大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

独、7月から消費税を引き下げ

2020年06月22日 | 経済

 2020年6月4日、ドイツ連立政権は1300億ユーロ(17兆円:1ユーロ=130円)の経済支援策をおこなうことで合意した。支援内容は以下のとおり。

1)2020年7月1日から12月31日まで消費税(VAT)を19%から16%に引き下げる。食料品や日用品の軽減税率7%から5%に引き下げる。

2)すべての世帯に300ユーロ(4万円)の手当を支給する。

2)中小企業に250億ユーロ(3.2兆円)のつなぎ融資を提供する。

 ドイツでは大学まで教育はほぼ無料。医療費も無料。

 シュレーダー改革によりかなり厳しくなったが、失業してもほぼ無期限で最低限の生活が保障されている。

 このように手厚い福祉をおこないながら、国家の財政赤字(GDP対比)は日本の半分以下(だから、危機時にこのような減税ができる)。

 またドイツの経済成長率は日本より高く、一人当たりGDPは日本より2割ほど高い

 ドイツはドイツなりに問題ー東西の経済格差や移民排斥政党の伸長などーを抱えているが、良いところは積極的に学びたいものだ。


米、休業中の賃金・光熱費補填期間を半年延長

2020年06月19日 | 経済

 2020年3月末、アメリカでは中小企業(従業員500人以下)を対象に緊急融資(上限1千万ドル=11億円)をおこない、企業が労働者を解雇せず賃金を支払い続けた場合、8週間を上限にその間の賃金と家賃・光熱費(家賃・光熱費は全体の25%まで)相当額の返済を免除する給与保護プログラム(paycheck protection program)と呼ばれる制度が成立した。

 これに対し、返済免除となる期間の延長家賃・光熱費の割合を増やして欲しいという要望が多く、2020年6月5日にこの制度の修正法案が成立した。

 おもな修正点は

(1)返済免除となる賃金・家賃・光熱費の支払い期間を8週間から24週間(約半年)に延長する。

(2)返済免除となる家賃・光熱費の割合(融資に占める割合)を25%から40%に拡大する。

 米議会はこの仕組みのため、当初3500億ドル(38兆円:1ドル=110円)の予算を承認したが、予算が枯渇

 議会はさらに3100億円(34兆円)の追加予算を承認したが、つかいがってが悪いなどの問題から最近になって予算の消化がにぶっていた。

 ウォールストリートジャーナルによれば、2020年6月4日(木)までにこの仕組みをつかって450万件、総額5110億ドル(56兆円)の緊急融資がおこなわれている。

 その多くは返済免除になるとみられている。


米最高裁、職場でのLGBTQ差別を禁止

2020年06月16日 | 経済

 2020年6月15日(月)、米最高裁LGBTQであることを理由とした解雇を違法とする判決をくだした。

 アメリカには、人種、宗教、国籍、による雇用上の差別を禁止する公民権法第7編(1964年成立)という法律があるが、最高裁は今回このにLGBTQも含まれるとする新しい判断をくだした。

 ニューヨークタイムズによれば現在、半分の州でLGBTQを理由とする解雇が合法とされているが(アメリカは法で禁止された理由を除き解雇は自由)、今後はLGBTQを理由とした雇用上の差別は全米で違法となる。

 トイレや更衣室の利用をめぐっては意見はわかれているが、LGBTQを理由とした雇用上の差別については共和党支持者でも7割が反対。こうした世論の変化が今回の判決をあとおししたとみられる。

 なお、今回の判決は6対3。保守派とされるロバーツ長官とゴーサッチ氏がリベラル派の4人の判事に加わった。

 ロバーツ長官はこれまで複数の重要判決でリベラル派の判事と同じ判断をくだしており、スイングボーターとしての役割が高まっている。

 

ロバーツ最高裁長官がスイング・ボータ―に (2019/7/3)

米連邦最高裁のケネディー氏が辞職:最高裁の保守化が一気に進むか (2018/6/28)


米シェールオイル企業の破綻続く

2020年06月14日 | 経済

 米シェールオイル企業の経営破綻が続いている。

 ダラス連銀によれば、米シェールオイル(原油を含む岩盤層を水平に掘り進み、化学物質と水を高圧注水して原油を抽出する採掘方法)の採算分岐点47ドルから53ドル

 これに対し現在の原油価格(WTI)は上昇が続いてはいるが依然およそ37ドル。多くの企業が採算割れにおちいっていると考えられる。

 この結果、フィナンシャルタイムズによれば、5月25日の時点で破産法11章(日本の民事再生法に相当)を申請した原油・ガス採掘企業は17社負債総額は140億ドル(1.5兆円:1ドル=110円)にたっしている。

 現在も大手原油採掘企業Extractionは利子の支払いができておらず、破綻の可能性があると指摘されている(負債は16億ドル=1700億円)。

 また、オクシデンタル石油、アパッチ、加Cenovusなど企業格付け投資資適格から投機的に引き下げられる大手企業が続出。

 この結果、エネルギー関連企業のハイイールド債(投機的水準の企業が発行する高利率債券)の総額は年初の680億ドル(7.5兆円)から1080億ドル(12兆円)に急増。要注意ハイイールド債の多くがこれらエネルギー関連企業によって占められている。

 アメリカでは原油価格の大幅下落を受けて生産量が減少。しかし、その分だけ輸入が増加しているため在庫は依然高い水準にとどまっている。

 各国中銀が異次元金融緩和を続けるかぎり、エネルギー関連企業の経営破綻が金融不安につながる可能性はあまりないと思われるが、引き続き米シェールオイル企業の動向を注意してみていきたい。

 

2020/6/16追記

 Extraction石油は破産法第11章を申請した。


機関投資家、女性役員ゼロに反対票:今年の株主総会

2020年06月07日 | 経済

 フィナンシャルタイムズによれば、今年の株主総会で外国の機関投資家の多くが取締役に女性を含まない役員提案に反対する予定になっている。

 論文にも詳しく書いたことだが日本の女性役員比率はパキスタンとならんで世界最低レベル。

 FT紙も、日本の上場企業の57%には女性役員がまったくいないとしている。

 FT紙によれば、ゴールドマンサックスや英リーガル・アンド・ジェネラルは、今年の株主総会ではコロナの影響を考慮して株主還元などは強く求めないが、女性を含まない役員提案にははっきり反対する予定になっている(後者はTOPIX100の企業が対象)。