大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米民主党の大統領候補、富裕層増税を打ち出す

2019年09月02日 | 経済

 来年2020年11月3日にアメリカで大統領選挙がおこなわれる。

 拙稿で詳しく書いているが、アメリカの所得格差はいま20世紀以降でもっとも大きくなっている(所得格差のその前のピークは大恐慌前の1920年代)。

 所得格差拡大に対するアメリカ人の不満は大きく、民主党の大統領候補はそれぞれ富裕層に対する増税を打ち出している。

 共通の焦点となっているのが株や土地の含み益への課税

 ウォールストリートジャーナル(WSJ)によれば、2017年末における株、土地、骨董その他の投資についての家計の含み益(買った後に値上がりした金額)は3.8兆ドル(400兆円:1ドル=105円)。

 これまで、この部分は売却で利益が確定しないかぎり課税されることがなかった。

 これに対し、民主党の大統領候補はここに課税の焦点をあてている。

 まずもっとも有力な大統領候補バイデン氏は、資産の所有者が死亡した時点で、すべての含み益に通常の資産課税を課すとしている(アメリカでは相続税が発生する課税基準が高いので、相続税を払うのはごくわずか。バイデン氏の課税案では相続税を払わない人々も含み益には課税されることになる)。さらに氏は、100万ドル(1億円)以上の所得がある場合、その税率を通常の2倍である40%に引き上げるとしている。

 またワイデン上院議員は、毎年、資産の含み益に課税をおこなうとしている。

 さらに過激なのがサンダース氏と2位争いをしているウォレン上院議員。氏は、5千万ドル(52億円)以上の総資産に毎年2%、10億ドル(1050億円)以上の資産にはさらに追加で毎年1%の課税をおこなうとしている。他に数人の大統領候補が、これに似た資産課税を打ち出している。

 ワイデン氏やウォレン氏の税制案は過激にみえるが、どちらも現役の上院議員が考えた政策である。

 アメリカの社会や人々はとても柔軟(フレキシブル)なので、民主党が来年の選挙で圧勝すればこうした実験的な政策も確実に実行にうつされることであろう。

 そしてもしウォレン氏が大統領になるようなことがあれば(いまのところ可能性は低いが)、アメリカの政治や経済は大きな転換をむかえることになろう。

 これまで他に関心を向けることが多く民主党の大統領候補選びについては十分なフォローができていなかったが、これからしっかりフォローしていきたい。