大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

イギリス、EU離脱の出口調査の誤り

2016年06月24日 | 日記

 今日(2016年6月24日)、イギリスの国民投票でEU離脱が決まった。

 今回、マスコミによる出口調査はおこなわれていない。しかしヘッジファンドは、調査会社を使って出口調査をおこなっていた。この出口調査の結果は公開されていないが、残留派の勝利を予想するものだった。

 それはイギリス独立党のファラージ党首が、投票が終わった直後に、知人からその調査結果を聞いて「残留派が勝ったようだ」と早々に敗北宣言したことからわかる。投票締め切り後に公表されたYouGovなど調査会社による独自のサンプル調査も残留派の勝利を示唆するものだった。

 しかし開票が始まって1時間ぐらいすると、離脱寄りとみられていた多くの選挙区で離脱派が事前予想以上に多くの票を集めていることがわかり始めた。また残留寄りあるいは勢力拮抗とみられていた選挙区で、離脱派が過半数を超えるケースが増え始め、最終的に離脱派の勝利となった。

 どうしてこうなったのか?事前予測と結果のそごであればアナウンス効果(事前予測と反対側に人々が動く)をはじめ多くの理由が考えられる。しかし今回は、投票後におこなわれた出口調査とも結果が違っている。影響がおおきいだけに、困ったものだ。前回国政選挙でも事前予想が大きく外れており、しばらくイギリスの世論調査は疑念の目で見られることになるだろう。今回の敗北は、残留派と世論調査だった。

 ところで間違った出口調査で敗北宣言をしてしまったイギリス独立党のファラージ党首である。離脱派の優勢がはっきりした日本時間の正午ごろ、満面の笑みで支持者の前にあらわれ、誰よりも早く勝利宣言をおこなった。「今日はイギリスにとっての独立記念日だ」、とのセリフは長く残るに違いない。変わり身の早さに驚いた。


イギリスがEUを離脱したら

2016年06月19日 | 日記

 イギリスでEU離脱を問う投票が23日(木)に迫っている。

 投票結果はまったく予想がつかない。そうした中、イギリスでは、もし離脱が過半数を超えたらどうなるかといった報道が増えている。

(首相交代)

 キャメロン首相は、離脱が過半数を超えても首相を続投し、EUとの離脱交渉を先導すると主張している。しかし実際に離脱となれば、キャメロン首相の続投は難しく、離脱派を率いるボリス・ジョンソン前ロンドン市長が首相となり、場合によっては国政選挙になるとの予想が出ている。(★ 実際にはキャメロン氏は辞職したが、離脱派内の内紛などでジョンソン氏は保守党の党首選挙にでることを断念。かわりに、保守党の党首選挙をへてメイ氏が新首相に選ばれた。そしてメイ氏はジョンソン氏を外務大臣に任命した。 2016/9/9追記)

(離脱後のEUとの関係) 

 離脱後、EUとの関係はどうなるか?英インディペンデント紙は、次のような可能性を示している。

 1)ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン型

 農業や漁業などに一部の例外を設けるものの、基本的にはEUの法律に従う。そのかわりにEU市場への自由なアクセスが保障されるというもの。しかし、従うべきルールには労働者の移動の自由などが含まれている。またこうした国には、ルールの受け入れが求められる一方で、EUのルール策定への関与は認められていない。移民制限や主権回復を唱える離脱派がこのモデルを受け入れる可能性は小さいとみられている。

 2)スイス型

 基本的にはEUのルールに従うが、どのような分野でEUのルールを受け入れるか、ケースバイケースで判断するというもの。EU市場へのアクセスは保障されている。インディペンデント紙は、このモデルはあまりに交渉が煩雑で時間がかかるため、EUがイギリスにスイスと同じモデルを認める可能性は小さいとしている。

 3)カナダ型(自由貿易協定型)

 EUとカナダでは自由貿易協定が締結され、今年中に関税が撤廃される。ボリス・ジョンソン氏は、このモデルを推奨している。ただ、カナダとの貿易交渉は5年かかっている。また、金融を含むサービスは関税撤廃の対象外とされているという問題もある。

 なお、番外編として、交渉中にイギリスが労働者の自由な移動などを一方的に制限し、これに対抗して、EUがイギリス企業のEU市場へのアクセスに制限をかける可能性などを指摘するものもあるが、可能性は小さいだろう。最直近の世論調査では、残留派議員の殺害を受けて、残留派が増加していることが明らかになったが、6月23日(木)の投票結果に世界が注目している。