笹本稜平の「春を背負って」を読んでみた。
思いのほか、面白かった。
裏表紙にも、山岳小説の新境地と書かれているが、
確かに、山岳小説というと、とにかく、高く、厳しい登山を
いかに成功させるか、いかに生死の境で、生き抜くかといった
ストーリーが多いように感じる。
しかし、こちらは、2000m級の秩父の山の山小屋の
話であり、どこか、ほのぼのとした感じがする。
しかし、6話の短編からなるのだが、どれも、珠玉の短編である。
”野晒し”は、山中で白骨死体が見つかる。その近くで、遭難しかかった
老人を助けるのだが、何と、その白骨死体が持っていた時計が
その老人のものだったのだ。果たして、幽霊だったのか?
まったく、予想できないミステリー仕立てになっていた。
また、最後の”荷揚げ日和”も面白い。一匹の猫が山小屋にやってくる。
そして、次に8歳の少女が見つかる。周りに親はいない。いったい、
どうやって、少女と猫は、この山にやってこれたのか。
どの作品も人生が描かれている。だから、面白い。
2014年に映画になったのも納得である。見てみたいものである。
ただ、舞台が秩父でなく、見栄えの良い立山になっているので、
小説愛好家には、ちょっと、不満のようだ。
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