サッポロビール那須工場の「手づくりビール工房」に行ってきました。1月にハガキで申込みを済ませ、料金は4人1グループで\24,000でした。約1ヵ月後に仕込んだビールを330ml瓶で24本届けてくれます。また、併設のバイキングレストランでの昼食も料金の中に含まれていました。昼食をはさんで約7時間かかります。
この工房で行うのは、ビールづくり全体の工程のうち「仕込」と呼ばれる部分です。麦から麦汁をつくり、ホップを混ぜて、最後に酵母を加えるところまでです。このあと発酵と熟成・ろ過を経て完成品になるとのことです。また、麦汁つくりの前には、大麦の発芽と焙燥があります。
作業や説明を通して、気づいたこと、知ったこと、感じたことなど。。。
1)アルコール分ができるメカニズム
でんぷん → 糖質(+酵母) → アルコールと炭酸ガス
でんぷんが糖質に変化するのは、酵素のはたらきです。中学理科のだ液によるでんぷんの消化実験と同じ原理ですね。酵素は外から加えるのではなく、麦の発芽の過程で自身から生成されます。糖質がアルコールと炭酸ガスに分解するのは、化学式で説明できますね。
麦汁をつくる工程では、麦汁を2つに分けたり、混ぜたりを数回繰り返して加熱や温度維持を行うのですが、酵素を適切にはたらかせるため温度や時間が厳密に決められています。
この温度と時間は種類によっても違いますし、またその設定は「持ち出し禁止」になっていました。
2)「ラガー」と「エール」
酵母の種類によって、呼び名が異なります。『下面発酵』と言う液の底から発酵させるのが「ラガー」、液面から発酵させる『上面発酵』が「エール」。(厳密にはやや異なるかもしれません)
工房では上面発酵の酵母を使うので、「エール」をつくったことになります。
3)「麦とホップだけ」の意味
工程は複雑でした。麦汁を煮出す寸胴鍋が2つ+お湯を用意しておくetc.の寸胴鍋、それにろ過装置、メスシリンダー、発酵&熟成タンクetc.。これらのものを使って仕込を行います。ただし、原材料としては大麦とホップ、それに水と酵母だけでした。
ビールメーカーでは、酵母を厳重に管理しているそうです。
4)○○絞り?
麦から糖質に変化した麦汁をろ過装置でこします。まず麦汁の原液をこした後、ろ過装置に残る麦殻(?)にお湯を通して、さらに麦のエキスを得ます。この原液を「一番麦汁」、その後のエキスを「二番麦汁」と呼んでいました。○○絞りは、この一番麦汁だけで作ったビールということですね。一番麦汁も二番麦汁も味見しましたが、二番麦汁が味が落ちるような印象はありませんでしたよ。
5)黄金のビールと黒ビール
麦の焙燥のしかたによる違いで、仕込の手順(温度・時間etc.)も異なるはずです。今回は「スタウト」と言う黒ビールをつくりました。大麦は深く焙燥されていて、麦汁は香ばしい匂いがして、麦汁つくりの早い段階で黒い原液になりました。深煎りのコーヒーに見た目も似ていました。
6)仕込の加減
実際の醸造技術者の方がつきっきりで指導と説明をしてくれました。麦汁のデキを、手順の一つ一つで状態を見ながら評価したり、細かい手を加えたりしてくれました。機器分析も行って確認します。麦とホップの農作物、生き物である酵母を扱うので、この辺りの加減が重要のようです。IHのコンロで作業を行いました。
工房では、4種類の中から作りたいビールを選べます。”ケルシュ”と”エール”が2種、黒エールの”スタウト”です。最終的に14リットルの麦汁ができあがりました。工場では30000リットルを一度に製造するそうです。
約1ヵ月後、できあがりが楽しみです。