たまたまテレビを見ていたら「日本人イヌイット 北極圏に生きる」の生活を紹介していた。
イヌイットの人々は日本人ともよく似た風貌をしているが、それにしても日本人っぽい顔立ちのおじいさんだなぁと思っていたら、なんとその人は正真正銘の日本人であった。
大島育雄さん。40年前に北極圏に移住し現地の女性と結婚して、以来イヌイットとして生活している。
番組は育雄さん、息子、孫の3世代に渡る生活の様子を追ったものであった。
なんとも言えない良い笑顔なのだ。
彼らの顔にのぼる表情が。
それは北極圏でマイナス何十度にもなろうかという場所であるから、自然環境は過酷なことこの上ないだろう。
にもかかわらず、彼らの表情は本当に活き活きとしていて、日々満ち足りている様子が分かる。
なんだか見ているだけで心が洗われるようであった。
孫のイサム君(9)が誕生日を迎え、そろそろ大人への階段を上るから、おじいちゃんやお父さんと一緒にトナカイの猟に行くかと誘われる。その時の恥らうような、それでいて喜びに溢れた表情。なんという健やかさだろうか。大人の世界へ足を踏み入れる希望に満ちている。しかし、そのトナカイ猟の最中、イサム少年はおじいちゃんと道ではぐれてしまい、お父さんは必死になってイサム君の名前を呼んで探す。背に大きなトナカイの生肉を乗せて。島の端には断崖絶壁があるのだ。幸い無事であったが、お父さんにしこたま怒られ、ちょっと拗ねたようなイサム少年。お父さんがあんなに怒ったのは、心配したからなんだよと声をかけたくなってしまう。帰りの船の中。苦いブラック珈琲に挑戦するイサム。砂糖なしでは苦い。お父さんは目を細めながらそれを眺め「お前も珈琲が飲めるようになったんだなぁ」。お父さんは感慨に浸る。イサムの珈琲にスプーンで砂糖を入れてあげながら。
いいなぁ。
うるうる。
イヌイットの食べ物というものをあまり知らないのだが、なんとかという渡り鳥?を捕まえて、それを煮てスープにする。それは普通に聞こえるのだが、よく見ると驚いたことに鳥、羽根つきのまま煮てます。えぇっ????羽根むしらないのぅ?それはちょっと、なんというか、すごい画だなぁ(笑)。口にけばけば羽根ついちゃわないのかねぇ??
その鳥を、これまたなんとかいう(←いいかげん)保存食にする。鯨の皮の中か何かに詰めて醗酵させる。これまた羽根つきのまま。というかビジュアル的には鳥の姿そのままです(笑)。頭だけ落としているのか。このおそらくは酸っぱい匂いをさせていると思われる鳥を羽根のまま(やはり)しゃぶる。孫の5歳くらいの女の子がおいしそうにしゃぶっている。が、口、そら「血だらけ」ですよ?(笑)でもねー、まぁ、なんか嬉しそうに、おいしそうに鳥、手も口もそこらじゅう血だらけになってしゃぶっているのですよ。あたしゃぁ、好きですねぇ、こういうの。ほとんどホラーじゃん。こえぇよ。でも、心の底から幸せそうな、無心に食べ物を食らう野生生物のような可愛らしさがある。
勿論、楽な生活ではないだろう。
だけど、彼らは日々満たされているのだろうなぁ。
この表情は。
今の日本のどこを探しても、もう見つからないのかもしれない。
番組は、8月31日の深夜に再放送されるそうだ。
もしご興味があったらご覧になってはいかが?
本当に皆、いい表情で、きんとした風が頬をなぶるようで泣けてきます。
追記:
この番組を早速友人が見てくれて、海鳥はどうやら『アッパリアス』という名前だったと教えてくれた。ついでに見てみたら、醗酵させるために詰めるのは鯨ではなく、アザラシの皮で、その発酵食品の名前はどうやら『キビヤ(ック)』です。
あっぱれ、アッパリアス!(←我ながら、ちょっと気に入っている(笑))