大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

韓国、7月から週の残業時間の上限を12時間に短縮

2018年07月05日 | 日記

 2018年7月1日(日)から韓国では、法律で許される残業時間の上限を週28時間から12時間に大幅に短縮する法律が施行された。

 当面の適用対象は、従業員300人以上の企業と公的機関。違反者は2年以下の懲役または2千万ウォン(約200万円:100ウォン=9.8円で計算)の罰金となる。ただし、罰則は法律施行後6か月は猶予される。

 300人以下の中小企業についても、運輸、ヘルスケアなど一部業種を除き2021年まで徐々に適用を広げていく予定。

 韓国内には雇用の大きな部分をになう中小企業が労働時間の短縮に対応できるか疑問視する声もあるようだが、文政権は労働時間短縮により雇用の増加、生産性の向上とともに少子化に歯止めをかけることを狙っている。

 ちなみにヨーロッパではEU加盟国を拘束するEU労働指令というものがあり、週の労働時間は平均して48時間を超えてはならない(=週の残業時間の平均は8時間を超えてはならない)とされている。


中国、大型の個人減税を発表

2018年07月04日 | 日記

 景気減速が懸念され始めた中国で、景気刺激を目的とした大型減税があいついで打ち出されている。

 フィナンシャル・タイムズ(2018/7/2)によると、中国では税収の構成が消費税39%、法人税22%、所得税8%と消費税中心となっている。

 そこでまず今年(2018年)5月から、消費税(正確には付加価値税)の引き下げがおこなわれた。

 具体的には工業製品の消費税が17%から16%に、それ以外のものが11%から10%に引き下げられた。

 ロイター(2018/5/28)によれば減税規模は年内だけで2,400億元(約4兆円:1元=16.5円で計算)。

 さらに今回、中国の全国人民代表大会は大型の個人減税案を発表。今年の10月から実施予定とされている。

 前掲FT紙によると、今回の減税により、

(1)課税最低所得(年)が6,300ドル(70万円:1ドル=110円で計算)から9,000ドル(100万円)に引き上げられる。

(2)下の表にあるように月収に対する税率区分を変更する

 これにより、これまでは4,500元(7.5万円)から9,000元(15万円)までの月収に20%課税されていたのが、3,000元(5万円)から12,000元(20万円)まで10%の課税に引き下げられる。

 中国では、預金準備率(預金残高のなかから銀行が中央銀行に預け入れなければならない比率)が4月25日と6月24日にそれぞれ1%、0.5%引き下げられるなど、景気刺激策が相次いでいる。減税と合わせどのぐらいの効果が出てくるか注目される。

  現在の所得税率 新しい所得税率
1,500元まで 3%  
3,000元まで   3%
4,500元まで 10%  
9,000元まで 20%  
12,000元まで   10%
25,000元まで   20%
35,000元まで 25% 25%
55,000元まで 30% 30%
80,000元まで 35% 35%
80,000元以上 45%

45%

 

2019/4/27追記

 2019年3月、中国政府はさらなる付加価値税の引き下げを決定した。製造業については16%から13%に、運輸、建設業について10%から9%に引き下げる。2019年の減税規模は約2兆元(約30兆円:1元=16.5円)にのぼると見込まれている


新興国の債券利回りが上昇

2018年07月01日 | 日記

 欧米は6月に入ると夏休みをむかえるところが多く経済紙も記事が少なくなっているが、そんな中、ウォール・ストリート・ジャーナル(2018年6月30日)新興国の債券利回りが上昇しているという興味深い記事がでた。

 同紙によると、新興国が発行するドル建て債券はこの10年に3倍増えて2兆ドル(220兆円:1ドル=110円)にまで増加している。

 しかし今年に入って、アメリカの金利上昇や新興国経済への不安の高まりをうけ、新興国への資金流入が減少。

 新興国が発行するドル建て債券の利回りは、年初の3.7%から4.7%に上昇している。

 新興国債券のデフォルト(債務不履行)も増加。WSJは、とくにアジアのハイ・イールド債(低格付け企業が発行する債券)のデフォルト率が上昇しており、2010年以来はじめて南米、中東、アフリカの数値を超えたと指摘している。

 WSJは、現在の状況は行き過ぎ(売られすぎ)だとする見方も紹介しているが、新興国に再び資金が向かう流れがくるのかどうか気になるところである。