大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米連銀、2020年第2四半期に国債買い入れ縮小、レポ介入停止か

2020年01月30日 | 経済

 寒中見舞いがまだ書けていないが(もう無理か?)、Fed(米連銀)の金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場員会)の1月会合の結果がわかったのでまとめておきたい。

 今回の会合で注目されていたのが2019年9月17日の短期金利高騰をうけてはじまった(1)国債の月600億ドル(6.6兆円:1ドル=110円)の新規買い入れと(2)ニューヨーク連銀による国債を担保にした1日あるいは14日といった短期の貸し出し(レポ介入)の今後の予定。

 パウエルFRB議長は、国債買い入れとレポ介入はあくまで短期資金市場の混乱をさけるための措置で、量的緩和の再開(QE4)ではないと宣言している。

 しかし市場はこれを事実上のQE4ととらえ、米株価が連日史上最高値をつける背景になっており、その行方が大きな注目を集めている。

 さきほど公開されたFOMCの会見草稿(公式発言)では、国債買い入れとレポ介入について以下のことが書かれている。

(1)レポ介入(連日10兆円近い規模)はすくなくとも4月までは継続する(当初は1月末までと考えられていた)。

(2)(これまでの資金供給により)2020年の第2四半期に、Fedの準備金(日銀の当座預金に相当:銀行などによる連銀への現金の預け入れ=短期融資の原資に使われることが多い)が十分なレベルに達する。

(3)Fedの準備金が十分なレベルに達したら、国債の買い入れを縮小し、レポ介入を停止する。<国債の買い入れは停止しない

 市場がこれをどのように受け止めるのか気になるところである。

 

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トランプ大統領、米中貿易協議(フェーズ1)に署名

2020年01月16日 | 経済

 体調と仕事の関係でブログが更新できない状態が続いている(今年は年賀状も出せなかった)。  

 それでもブログでたびたび触れてきた米中貿易協議が大きな節目を迎えたということで、その内容をまとめておく。

 2020年1月15日(水)、トランプ大統領は米中貿易協議(フェーズ1)の取り決めに署名した。

 ウォールストリートジャーナルによればおもな内容は以下のとおり。

1)中国は今後2年間に米製品・サービスの購入を2000億ドル(22兆円:1ドル=110円)増加させる。

2)中国は大豆、豚肉など農産品の輸入を320億ドル(3.5兆円)増やす。

3)中国は工業製品の輸入を800億ドル(8.8兆円)、エネルギーの輸入を500億ドル(5.5兆円)、サービスの購入を350億ドル(3.8兆円)増やす。

4)上記2)と3)と引き換えに、2019年12月15日に予定されていた日用品など1560億ドル(17兆円:1ドル=110円)分への関税発動を「延期」する(昨年には「撤廃」と報道されていた)。上記が実行されたとき、この部分の関税は(完全に)廃止される。

5)2019年9月1日に中国からの輸入1200億ドル(13兆円)に課せられた15%の関税を7.5%に引き下げる

6)中国は米金融機関(銀行、証券、保険)に中国市場へのアクセスを保証する。

7)中国は医薬品などについて知的所有権の保護を強化する。

8)両国で問題がおこったときにそれを解決する手段として、3段階の協議(90日間)システムを設ける。

 WSJは、貿易紛争が激化する直前の2017年、中国のアメリカからの輸入は1860億ドル(20兆円)にすぎなかったと指摘したうえで、とくに工業製品について上記の割当を達成するのは簡単ではないとする意見を紹介している。

 中国がアメリカから輸入を大幅に増やすためには、これまで他の国から輸入していたものアメリカからの輸入で代替する必要がある。

 今回の協議成立で、世界的な貿易の流れが大きくかわる可能性がでてきた。

 貿易協議の成立が中国経済にどのような速さで、どのような影響を与えるか注意するとともに、輸入代替の動きがアメリカ以外の国にどのような影響を与えるか(あるいは与えないか)注意してみていきたい。

 あと寒中見舞いをなんとか書きたい。