アメリカの景気後退がさけられない状況になってきた。
2月28日(金)にわずか65人だったアメリカの新型コロナ感染確認者は、3月20日(金)に15,219人まで急増。
これ以上の感染拡大をふせぐため、カリフォルニア州(人口4千万弱)は外出禁止令(食品以外の小売の閉鎖含む)をだし、ニューヨーク州(人口2千万弱)も22日(日)から労働者に基本的に在宅勤務を義務づけることになっている。
これに、ニュージャジー州、コネチカット州、イリノイ州が続く予定になっている。
この影響は経済統計にもではじめており、3月19日(木)に発表された失業保険の新規申請者数(3月8-14日までの1週間分)は、前週より33%増加して28.1万人になった。
3月15日以降、さらに失業者数が急増していることが各地で報告されており、今週発表の失業保険の新規申請者数はびっくりするような数字になることが予想されている(株式市場への影響をふせぐため、米政府は3月26日(木)のデータ公表日まで各州の数字を発表しないよう指示をだした)。
これまで好調を続けてきた雇用が大きく失速するのは確実な状況となっている(ただし米雇用統計にあらわれるのは1-2か月遅れになる)。
米議会では、年収7.5万ドル(830万円:1ドル=110円)まで一人あたり1200ドル(13万円)の現金を支給(共和党案は税金からの払い戻し)する法案が検討されているが、消費の落ち込みを十分おぎなうことはできないとみられている。
こうしたことから、アメリカのGDPは第1四半期、第2四半期ともに前期比マイナスになるとする予想がふえている。
景気後退は一般にGDPが2期連続マイナスと定義されており、そのいみでアメリカが景気後退にはいる可能性がきわめて高くなっている(アメリカはこれとは少し違った方法で景気後退を判断しているが、判断に大きな違いはでない)。
こうしたなか、ふたたび金融危機がおこる可能性が指摘されるようになっている。
このブログでは、信用の低い企業が発行するハイイールド債あるいはレバレッジドローンの問題をたびたび紹介してきた。
こうした債券をまとめて証券化したものにCLO(ローン担保証券)がある。
低金利がつづくなか、CLOは高利率をうたうことで多くの機関投資家(年金、保険会社、投資会社、アメリカ外の銀行など)をひきつけてきた。
いまこのCLOが金融危機のひきがねをひくのではないかと心配されている。
ウォールストリートジャーナルによれば、低格づけ企業が発行した債券は1.2兆ドル(130兆円)。カナダ年金基金など安全性を重視する機関投資家も、CLOのかたちで低格づけ企業の債券を大量に保有している。
しかし、景気後退が意識されるなか、格付けがとくに低い債券では価格の大幅な低下(額面の8割程度)がはじまっている。
ここでおもいだすのがリーマンショックである。
信用の低い人の住宅ローンをまとめて証券化したサブプライムローンはリーマンショックをひきおこしたが、CLOはその企業版にみえる。
もっともリーマンショックと今では違いもある。
リーマンショックでは、もうけ優先の企業(リーマンブラザーズなど)を救済することに批判が多く、金融支援が後手にまわって景気後退を大きなものにした。
一方、新型コロナウイルスが原因の今回の景気後退では、企業救済に制約(批判)は少なく、各国中銀は市場安定のため全力で資金供給をおこなうとみられている。
新型コロナウイルスの感染拡大がどこまで経済に影響をおよぼすのか、ひきつづき注意してみていきたい。
2020/3/27追記
2020/3/26に発表された新規失業保険申請者件数は328.3万人。歴史上例を見ない水準に跳ね上がった。