います。


代表チームとの4年間
-4年前、日本がどこからスタートしたのかをもう1度教えて下さい。
私は何をすべきか最初からわかっていて、それに向かってまっすぐな道を進みました。
でも私が日本に来てもらったものは、代表チームと言えるものではありませんでした。
チーム全体が(代表として世界と戦うには)身長も技術もなく、
フィジカル的に当たりが弱く、練習のきつさに慣れていない選手達で、
ポジションもはっきりしていませんでした。
忘れたらいけないのは、1年目のヨーロッパ遠征でクロアチアのザクレブという
国内で中位レベルのチーム、それもセカンドチームに39点差で負けていました。
ボスニア・ヘルツェゴビナのシロキ・ブリイェグというクラブのジュニアチームにも。
印象に残っているエピソードを1つ言えば、節(節政貴弘・東芝・34歳)と
マイケル(高橋マイケル・トヨタ自動車・32歳)は試合前にそのチームを見て、
「この子供達に負けたら引退する」と言ったんですよ。
でも2人とも引退してしまわず今もプレーし続けていてすごく良かったと思います(笑)。それがスタートでした。

-それを踏まえ、2年目からはどのようなことに取り組んだのでしょうか。
最も重要だったのは2年目です。
スポーツ界で最も重要なセレクションをやったのは2年目からだからです。
その結果、何人かの選手は練習をやる気はありませんでした。
考えは人それぞれですが、夏の休み、リーグがない期間に練習をやる気はないし、
そんな遠い旅(ヨーロッパ遠征)をする気もないのでしょう。
でも厳しい言い方をすれば、
私は、ダーク・ノビツキー(ドイツ)やエマニュエル・ジノビリ(アルゼンチン)、
パウ・ガソル(スペイン)ら世界の中でもトップスターが
代表の活動全てに参加できるのであれば、
彼らよりレベルが低く実際世界的に評価されていない選手も
全部に参加して何もおかしくないと思います。
日本が世界と戦う方法はフィジカル的に努力することのみです。
練習するしかない。それ以外のことは世間をごまかす行為でしかありません。
この言葉が本当か嘘なのかも近い未来に見えるでしょう。

-そのセレクションの結果、選手のやる気を引き出すよりも、
実績はないけれどやる気のある選手達でチームを作っていこうと思ったのはなぜですか。
誰に実績があるのか聞かせて下さい。どの実績ですか?
98年(世界選手権出場)はもう遠い過去なんです。
それに、2000年まではアジアの大会に中東のチームは出たり出なかったりでした。
私は思いつきでやっているわけではなく、
過去の代表の成績と試合の内容分析を全てやりました。
自分の国のために、自分の国で行われる世界選手権に向けて選手のモチベーションを
あげないといけない状況なのであれば、もうまずそこから間違っていると思います。
代表選手でいることは、プライドに関わる問題です。
ヨーロッパの監督が一番大変なのは、皆来たいから断らないといけないところなんです。日本と全く逆の状況ですね。
選手本人だけでなくチームからもこの選手も取れ、この選手も取れ…という状況です。
私はそこにも驚きました。
でも勘違いしてほしくないのは、
誰か戦力になる選手をそれで見逃したわけではないんです。
なぜなら何人かの選手はフィジカル的にいい準備をしない限り、
世界の大会でパフォーマンスできないからです。
アンゴラを見ましたか。どれだけの能力でしたか?
ドイツを見ましたか。身長、速さ。
パナマも、成績は良くなかったけれど、クオリティのある選手達が揃っていました。
それらのチームと戦うのに、練習をしなかった選手を連れて行っても
最初から負けが決まっています。
つまり、誰かが来ていないから代表チームが損をしたわけではないんです。
私はまずベースを作り、最後の年に必要な戦力になる選手を呼び戻すと言いました。
それは折茂と節(節政)だったんです。
彼らが必要だと私は判断しました。
去年のスーパーリーグで最も良かったポイントガードは五十嵐、次は節でした。
それはすごく簡単にわかります。
また折茂について言うと、私の彼と経験したこと全てが素晴らしかったです。

-そうして選ばれた選手達とともに、どのようにチーム作りを進めていったのですか?
チームとは生きているものです。
命があるもので、当然選手の成長や、逆に言えば成長しなかったことによって、
チームをうまく1つの方向に進めないといけません。
例えば、私は1年目に五十嵐があれだけ素晴らしい選手に成長するとは
予想できませんでした。
4年間トータルで見れば、彼がこの代表チームの1番いい選手でした。
それは誰が見ても当たり前にわかると思います。
彼のことはアジアの全ての国が尊敬し、注意しています。
このように、どの選手がどこまで伸びるかにチームの戦術その他を合わせるしか
ありません。
毎年練習の中身は変わっています。
毎日見ない限り、大体似たような感じに見えるかもしれませんが、
タッチポイントは毎回違いました。

-選手達は、コーチの練習にどのように応えてくれたと思いますか?
セレクションの後キリンカップで初優勝し、3年間で2回優勝することができました。
昨年カタールで行われたアジア選手権は、前の成績(2003年の6位)より
順位を1つ上げることができました。
昨年マカオで行われた東アジア競技大会では銀メダルを獲りました。
この3年間のうち、中国に数十年ぶりに、それも2回勝つことができました
(前出の東アジア競技大会とアジア選手権東アジア予選)。
そして世界選手権も、私達の実力以上のプレーができました。
ダーク・ノビツキーがいるドイツと10点差のゲームができるとは
誰も想像できなかったでしょう。
それも1Q以外の3つのQは日本が勝っているのです。
とても強いチームであるパナマに20点差で勝てるとも誰も想像できなかったと思うし、
アンゴラ戦はわかっている人にとっては想定内の試合です。
そしてこの大会までは世界で4位と認められていた国(2002年世界選手権4位)・
ニュージーランドにも、最後はちょっと運が悪かったけれど勝利までもう少しでした。
日本の代表史上でも最も良かった数試合なのは間違いありません。
広島で聞いた話では、日本が世界選手権の予選ラウンドで勝つのは
43年ぶりだそうですね。
若く才能のある選手が育ち、健康ないいチームになってくれました。
それ以上は4年間では無理だったと思います。
1つの意見として、私の練習のやり方と強度に納得しない人もいますが、
逆に言うと世界のほぼ全ての代表が私と同じ基準で選手を選び、
同じ基準で練習をやらせています。
だからその基準は一歩も引けませんでした。
ここまでこのチームができたのも、その基準を大切にしたからこそなんです。
基準を緩めていたらもうずっと前から台無しになっていました。

-世界選手権でベスト16に入ることはできませんでしたが、
成し遂げたことがたくさんありますね。
1年目の記者会見で言いましたが、当時の目標は世界と戦えること、
ベスト16を狙うことでした。
最近言われているベスト8の話は真っ赤な嘘で、くだらないくらいです。
世界の、アメリカ以外のどの代表でもベスト8に入るとは言い切れないのですから。
今回、ブラジルやプエルトリコでさえベスト16に入れませんでした。
そういった中で、様々な準備をしてここまでできたことは
本当に選手達と現場スタッフのおかげで、彼らは満足するべきだと思います。
皆一生懸命やりましたし、日本の歴史に残るようなことをいくつかやりました。
私はこのチームに対してすごくプライドを持っています。
将来的にこのチームを超えるチームが現れたら嬉しいですが、厳しいと思います。

まだまだ続きます。
正直、ショッキングな内容です。
でもぜひ、日本のバスケ選手・関係者全てが読むべき内容でしょう。

志ある若き選手たちよ!
私は、あなたたちを信じています。