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Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

女王の帝国

2014-09-08 | Weblog

いやぁ、凄まじきかな。
蜜壺。

エロス炸裂って話じゃないですよ?(笑)。
とろりんちょ。

お腹に蜜を貯蔵できる蜜壺蟻のドキュメンタリーを見た。
綺麗な映像で、よくぞこれだけ撮ったなぁと感心したが、のちにエンドロールを見ると製作はBBC(笑)。放映権買っただけかよ、NHK(笑)秀逸なドキュメンタリーは大抵海外の局だよな(笑)。

素晴らしい作品だった。
アメリカのアリゾナ州。
年にごくわずかな雨しか降らない砂漠地帯。サボテン畑の砂地にミツツボアリは暮らしている。

ミツツボアリの女王蟻がとてとて歩いてくる。
土を掘り巣を作りはじめる。そこへ一匹、二匹と他の女王蟻も集まってくる。ケンカが始まるのかと思うとそうではない。
協力して巣を作る。総勢、10匹の女王蟻たちが集まって巣を作り、各々が次々と卵を産む。

初めて孵った子供たちはすべてメスの「働きアリ」。メスではあるが、生殖能力はない。ひたすら「女王」に仕えるための一生。
女王の身体を清潔に保ち、卵や幼虫の世話をし、食料を調達しに行く。休みなく働く。

女王は次々と卵を産み、帝国を拡大していく。
しかし、ある時、女王のうちの一匹が働きアリに攻撃される。『女王の力』とは何か。それは卵を産む力。生殖能力が高いほど、フェロモンは強い。卵を産めない女王ほど、フェロモンの香は弱い。働きアリは、そのフェロモンの強弱を嗅ぎ取り、乾期で食料が少ないなどの過酷な時期になると、最も生殖能力の弱い「女王」に攻撃を加えて、殺す。殺される女王は、全く抵抗しない。
女王の死体は無駄にはされない。その周りに育ちざかりの幼虫たちが据え置かれて、女王の遺体は彼らの「餌」となる。

そうして、最終的には10匹いたうちの女王の中から、最後の一匹。
「真の女王」が選ばれる。
女王の帝国が築かれていくのだ。

帝国の総数が数百匹を超えた辺りで、初めて「貯蔵アリ」が産まれる。
お腹を異常に膨らませ、その中に働きアリたちが集めてきた蜜を文字通り「貯蔵」する。
生きている食料タンク。そのためだけの専門職。

不思議なことに、これは帝国のアリの総数が数百を超えた時にしか、生まれないのだそうだ。
どうやってその遺伝的「スイッチ」が入るんだろうか。
すごいな、女王。何かしら遺伝子配列に変化が起きるのだろう。
サイズも全く違う。カンロ飴みたいなお腹をした「貯蔵アリ」。
これが地下洞窟の天井に軒並みぶら下がって、食糧事情が悪い時には、この「貯蔵アリ」から蜜を分配する。
琥珀色のカンロ飴アリの多さが、帝国の豊かさの象徴である。

時には、女王の兵隊たちは、餌を求めて他所のミツツボアリの巣にまで遠征に行く。
栄養状態がよい女王の働きアリは体も大きい。自分たちより弱い巣を見つけては略奪と強奪の限りを尽くす。
まずは「貯蔵アリ」を狙う。動きの鈍い彼らを自分の巣まで運ぶ。時には生かしておくこともあるが、よほどお腹が空いていると、その場で殺して腹から蜜をチュウチュウ直に啜る。
卵も、幼虫も、すべて攫ってくる。敵の巣の働きアリもすべて殺し、向こうの女王も殺す。

ミツツボアリ同士の戦闘では、敗れた巣には何も残らない。
いくつかの働きアリの死骸だけである。

そうやって、さらに帝国の隆盛を誇る。
6年が経った。

産まれた卵から孵ったのは、羽アリである。
女王の遺伝子を受け継いだメスとオスの羽アリたち。
雨季の豊かな雨の後、一斉に飛び立ち、空中で交尾する。
交尾をしたオスは即、死ぬ(笑)。
その死骸もまた、様々な生き物の餌になる。クモやトカゲらの。

受精でき、運よく生き延びることができたメスは地上に下り、新たに巣を作っていく。


女王の帝国も築き上げてから8年が経った。
雨季が遅れていて、雨が来ない。
餌は乏しい。
女王も以前ほどには卵を産むことができなくなった。

働きアリたちは、危険を冒して縄張りを超え、餌を求めて遠征する。
別の巣を見つけた。
襲おうとしたが、相手の身体の方が大きい。
これは無理だと急いで逃げるが、今度は相手に遠征部隊が追われる。
追われてついには、女王の巣を突き止められてしまう。

帝国を築き上げた女王の巣も、新たな若い女王の精鋭たちに、襲撃される。
貯蔵アリが拉致され、卵も幼虫も根こそぎ強奪される。

そして、ついには。
帝国の女王も敵のアリに見つかり、襲われ、殺される。

8年。
アリゾナの地下に、一時代を築き上げた女王の帝国は、もぬけの殻になった。

数日後、雨が降った。
しかし、女王には遅すぎた雨であった。


恵みの雨の後には。
新たな女王アリが地上に舞い降り、地中に巣を掘りはじめる。
そして、あちらこちらから女王アリたちが集まり、協力して巣を掘っている。
地中深くへ潜っていく女王アリたちは、二度と再び地上に出ることはない。


そうしてミツツボアリの命の循環は、途切れることなく続いていく。






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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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女王様も楽じゃないねぇ、、、 (虫子)
2014-09-11 22:31:10
凄い記事!
放送を見ていないのに、頭の中で蟻たちの凄まじい生き様がはっきりと見えたよ。
感動した!!
女王様とは言え、楽ではないのね。羽を持って生まれ自由に空を飛び回っていたメス蟻だけど、交尾に成功すると出産マシーンとして日の当たらぬ巣の中で卵を産みまくるさだめ・・・。しかもフェロモンが弱いと殺されちゃう、、、
壮絶だな。
カンロ飴みたいな腹を持つ専門職も、なんだか不自由で痛々しいけど。。
美味しそう♪♪食べたくなる。
ミツツボアリ。すっかり魅了されたわ。
臨場感溢れる素敵な記事をありがとう!
専門職のお腹、舐めたら甘いんだろうなぁ。うっとり。
ミツツボさんたち、日本にも来ないかなぁU+2764U+FE0E
返信する
そうなの (ぽっちり)
2014-09-11 23:37:00
女王様も楽じゃないんだねぇ。

アリはすべてメス社会でしょ?繁殖期だけはオスが産まれるけれども、基本メス社会だよね。
女王でも、子供が産めないと殺されちゃうし、働きアリに産まれたら死ぬまで働き続けて、自分は子孫を残せない。いずれにしても過酷な生だなぁってしんみりしちゃったよ。

個としての幸福はないアリだけど、種としての均衡は見事に取れている。実に感心したよ。生物って本当に良くできているなと思って。

貯蔵アリを産む、羽アリを産むという判断をどうやってできるのか、女王の体内で何が起こるのかとか。不思議。見事なもんだなぁと思って。

貯蔵アリはたぶんお腹をぷちっと潰して啜ったら甘いんだろうね。オーストラリアとかではアボリジニーとか食べているんじゃないかな?でも、お腹潰れちゃうからね(涙)

ミツツボさん、日本に来たら湿潤で餌も豊富にあるから、ミツツボ無くなっちゃうかも(笑)。エロス消失(笑)

凶暴なアルゼンチンアリは今たくさんいるみたいで、日本のアリを駆逐しているらしいが。外国産は凶暴なの多いからなー(涙)日本のって地味でおとなしいよね。お国柄かね(笑)。

スズメバチだけは凶暴だけどな。
あ、今日、うちのバジルやローズマリー、キンカンの花のとこに小さな蜂が飛んできてさ。せっせと蜜を集めていた。働き者。

虫子も働き者。
エライぞ。よしよし。



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