大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

カリフォルニア州、配車サービスのドライバーを労働者とみなす法律を可決

2019年09月11日 | 経済

 2019年9月10日(火)、カリフォルニア州の上院は29対11でウーバーやリフトといった配車サービスのドライバードアーダッシュやウーバーイーツのような料理宅配サービスの配達者を個人事業者ではなく労働者とみなす法案(Assembly Bill 5)を可決した。

 ウーバーやリフトは、インターネットによって呼び出し・予約をすることができる迎車、配車サービス。

 どちらもカリフォルニア州を本拠に世界展開し、ウーバーは売り上げが1兆円を超えるまでに成長している。

 このビジネスモデルの問題は、ドライバーや配達者が個人事業主扱いで、委託元企業が最低賃金や社会保険料の支払いをまぬがれていること。

 このことについては年々批判が高まっており、ロンドンなど配車サービスの免許更新を拒否したり、ドライバー労働者としての権利を認めるケースが増えている。

 こうしたなか、ウーバーとリフトの本社があるカリフォルニア州で配車サービスや料理宅配サービスのドライバーを労働者とみなす法案(AB 5)が可決されることになった。

 ウーバーとリフトは、法案が可決された場合、9千万ドル(95億円)をかけて配車サービスのドライバーを法律の適用対象外にすることを求めて運動をおこすとしている

 法案は今年の5月に59対15で下院を通過しているが、法案に修正があったため再審議ののち可決される見込み(修正は大きな市に違反企業を訴える権限を与えるもの)。

 知事はすでに法律への賛成を表明しているが、知事が法案に署名すると、法律は2020年1月1日から施行となる

 

2019/9/21追記

 法案は2019/9/17日に下院で可決され、翌9/18、ニューサム知事が署名した。これで2020/1/1からの施行が決定となった。

 

 

カリフォルニア州、ウーバーのドライバーを労働者とする法案の可決へ? (2019/9/6)

配車サービス・ウーバー、ロンドンで免許取り消し (2017/9/24)

英司法、ギグ・エコノミーに待った: ふたたびウーバーのドライバーを労働者と認定 (2017/11/11)


UAWの元GM担当役員が汚職で有罪認める

2019年09月10日 | 経済

  2019年9月4日(水)、UAW(全米自動車労組)のマイケル元GM担当役員は、裁判でマネーロンダリングなどの罪を認めた

 マイケル氏は、GM担当役員だったとき、GMとUAWが共同で運営する訓練センターへの納入業者に200万ドル(2.1億円:1ドル=105円)のキックバックを不当に要求、受け取ったなどとされている。

 容疑の最高刑は懲役20年。マイケル氏は、有罪をみとめるかわりに刑期軽減を求めている

 UAWとビッグ3はそれぞれ共同で訓練センターを運営し専門労働者の養成をおこなっているが、センターをつうじた大規模な汚職が発覚。

 これまでに8人の有罪が確定しているが(すべてフィアットクライスラー部門)、GM部門での有罪はこれがはじめて。

 先週には、ゲーリーUAW会長とデニス前UAW会長の自宅家宅捜査されるということもおこっている(両氏には容疑はかけられていない)。

 2019年9月3日(火)、UAWはGMをターゲットに4年ぶりの労使交渉を開始すると発表したが、きびしい門出になった。

 

2019/9/16追記

 西部などを統括するリージョン5の最高責任者バンス・ピアーソン氏が他者と共謀して組合資金を横領したとして起訴された。

2019/9/21追記

 2019年9月20日(金)、UAWのGM部門・前副責任者ジョー・アストン氏のアシスタントをつとめていたジェフリ氏は、納入業者に不当にキックバックなどを要求、受け取ったとして起訴された。一連の捜査では11人目の起訴、GMでストライキがはじまってからははじめての起訴となる。 

 


中国の地方政府の負債、一部でデフォルト

2019年09月08日 | 経済

 中国の地方政府のかくれた負債の処理がはじまっている。

 中国の地方政府は、融資平台(LGFV)と呼ばれる外郭団体を通じて資金集め、投資をおこなってきた。

 LGFVの財務は地方政府の簿外となるため実態はわかりにくいが、ブルームバーグによれば500兆円の負債を抱えているという試算もある。

 そしてフィナンシャルタイムズによれば、今後2年半以内に償還をむかえるLGFVの国内負債は5600億ドル(約60兆円:1ドル=105円)に達する。

 そのなかでデフォルト(債務不履行)となるものがでてきている。

 FT紙によれば2019年1-4月に13のLGFVの元建て債務がデフォルトとなるほか、2月には青海省投資集団(Qinghai Provincial Investment Group)のドル建て債務デフォルトにおちいった

 FT紙は、ドル建て債務のデフォルトはこの20年間ではじめてとしている。

 なお地方政府は2019年上半期に、昨年同期のほぼ2倍にあたる124億ドル(1.3兆円)のドル建て債券を発行した。

 しかし中央政府は、2019年6月末をもって地方政府によるドル建て債券の発行を禁止。

 中国政府は、景気の腰折れをふせぎながら、金融機関や地方政府の過剰債務の処理をおこなうという難しいしごとに取り組んでいる。

 

中国、債務不履行が増加: 中国民生投資、550億円の債務不履行 (2019/7/20)

中国の19銀行、いまだ2018年の決算発表できず: 包商銀行は公的管理に移行 (2019/6/11)

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中国の自動車生産、販売台数が前年を下回る: 世界経済に大きな影響 (2018/11/10)

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カリフォルニア州、ウーバーのドライバーを労働者とする法案の可決へ?

2019年09月06日 | 経済

 2019年9月6日(金)、カリフォルニア州の上院は、ウーバーやリフトといった配車サービスのドライバードアーダッシュやウーバーイーツのような料理宅配サービスの配達者を個人事業者ではなく労働者とみなす法案(Assembly Bill 5)の採択をおこなう予定になっている。

 ウーバーやリフトは、インターネットによって呼び出し・予約をすることができる迎車、配車サービス(インターネットを使ったいわゆる白タク<無認可タクシー>であるが、普通そのようには説明されない)。

 どちらもカリフォルニア州を本拠に世界展開し、ウーバーは売り上げが1兆円を超えるまでに成長している。

 このビジネスモデルの問題は、ドライバーや配達者が個人事業主扱いで、委託元企業が最低賃金や社会保険料の支払いをまぬがれていること。

 このことについては年々批判が高まっており、ロンドンなど配車サービスの免許更新を拒否したり、ドライバー労働者としての権利を認めるケースが増えている。

 こうしたなか、ウーバーとリフトの本社があるカリフォルニア州で配車サービスや料理宅配サービスのドライバーを労働者とみなす法案(AB 5)の可決がおこなわれようとしている。

 ウーバーとリフトは、法案の否決をもとめるかわりに、ドライバーの実働時間に対し最低21ドル(2200円:1ドル=105円)の報酬を支払うこと、病欠休暇のための基金を設けること、ドライバー団体と報酬などについて交渉をおこなうことなどを提案するとともに、法案が可決された場合は9千万ドル(95億円)をかけて法律内容の変更を求める運動をおこすとしている

 法案は今年の5月に59対15で下院を通過。

 知事は法律への賛成を表明しているため、あとは上院での採択、可決だけが問題となっている。

 法案が可決されるかどうか注目される。

 

2019/9/11追記

 カリフォルニア州上院は、9月6日(金)に法案の一部を修正。法案は、9月10日(火)の午後、29対11で可決された。この後、知事が法案に署名すると、2020年1月1日から施行されることになる。

 

配車サービス・ウーバー、ロンドンで免許取り消し (2017/9/24)

英司法、ギグ・エコノミーに待った: ふたたびウーバーのドライバーを労働者と認定 (2017/11/11)


英議会、強硬離脱禁止法案を可決

2019年09月05日 | 経済

 2019年9月4日(水)、英下院は「離脱条件で合意できなければ、EUに離脱期限を1月31日に延期することを要請する」法案を327対299で可決した。

 ジョンソン首相はこの法案が可決されたら解散総選挙をおこなうとしていたが、労働党がこれを拒否

 当面の解散総選挙はなくなった。

 内閣不信任については、他のだれがなってもEU離脱のハードルはかわらない、ジョンソン氏が他の人に首相を譲らなければ解散になる可能性があることなどから、今のところ政治日程にはあがっていない。<もし不信任が可決され辞職するとジョンソン氏はイギリスでもっとも短命な首相になる。>

 なお、冒頭に述べた法案の審議開始に賛成したことを理由に21人の保守党議員が党を除名されたが、保守党内から党への復帰を求める声があがっている

 

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