大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

中国の地方債発行、昨年比70%増?: 景気テコ入れなるか?

2019年04月27日 | 日記

 中国で景気刺激のため地方債の発行が例年より前倒しでおこなわれるとともに、発行額も昨年より70%多くなることが予想されている。

 フィナンシャルタイムズによれば、2019年第1四半期、中国の地方政府は1790億ドル(20兆円:1ドル=110円)の地方債を発行した(その半数は建設に使途がかぎられたもの)。

 この数年は、全国人民代表会議(全人代)がおこなわれる3月に地方政府の発行枠がきまり、5、6月から実際の発行がはじまっていたが、景気刺激のため今年発行が早まったとみられている。

 またムーディーズは、今年の地方債の発行額は昨年より70%増加して60兆円にたっする可能性が高いとしている。

 ただその一方で、FT紙は、地方政府の財政悪化により、地方債で得られた資金の多くが景気刺激でなく債務返済などにつかわれる可能性があるとしている。

 FT紙によると、中国で付加価値税(消費税)の半分は地方政府の税収となっている。しかし、今年、付加価値税の減税(30兆円相当)がおこなわれたため、地方政府は歳入減をよぎなくされている。

 FT紙は、地方債の多くがこうした補填に使われ、実際の景気刺激効果は一般に考えられるほど大きなものにならない可能性があるとしている。

 アメリカとともに世界経済の命運をにぎる中国の財政、経済動向をひきつづき注意してみていきたい。

追記

 2019年4月18日(金)、習主席は「いきすぎた投機を改める」と発言し、中国のマーケットに弱気が広がった。中国政府は、景気のテコ入れを図りながら、土地取引や株取引の過熱を抑え込むという難しい課題に挑戦している。行方を見守りたい。  

 

2018/10/22   中国、2兆円規模のあらたな減税を発表

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日欧で、ドルの為替ヘッジ・コストが高騰:市場かく乱の可能性

2019年04月25日 | 経済

 フィナンシャルタイムズは、為替ヘッジするコストが上昇しているため日欧で為替ヘッジなしで米国債などを購入する企業が増えており、市場がかく乱される可能性がたかまっていると警告している。

 為替レートの変動による損失を回避するために必要なのが為替ヘッジ。このコストが日欧で高騰している。

 たとえば、ヨーロッパの投資家は、米10年債(2.58%)を為替ヘッジすると年-0.5%という損失が発生する状態になっている。

 日本でも同様で、米10年債を為替ヘッジすると年-0.3%の損失になる状態となっている。

 FT紙は、ここから日欧の金融機関は最近では為替ヘッジなしで米国債や米社債投資を進めているとしている。

 たとえば、日本の金融機関は2019年3月に100億ドル(1.1兆円:1ドル=110円)の米国債を購入しているが、FT紙はそのかなりの部分は為替ヘッジされていないと推測している(ヘッジしたら損失になってしまうため)。

 そしてFT紙は、急激なドル安や為替ヘッジ・コストの急上昇がおこると、損失を回避するため保有資産の投げ売りが大量に出て、市場をかく乱するおそれが高まっているとしている。

 あらゆるリスクを慎重に検討するFT紙らしい記事である。

 

追記

 FT紙の別の記事は、日本の金融機関は、ドル安の可能性が小さいとみて為替ヘッジをしない米投資を拡大する機関と、ヘッジできない米債投資から欧州へ投資を切り替える機関にわかれているとしている。


メキシコ、労働法を改正: USMCA批准のハードル取り除かれる

2019年04月21日 | 日記

 2019年4月11日、メキシコ下院は471対1の大差で労働法の改正案を可決した。

 ウォールストリートジャーナルによれば、改正のポイントは2つ。

(1)これまでは政労使で構成する労働調停委員会が、労使紛争の裁定、労働組合の承認をおこなってきたが、これを独立・中立の第3者機関に変える。

(2)労働者に秘密・直接投票組合役員を選び、労働協約の受け入れ可否を決める権利をみとめる。

 メキシコでは1940年代から2000年まで制度的革命党による事実上の一党独裁がおこなわれてきた。

 そして労働調停員会の労働者代表は制度的革命党と協力関係にあるメキシコ労働組合連盟(CTM)によってほぼ独占され、政府に批判的な労働組合の承認や活動を抑圧してきた。

 またそれと関連して、メキシコの連邦労働法には組合規定の策定や役員の選出についてルールがなく(組合自治を尊重するという建前)、これまでは一般の組合員が関与しない形で役員の選出や労働協約の批准がおこなわれてきた。この仕組みによって長年、制度的革命党に忠誠を誓う組合幹部が労働組合を支配することが可能だったといわれている。

 こうした仕組みについては以前からILO(国際労働機関)などから是正勧告などがだされていたが、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の交渉においてアメリカとカナダは批准の条件としてこうした仕組みの是正を要求。今回の法改正によりその条件が満たされることになる。

 ナンシー・ペロシ米下院議長(民主党)は、メキシコで労働法の必要な改正があるまでUSMCA批准の投票をおこなわないとしていた。

 

アメリカとメキシコ、NAFTA(北米自由貿易協定)の修正について暫定合意  2018年08月28日 

7月1日にメキシコで大統領選挙: ポピュリストのオブラドール氏が優勢  2018年06月06日 

NAFTA再交渉で米、自動車メーカーに15ドルの最低賃金を求める  2018年03月31日 


アメリカ最大の自動車メーカーGM、取締役会の過半数が女性に: 自動車メーカーで初

2019年04月19日 | 日記

 オートモーティブニュース(2019/4/18)は、アメリカ最大の自動車メーカーGMの取締役会の過半数が女性になると伝えた。

 GMの現在の取締役会メンバーは13人。そのうち6人はすでに女性が占めている(バーラCEO含む)。

 同紙によると、2019年6月4日の株主総会で、男性2人が取締役に再立候補せず退職する予定になっている。

 GMはそのまま取締役会の人数を11人に削減するため、6月4日以降、取締役会の過半数が女性になる予定。

 アメリカでは、GMのほかにバイアコム(メディア複合企業)、CBS(3大テレビのひとつ)、ベストバイ(家電量販店)でも取締役会の過半数が女性になっており、ベストバイでは次期CEOも女性。

 オートモーティブニュースは、ラッセル3000(アメリカのトップ3000社)の半分の会社は2034年までに取締役会の半数が女性になる見込みだとの調査機関の予想も紹介している。


中国、EV生産の中心地に: 今年160万台のEV販売の見込み

2019年04月18日 | 日記

 中国がEV(電気自動車)生産の中心地としての地位をかためつつある。

 オートモーティブ・ニュースによれば現在、中国には486社のEVメーカーが存在している(2年前から3倍増)。

 2018年、日本のEV販売台数は3万台を割り込んでいるが、今年(2019年)、中国では160万台のEV販売がみこまれている(2018年は126万台)。

 日本の年間自動車販売台数(軽含む)はおよそ500万台。中国では、その1/3にあたる台数がEVということになる。

 こうしたトレンドを支えてきたのが、①EV購入への寛大な補助金と②自動車メーカーに一定比率のEV販売を義務付ける仕組み。

 後者についていうと、中国政府は2019年、2020年、自動車メーカーに販売台数の3-4%をEVにすることを義務付けている。これを満たせないと課徴金などのペナルティーが発生する。ウォールストリートジャーナルは、たとえばトヨタ、日産、ホンダについてそれぞれ2年間に約10万台のEV販売が必要になるとしている。これが日系メーカーが中国でEV販売を急ぐ大きな要因となっている。

 補助金についていうと、メディアによって伝える数字が少しずつ違うのだが、ウォールストリートジャーナルによれば中央政府から最大6.6万元(100万円:1元=16.5円)、地方政府からその1.5倍の補助金が出ている。

 しかし、中国政府は2019年3月末、補助金の段階的縮小、廃止を決定。WSJ紙によれば、2019年6月から中央政府の補助金が半分、地方政府の補助金は廃止になり、2020年には中央政府の補助金も廃止される予定。

 オートモーティブ・ニュースは、中国では年390万台のEV生産能力がある(!)ことから、補助金削減、廃止などを契機にこれから中国でEVメーカーの淘汰がはじまると予想している。

 激しい競争をどのメーカーが勝ち残るのか注意してみていきたい。

 

Byton  中国のEVスタートアップ企業。BMWでEV開発をしていたブレイトフェルド氏などが中心になって設立。蘇寧電器(ラオックスの親会社)、第一汽車、Contemporary Amperex Technolog (CATL:EVバッテリーメーカー)などが出資。2020年末までにアメリカで電気自動車を発売の予定。

ニーオ(Nio) 中国のEVスタートアップ企業。

WM Motor(威馬) 中国のIT企業(百度、テンセント)が出資

Xpeng Motors(シャオペン、小鵬汽車) 中台のIT企業(アリババやフォクスコン)が出資

Youxia Motors(游侠汽車) 

BYD(比亜迪汽車) バフェット氏が出資

BJEV(北汽新能源) 北京汽車(BAIC)のEVに特化した子会社