長岡弘樹の自薦ミステリー集、「切願」を読んでみた。
6つの短編集からなるが、どれも、ユニークで、独特の雰囲気を持っている。
長岡氏は、短編ミステリーの名手と言われているらしい。
後半のちょっと長めの2作、「迷走」と「真夏の車輪」は、中々、面白かった。予想もつきにくかった。 . . . 本文を読む
ちょっと、気楽に読めるものが欲しい時に、奥田氏の作品は、ぴったりである。
今回の短編集も、よくありそうな日常の中で、おこりうる物語をさらりと描いている。in the poolなどに比べれば、現実的であるのだが、だからといって、それほど深刻でもない。
6作の中で、「家においでよ」が、一番、気に入った。突然、妻に別居された男の行動である。自分の若かりし頃の理想の生活を実践するのだ。終わり方が、良か . . . 本文を読む
佐々木譲の「エトロフ発緊急電」を読んでみた。
山本周五郎賞受賞作だ。
真珠湾攻撃前の情報戦が主なストーリーなのだが、非常に内容が濃密であり、大作とも言えるページ数(623ページ)だった。
南京大虐殺も描かれており、残虐な戦争犯罪にぞっとした。
一方で、主人公である日系米国人の不思議な魅力と、ハーフの女性や、朝鮮人、アイヌなどが、複雑に絡み合い、人種というものの難しさや、愛憎までも描かれてい . . . 本文を読む
奥田英朗の伊良部医院シリーズ第3弾を読んだ。
すっかり、このおかしなシリーズにはまってしまったようだ。
4つの短編からなるが、だんだん、洗練されてきたような気がする。
一作目、二作目に負けず劣らずの第三弾だった。
第4弾が楽しみだ。 . . . 本文を読む
恩田陸の「ユージニア」を読んだ。
傑作ミステリーとのことで読んだのだが、正直言って、自分にとっては、不完全燃焼だった。
話の展開や会話のおもしろさは、さすが、恩田陸だと思ったが、これをミステリーと呼ぶには、もやもやっとしたものだが湧いてくる。
もちろん、怪しさや、話が前後左右に振られる目まぐるしさなど、まあ、よく書いたなあという感想はあるのだが・・・
最後のユージニアノートなるものが付いて . . . 本文を読む
井上荒野の直木賞受賞作、「切羽へ」を読んだ。
切羽とは、”せっぱ”と読むと思い込んでいたが、違った。トンネルを掘っていった先のことで、”きりは”と読むらしい。おそらく、このことを知った著者が、両方の意味を含ませて、この作品を作るきっかけになったのではないかと想像する。裏表紙には、繊細で官能的な大人のための恋愛長編とある。恋愛小説を読んだことがあるか . . . 本文を読む
奥田秀朗の5編の短編からなる「コロナと潜水服」を読んだ。
他の書評でも、後半の2編、「コロナと潜水服」と、「パンダに乗って」の評価が非常に高いが、納得だ。
この2編は、傑作と言っても良いと思う。じんわり、感動したり、涙腺が緩んで、心地よい気持ちになれた。
前半の3篇も、同じ、霊にまつわる話であり、悪くはないが、後半3篇ほどではなかった。
「空中ブランコ」ほど、ふざけた感じがないので、笑いは . . . 本文を読む
辻堂ゆめの「トリカゴ」を、やっと読んだ。作者渾身のミステリーということで、最初に読みたかったのだが、やっと図書館で借りれた。
虐待や無戸籍者の問題を取り入れた社会派ミステリーとのことだが、無戸籍という世界があるのに衝撃を受けたという書評が多かったが、自分も同じだ。
子供の時、捨て子の事件などがあると、お前も橋の下に捨てられてたのを拾ってきたと、冗談を言われて、泣いた記憶がある。
捨て子でも、 . . . 本文を読む
直木賞受賞作「ホテルローヤル」を読んだ。
7つの短編集からなる。しかし、すべて、ラブホテルである「ホテルローヤル」に関係したストーリーになっている。
正直言って、最初の2作品を読んだ時点では、あまり、面白いと思えなかった。まるで、リアリティーに欠けるような奇異な設定のような気がしたのだ。
ところが、3~7作品と読み進むうちに、ほほーとうなされるような面白みを感じるようになった。
まず、この . . . 本文を読む
第一回本屋大賞受賞作の本著を読んでみた。
表題に以前から惹かれていたのだが、読んでみて、不思議な魅力を感じた。
芥川賞他、いろいろな賞も受賞し、海外でも高い評価を得ている著者とのことだが、なるほどと思えた。
80分しか記憶が維持できなくなった数学博士の物語だ。
毎回、初対面となってしまう家政婦とその10歳の息子との心のふれあいを描いているのだ。
書評を書くのは、きわめて難しい作品だ。ただ . . . 本文を読む
柚月裕子の「孤狼の血」を読んだ。
柚月裕子は、この作品を書くにあたって映画の仁義なき戦いを見て、多いに影響を受けたらしい。
物語は、広島、ヤクザとの癒着の噂される刑事、大上に新しい若い部下、日岡が配属される。
大上の強引で、違法な捜査に戸惑いながら、日岡は、次第に、魅力を感じ始める。
いわゆる悪徳デカなのだが、これほど魅力を感じる悪徳デカを描かれたことがあったであろうか?
正義とは、何か . . . 本文を読む
津本陽の直木賞受賞作、「深重の海」を読んだ。
津本陽と言えば、時代劇、剣豪の物語と思い浮かべるが、この作品は、まったく違う。紀伊半島の太地湾での、鯨取り漁の物語だ。
伝統的な捕鯨漁を生業とする数百人の漁師が小舟を使って、クジラに向かう様子は、まさに、人間と鯨の戦いといっても良い。
代々、その組織の頭を受け継いできた若者が主人公だ。
面白く読めたが、これでもか、これでもかと、試練が続く。そし . . . 本文を読む
奥田英朗のイン・ザ・プールを読んだ。先日、読んだ「空中ブランコ」に負けない面白さに笑えた。
5作品のうち、2番目のは、この表題いいの?と思わず、うなってしまった。何と、「勃ちっぱなし」なのだ。
現代人がかかえる精神的な病を材料にしているのだが、その解決方法が、奇妙奇天烈なのだ。また、この著者のほかの作品も読んでみたいものだ。自分には、合っているのだから仕方ない。
. . . 本文を読む
「このミス」大賞受賞の本著を読んでみた。
正直言って、何が、面白いのかわからなかった。
暗くて、不快に感じるだけの作品だった。途中までは、何等かの期待感があった。
しかし、何の、ミステリー性も感じなければ、意外性もなく、ストーリー的にも、面白くなかった。この作者の著作は、読むことは、今後、ないだろうと感じた。 . . . 本文を読む
奥田英朗の直木賞受賞作、「空中ブランコ」を読んだ。
伊良部総合病院の神経科を舞台にした5編の短編集からなる。
どれも、設定がおかしくて、会話も楽しめた。思わず、笑わずにはおれないなんて、久しぶりの快感だった。最近のお笑いは、無理やり笑わせようとしているようなところがあり、この作品群のように、自然に笑わざるおえなくなるのが、新鮮な気持ちだった。
このシリーズの前作のインザプールも読んでみようと . . . 本文を読む